3話 転移
何か、周りが灰色だ。何もない、灰色の部屋に俺は寝ていた。
「知らない天井だ、まあ、そんなことはいいとして。俺は死んだのか、ここは何処だ?」
撃たれた、確かに撃たれたはずの胸を見ても血が出ているとかは無いし、それどころか服すら破けていない。では、あれは空砲?いや、しかし。あの時凄い痛みが胸を走ったぞ?
俺は、乱導 竜、十七歳。自己で死んだ両親の保険金を元に仮想通貨の取引で生計を立てるデイ・トレーダーだ。
今、コンビニで撃たれたはずの俺は何故か灰色の部屋で目覚めて混乱していた。
「ああ、竜よ。死んでしまうとは情けない」
「・・・」
金髪で真っ赤な透けるようなドレスを着た、美しい女性が時代遅れなRPG(ロールプレイングゲーム)のセリフを吐いて目の前に浮かんでいた。
「ん?たしか、あんたはアン?」
「記憶力も無いようね、私はエンドロ・ペニー、お前が死んだので漸く再会出来たというところさ。長かったねぇー、面倒な説明を繰り返すのもいやだから。ほれ!」
俺の目の前に三次元ディスプレーが現れ、エンドロ・ペニーの説明を受ける銀色の服を着た俺がいた。
そうか、思い出した。俺は、故郷を、妹を、愛する女を取り戻し、復讐するんだ!
俺は地球から遠く離れた惑星のリューラン王国の王子、裏切りにより全てを失い宇宙船で脱出した。
「そこで、盛り上がっているところ悪いんだが。お前のミッションは、難易度が上がったよ。なんせ、折角避難させてやった地球でも、またまた死んでしまったからね。金儲けも中途半端だし、死んだ人間を同じ世界に戻せないからね」
「じゃあ、俺を母なる星に戻してくれ。そこで、金儲けでも何でもしてやる、地の利もあるから迅速に成果も上げられるだろう」
「だから、そういう訳にはいかないのよ。お前の生まれた星には、勝手に宇宙船を修理するなり、新しく作るなりして自力で帰ってもらうしか無いわね。
そこで、お前には地球の裏世界、今風に言うと異世界に行って金儲けしてもらうことにする」
「ん?じゃあ、とにかくまだやり直せるのか。故郷を取り戻し、簒奪者に復讐が出来るなら、俺はやる!前にもそう言った」
「じゃあ、異世界に行っても困らないように、言葉の壁は外してやったよ。それと幾つかの能力をあげたから精々頑張って、私に富みを捧げなさい!」
灰色の部屋が、眩しい光に包まれると俺は意識を失った。
こうして、俺は目覚める、森の中で。
「ここは、どこだ?地球にの裏世界とか言っていたなあ。とりあえず、あっちに行ってみよう」
俺は、動揺していたのか独り言を言いつつ、いつの間にか現れた道に従って歩き出した。