バ、ババーン!
『ハッハア、撃って撃って撃ちまくるよ。野郎ども、いくよ行くよ行くよぉ!』
岩石で出来立てほやほやの騎馬の上で、キュルソンは弾け配下の魔人ともどもバアル一派の魔人たちに燃え盛る岩石の弾を浴びせ掛けていた。
飛び散る血と肉片、弾丸と化した岩石と数多の魔人の衝突する爆音。
ワニのような魔人が砕け、一つ目の巨人が粉砕される。
「ほう、なかなかやるねキュルソンも。だけど、絶対的に数が違い過ぎるよね。
いつまで、善戦できるのかな?」
元天使のザキエルが醒めた感想を呟く。
『ふう、こちらも一割は潰されたか。だが、まだまだいくよ、行くよ、行っけぇ!』 キュルソンの号令一下、騎馬に乗った配下のゴーレムが一斉に巨大象の集団に襲い掛かる。ひしゃげる巨体、漏れる悲鳴、数秒後にはただの死骸となり果てる。だが、ゴーレムも無傷では済まなかった、その二割ほどは巨大象に踏みつぶされていた。 『これで既に損害は三割を超えたか・・・・・・
だが、退かぬ、顧みぬ!』
キュルソン配下の岩石ゴーレム軍団は、損耗箇所をゴーレムの死体から補完すると隊列を調えて再度突撃体制をとった。
『ふふ、流石に後の無い奴は死に物狂いで挑んで来おるわ』
『バティム、そろそろ仕掛けるぞ。
俺も出る』
青白い馬、その尻には普通の尻尾は無く替わりに蛇が食いついている奇妙な馬に乗った魔人バティムが呪文を唱えると、大きな氷山が空中から岩石ゴーレム軍団に降り注いだ。
『そら、デザートが出来上がったぞ。お食べ下さいアモン様』
『そうか、済まぬな。行くぞ、者共!ぐずぐずしておると、獲物は全て俺が貰うぞ!』
おー! 脱兎のごとく駆け行くアモンの後を必死に追いすがる緑色の肌をした巨人たち。
『くぅ、魔界の序列十八位三十の軍団を率いる大公爵バティムに魔界の序列七位四十の軍団を統べる大侯爵アモンまで出て来たか。
やはりキュルソンでは荷が重すぎましたね、ご主人様。
援軍に私も出ます!』
『まあ、待てアン。まだ、奴等の全容も掴めぬではないか。親玉のバアルの位置を掴むまで、しばらく様子見だ。
それにまだ、ザキエルが残っている』
その頃話題の人?元天使のザキエルは、少女が淹れてくれた紅茶を優雅に嗜んでいた。
「お姉さまは大丈夫でしょうか?ザキエル様」
「どうなんだろうねぇ、まあ気が済むまで手を貸す気は無いよ。それに僕にもれっきとした役目が有るからね、シェーラももう少し辛抱してよ」
「・・・・・・ わかりました」
岩石ゴーレム軍団は、頭上から落下した氷山で半数が活動不能となった。そこへ勢いに乗る騎乗の魔人アモンが剛腕を揮ってキュルソンの前で防御を固めるゴーレムたちを粉砕して行く。
新たに落下してきた氷山が、キュルソン達の退路を塞いだ。
魔人アモンは、左右のパンチを嵐のように連打し、キュルソンの周りのゴーレムが砂の様に崩れていった。勝利を確信し味方に劇的な勝利を見せつけるかのように左斜め後方を一瞥すると渾身の一撃をキュルソン目掛け解き放った。
ドガーン!
砂煙が舞う中、丘の上からでも見えるほどの巨大なクレータを眺めながらザキエルは微笑んだ。
「なるほど、そこに居るんだね。バアルさんは」
「え?お姉さま!」