疑問に思った事は恥ずかしがらずに聞いてみるべきだ。たしか誰か偉い人が言っていた『聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥』と、だから私は思い切って聞いてみた。
「ねえ、ホムンクルスさん。いつも魔人相手に魔界の序列何位とか言ってるけど、あれってどういうこと?」
(昼食時のテーブルで我が『魔鶏の丸焼き、ボンジリの唐揚げを添えて』を夢中で優雅に咀嚼しているとキールの付属品が尋ねてきおった。
まあ、凡庸の者に叡智を教え導くのも魔導師の務めか)
『端女、お替りが所望じゃ。それを食し終わったなら汝の疑問に答えよう』
「もう、お姉さん!そこの鶏の丸焼きにカロリー半端ない揚げ物を添えた料理の追加。大至急ね。
あと、私には紫茶のシフォンケーキ二つと紫茶をお願いね」
ふん、あんなに食べても太らないなんて。やっぱりホムンクルスって反則よね。まあ、いいけどね。
しかし、周りがびっくりするのも仕方ないよね。大男が四人がかりで魔鶏の丸焼きを運んできたのだから。たぶん焼く前だと二百キログラム以上あるよ、それをお替わりするんだもの。
結局、キールが呆れる前で私とホムンクルスさんはデザートもお替りしていた。キールは、光る不思議な板を見つめながらお茶だけ飲んでいたけど。
デザートに舌鼓をうちながらホムンクルスさんが語ってくれたのは、こういうことだった。
魔界に住む者たちに序列があるらしいことを昔の偉い人が発見したらしいのね。そして、その剣闘士の番付みたいなのがあってなんでも序列一位から七ニ位までが書かれていて、例えば私たちの移動手段の小太りおじさんは
「魔界の序列七0位、、二六の軍団を支配する魔界のプリンス」なんだって、ほんと笑っちゃうよね。
「ふーん、七ニ人も魔人がいたのね。で、それを全部ホムンクルスさんの配下にしてたってことはホムンクルスさんが魔界の王様なの?」
きょとんとして眼を大きく見開く、まじまじとリサの顔を見つめるホムンクルスの肩が微妙に震えた。 『ふふっ。はっはは。なかなか面白いことを言うな、小娘。 だが、我は魔界の支配者に非ず、むろん王であるはずも無い。
我が魔界七ニ柱の魔人を従えたのも、我を造りし偉大なるマスターの命令によるもの。魔界の支配者とは偉大なる魔導師「ソローンの造り手」様のことかも知れぬな』
「だが、お前はその支配下に置いた使い魔に反逆されて幽閉されていたよな?
これはいったい、どういうことなんだ!」
先ほどまで、不思議な光る板を眺めていたキールがホムンクルスさんに尋ねた。 『仔細は判らぬ、思い出せぬ。きっちり魔界序列一位のバアルまで支配し使い魔にしたのだが・・・・・・
あの恩知らずの魔界序列二十位、キュルソンの罠に掛かり我の身体を奪われた。 羞恥の極みの烙印まで押され幽閉される始末、一生の不覚、まこと慚愧の念に堪えぬわ!』
「まあ、何にしろ次の行き先が決まったな。そこにその魔人キュルソンがいたとしても今度は負けないよな?」
『むろん、一部なれども取り返し我が身体、それにワフード殿の造りしこの武具があるからな』
「そうよ、それに私たちもいるものホムンクルスさん」