「アルド、一度コメッコクラブに針路を取るにゃ。折角取り戻したアイドルをまた人攫いの近くに連れて行くこともないにゃ。
それにちょっと気になることもあるから、大統領にちょっと聞いて来るにゃ」
『では、五分後に船長とアルカナ・ファイブのお客様をエネルギー転送しますね』「頼むにゃ」
◇◇◇
惑星ルッズ コメッコクラブ大統領官邸 貴賓室
「ネコ船長、この度はとんだご足労をお掛けしました。このご恩は一生忘れませんわ」
ピンクのドレスを着た大統領が深々と頭を下げたにゃ。
「まだ、全て終わった訳じゃないにゃ。肝心のアルカナ・ブルーが黒幕の教団に囚われたままにゃ」
「教団?ですか」
「ふむ、教団のことは知らないのかにゃ?」
大統領は小首を傾げると疑問を呈した。
「その、さっきから仰る教団とは如何なものでしょう?何分想い当たるものがございませんの?」
「ふうむ、知らないのなら仕方ないにゃ。今回の黒幕、シアー共和国の王族を廃し新たに実権を握ったのがその謎の教団らしいのにゃ。アルカナ・ブルーも教団本部に囚われているらしいので、これから行って取り戻して来るにゃ。
一応確認のためにちょっと寄っただけにゃ。知らないのならもういいにゃ」
特段手心を加える事情もないみたいだにゃ。ふう、もう面倒臭いのはこりごりにゃ。
◇◇◇
惑星ドルーン首都ゾルーン旧王城 教団本部
石造りの街並みが並ぶ、中央の広い道を上がって行くと丘の上に黒い大きな城がそびえるている。これが王城、いや今は新しい支配者である教団本部の活動拠点である。
前回の救出チームと同じメンバーで、教団本部前にエネルギー転送されたにゃ。気配を探ったがまだ気付かれていないようなので、いつものように警備部隊が居そうな部屋に忍び込んだにゃ。
まあ、鮮やかに女忍者《くのいち》藤林千代女が七人ほど斬って捨て、残った三人を筋肉ガチムキお姉のメアリー・スカーレットが無力化して縄で縛っていったにゃ。 吾輩の出番がないのは寂しいが、作戦とは本来これぐらい余裕があるのが望ましいので順調な滑り出しと言えるのにゃ。
警備室のモニターで、アルカナ・ブルーが数人の教団幹部に嬲られているシーンを見たので該当する部屋に行くにゃ。それにしても一年中発情中の人間って、本当に変態さんだにゃ。
◇◇◇
教団幹部の部屋
「おお、これを独り占めしていたとはあなたも大概にケチですな」
「いや、これは高貴なモノに対する愛情の発露があれで」
「ふふ、もう。こんなにも感じているのか、アルカナ・ブルー。僕も嬉しいよ」
「うっ、いや。ああ」
教団幹部の部屋の前でしばし様子を伺うが、中にアルカナ・ブルーを含めて四人のようにゃ。声の様子からもエッチに夢中で隙だらけのようにゃ。
「行くにゃ!」
吾輩の号令で、メアリーがドアを蹴破り、千代女が縛られたアルカナ・ブルーを三人の男たちから引き離したにゃ。
「な、なんだ、お前たちは?ここが、教団本部と知っての狼藉か」
「い、痛たた」
「お、その女もイケてるなあ」
「ふっ、いいことしてあげようか?死出の旅立ちは、エッチなことより愉しいって言うからねえ」
千代女が、自分を女として見た教団幹部に流し目をすると妖艶な唇を重ねた。キスの最中に教団幹部は極楽を見た様な表情で息を引き取ったみたいだにゃ。
やれやれと言う顔して、メアリーが残り二人の教団幹部の首をへし折ったにゃ。 「ふう、アルカナ・ブルー大丈夫かにゃ?大統領の依頼で救出に来たにゃ、他の三人は既に大統領の下に連れ帰っているので安心するにゃ」
「うっ。… …」
堰を切ったように、泣き声をあげるアルカナ・ブルー。まあ、泣けるだけ大丈夫だろうにゃ。さて、やはり面倒臭いことになっているにゃ。
「みんな、訓練どおりにやるにゃ。来た!」
吾輩たちは、急激な重力の増加に床に押し付けられたにゃ。そこに惨状を一通り確認するベアタッカーの男、たしかゲインと呼ばれていた筈が現れたにゃ。
「くっ、やはり楽はさせてくれないのかにゃ」
「おお、やはりここを見張っていたら来てくれたか。伝説のネコ船長とまたやり合えて嬉しいぜ!」
「そんなのこっちは、全然嬉しかないにゃ。それより、甘いお菓子でも食べていた方がマシにゃ!」
「ほう、ならさっさとあの世に送ってやる!」
ゲインが吾輩の頭ににタクティカルナイフを振り下ろしたにゃ。当たる寸前に吾輩はジャンプして、避けたにゃ。
「なぜだ、既にこの部屋は六倍の重力に満たされているはず?」
「そんなの知らないにゃ、重力なんかのまやかしは効かないにゃ。これでも、月で特訓したんだからにゃ!」
突然自身の特殊能力を否定され、呆然とするゲイン。そこへ、千代女の苦無が首を刎ねようとする。ゲインの動きが加速したにゃ。
いや正確には突然、重力が普通に戻ったのにゃ。
「重力加重が効かないのなら、俺だけ汗水流して苦労するなんて馬鹿らしいからな」