「仮想通貨で俺は兆利人を目指す!」
バッ、ババ、バーン!
俺の気合に触発されて、荒野の岩山を背景に木霊する爆音、閃光、硝煙の煙に俺のテンションも高まって来た。
「どうせ、貧乏くじを引くのはいつも俺なんだ。やってられないよ、あの時も、その時も今この時も。だが、煮え湯を飲まされて来たうっ憤を不埒で無礼な人間相手に晴らさせてもらうからな。アンとかに、見つかる前に片を付ける!」
頭の禿げあがった小太りのおっさん臭い魔人が、やる気があるんだか無いんだかわからないテンションで見栄を切った。
「まあ、所詮は人間相手つまらないだろうけど結果は出しなさいね。セーレ、お行き!見届けてあげるわ竜、貴方の覚悟!」
審判役の美少女下僕一号が、使い魔である魔人セーレをけしかけて死闘っていうとあれだし、私闘も関係者が合意してるから違うな、そうだ試闘だ!お互いに戦いで試すんだからな。
「うっ、は、早い」
「ふっ、魔界随一の速度を誇るこのセーレ様の動きが人間ごときに捉えられる道理も無かろうに。どうせまた貧乏くじと恐れていたが、今日、今日こそは日頃のうっ憤晴らせそうだな。そりゃ、そりゅあ!」
腐っても魔人、小太りな体形からは想像もできない華麗な動きで翻弄される俺、な、何、何なんだよ?動きのところどころが速すぎて残像すら霞んで消えてしまう。
こんな、高速の、いや光速の動きを人間が見切れるはず無いだろうに。
セーレのパンチが、キックが俺に襲い掛かる。俺は半ば山勘で両腕を使った渾身の受けが精いっぱいだ。
奴が、日頃のうっぷん晴らしで舐めた攻撃に終始しているからまだ俺は立っていられるが、もしも本気で来られたら、死ですら一瞬んで訪れるだろう。
「百霊子《レイス》、銭投げ《スピンターン》、銭投げ!銭投げ!」
俺は、牽制と防御を兼ねて出鱈目に銭投げを放った。だが、高速で移動と攻撃を繰り返すセーレにかすりもしない。
「また赤字か、致し方なし。一万霊子、金の劔《マネーソード》!」
俺は、黄金色に輝く劔を呼び出すと馬鹿にしたように立ち止まって挑発するセーレに斬りかかった。
「ふふ、蠅が止まるようだな。ようやく、このセーレ様が活躍できる時が訪れたか。もう何年、何十年、何百年振りのことか想い出せぬほどの。歓喜の時は来た、今こそ、このセーレ様を称える時!」
俺の斬撃は悉く躱され、セーレの手刀を右手に受けた俺は迂闊にも金の劔を奪われてしまった。
「つう、しまったぁ!」
「勝利を○○様に捧げます!」
セーレが振りかぶる黄金色に輝く劔が、眩い光を纏って俺の脳天に襲い掛かる!
全身に蓄積した痛みと疲労で動きの鈍くなった俺には躱せない。
「俺は、こ、こんなところで朽ち果てるのか!」
「さすがに、ドジで間抜けなセーレでも人間ごときに後れを取ることは無かったようね。お仕置きできなくて、残念だったけど。まあ、セーレにしてはよくやったわ。何百年振りかしらね」
部下を貶すだけ貶す下僕一号の性格の悪い言葉を聞いたのが最後の音だった。