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惑星ルッズ コメッコクラブ武闘館
赤、青、黄、緑、ピンク、五色の衣装を着た天女、いやアイドルがアップテンポの音楽に合わせ華麗に軽やかに空中を舞っていた。
ルッズが誇る一流のアイドル、いや宇宙一とも言われるアイドルグループがアンコール曲の演奏を終え、笑顔でカーテンの奥に退場していった。
五万人を超す観客の拍手が鳴りやまない、アンコールの声援が何時までも続くかと思っていたら三度目となる再登場にファンも驚愕している。
たしか、余程のことが無い限りアンコールは二度までと言われている。それは政務の傍らアイドル活動を行う彼女たちにとっては仕様のないことだと熱狂的なファンになるほど良く知っていることであった。
だが、三度目のアンコールの願いが通った。正に奇跡が起こったのだ。アンコールの楽曲が終わって暫くの間観客の表情は凍り付いたようであったがやがて満面の歓喜に包まれ割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「ふう。何とも凄かったにゃ。あれが二足の草鞋を履くアイドルグループとは到底思えぬ程の完成度にカリスマ性、音楽性のなんとも見事なことか!」
「ふふ、船長にしてさえそこまで言わせてしまう彼らの凄まじい程の天賦の才能と努力、敵ながら天晴だね」
「しかもあの一糸乱れぬ踊りに歌、体感的にコンサート中一度も乱れを確認できなかったわ。これは、人間が修練の末に到達できるレベルを既に超えているわね。
アルド、そっちで観測していて彼らの動きに誤差は観測できたかしら?」
吾輩が素直に彼女たちのパフォーマンスを素直に褒め、参謀総長がそれを追認したにゃ。科学主任のネコさんは、その出来が既に人間のレベルを超えるものだと驚嘆していたにゃ。
『はい、彼女たちの動きの誤差は極小、一秒の十のマイナス四乗以下でした。一人を除いて… …』
「そう、ピンクの衣装の彼女ね?」
『その通りです。人気ナンバーワンアイドルのセンターにしてこの国の元首、アルカナ・タロット大統領です』
「なるほどね、彼女たちが機械で強化されたサイボーグなのか生体融合改造、または特異体質なのかは現時点ではわからないけど大統領がメンバー全員を高度に統制していることだけは確かね」
「その辺りのことは、今夜本人から聞けばいいにゃ。八時に迎えに来るって言ってたのにゃ」
「せ、船長!いつの間にトップアイドルとデートの約束なんかしたんですか!」
サマンサが、吾輩をきつく抱きしめると妙な圧で詰問してきたにゃ。
「ふふ、流石だね。最後のカーテンコールのときの唇を読むとはね」
「まあ、正確には唇だけじゃなくて物凄く小声で話しかけてくれたから吾輩にも分かったにゃ」
「そう、ならホテルに戻りましょうか。お茶でも飲みながら彼女等のホログラム・ビデオでも観て時間を潰しましょうか」
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ホテルタロット内ラウンジ
「流石、一流ホテルのラウンジね。紅茶が美味しいわ」
「そうね、アールグレイとダージリン、それらのファーストフラッシュとセカンドフラッシュの飲み比べ」
「面白いですよね、軽い味わいのサンドウィッチと良く合いますね。キュウリとかチーズを挟んだシンプルな方がお茶の味を邪魔しないでいいわね」
「しかし、大統領の動き凄いですよね。もしかしたら、船長よりも身が軽かったりして」
「そうね、最近船長の食い意地が張ってるから彼女よりも重いかも知れないわね」 サマンサの無邪気な疑問が、科学主任によって吾輩の楽しみを奪う方向にねじ向けられそうで怖いにゃあ。
「見た目からして、彼女の体重は六十キログラム前後にゃ。吾輩の魅惑の黄金ボディは十一キログラムで圧倒的に吾輩の方が軽いにゃ」
黒ずくめの男が一人、吾輩たちの席に近づいて来たにゃ。
「皆さま、お待たせいたしました。夕食会にご案内いたします、付いて来てください」