すべてを手に入れる鍵がここにある 力も富も・・・・・・
すべてを欲する者よ、探せ
そして隠された七つの鍵をすべて手に入れよ
「あ。キール、おはよう」
キールは、左手に持った板の表示を消して近付く女に応えた。
「ああ、飯食おうぜ。俺を待たせたんだからお前の奢りな」
「ええ、もう。昨日稼いだ癖にケチねえ。お姉さん、朝定食二人前、ご飯は大盛りでね」
宿屋の食堂にしては、美味い部類に入る朝食を済ませてご機嫌なリサに引っ張られて役場に来たキールは昨日の賞金を無事手に入れることが出来て内心ほっとしていた。
「しかし、三百万霊子《レイス》ってちょっとびっくりね。あのスキンヘッドの野盗が有名なノーヘッドだったなんてね。ねえ、キール・・・・・・
服なんかプレゼントしてくれてもいいのよ、特別にね」
「悪い、生憎長旅が続くもんでそんな余裕はないよ」
「もう、意地悪。
じゃあ、馬車目的地まで乗せてあげるから。夕飯は奢ってね」
「しょうがない、あんまり高いもんは頼まないでくれよな」
一週間ほどの馬車の旅は割と快適で特段たいしたことは起こらなかった。
「キール、そろそろこの辺りだと思うんだけど。岩と砂ばっかしで何もないわね」 「ああ、だが道に迷った訳じゃないようだが・・・・・・」
キールがポケットから板を出すと、『探索』という文字が浮かび上がり点滅した。 「え、なんか、光った?」
「あれだ。あそこの岩山が多分、目的地だ」
ごつごつした岩山の光った辺りまで登っていくと下からでは分からない位置に人が通れるくらいの裂け目があった。
「ここを入って行くの?」
「嫌なら、馬車で待っていてもいいんだぜ」
「もう、行くわよ。こんなか弱い美人が一人でいたら悪党に攫われちゃうわ」
「ふっ、好きにしろ」
二人が裂け目を降りていくと中の空洞には不思議なことに照明が点っており歩くのに何の支障も無かった。しばらく進むと開けた場所に石で出来た棺が置かれていた。 「嘘でしょ、あれを開けるの?だめよ、絶対何か出て来るわ」
「ここまで来て、引き返す訳にも行くまい」
キールが近づいていくと、石の棺の後ろから骸骨が三体現れて剣を構えた。
「きゃあ」
「ふん、スケルトンって奴か。さしずめ宝の番人ってところか?」
リサは、恐怖で動けなくなった。右のスケルトンが袈裟懸けでキールを斬り、真ん中のスケルトンはキールの胴を刺し貫き、左のスケルトンは下から逆袈裟にキールの身体を斬り上げた。
ぴゅーという虎落笛のような音が聞こえ、キールの首から血しぶきが飛び散った。キールの心臓は刺し貫かれてその動きを止めた。
「めんどうくせい!」
なぜか、スケルトン三体は崩れ落ち粉々に砕けた。
「き、キール!あなた、大丈夫なの?」
「ふ、何をハトが豆鉄砲喰らったみたいな顔しているんだ。あんな、骨しかないような奴に俺が負けるかよ。はん」
「さあてと、お宝と御対面するか」
キールが棺の重い蓋をゆっくりとずらして開けると、光輝くガラスの置物が安置されていた。置物はまるで血を巡らす心臓のように脈動しており、光の点滅に同期していた。