仮想通貨の赤ちゃん(@cryptojinsei)です。
連載企画『JBaaS Summit Tokyo』レポの間の箸休め記事です。
あれあれ?赤ちゃんが泣いているよ?どうしたのかな。
ガクトコインの名称でおなじみ、国産仮想通貨のSPINDLEさん。
これまでも定期的にクリプト界隈を賑わせてきたおもしろ記念コインのSPINDLEですが、ついに議員さんの名前まで出てきて、いよいよ何とも言えなくなってきましたね……
SPINDLEさんの迷走は、ICO時に金融庁から「君ら仮想通貨交換業取ってないよね?」と突っ込まれた際にSPINDLE側が発表した法務意見書まで遡ります。
●公式発表による記念コイン化
そもそも仮想通貨交換業は、日本国内で1号・2号仮想通貨に該当する通貨の「売買」および「他の仮想通貨との交換」を業として行う場合には、必ず取得しなければならないものです。
交換業なしで銀行振込およびクレジットカード決済によるICO(≒仮想通貨の売買)を実施していたSPINDLEは、金融庁から「あ゛??」と突っ込まれてしまいました。
それに対するSPINDLE側の回答は、「SPINDLEを他人に譲渡することは原則禁止している(≒1号通貨との交換を制限している)ので、2号仮想通貨に該当しない」というものでした。
こうしてSPINDLEは""記念コイン""の汚名をかぶることとなったのです。
●ウェブサイトから日本語表記の削除
また、SPINDLEの公式サイトから、あるとき日本語表記が削除されたことをご存知でしょうか?
これ、対金融庁用の「日本語がないから日本人向けのトークンじゃないんだ!」という露骨なアッピルなんですが、実質のトークンホルダーは日本人が支配的であるようで、なぜか緊急のプレスリリースのみフル日本語で公開というピエロじみた動きがじわじわきますよね。
●度重なる問題の噴出
上記の金融庁からの突っ込み以外にも、「宇田修一に対する行政処分について(関東財務局)」や、野田総務相の金融庁情報公開請求漏えい問題など、SPINDLEに関係する人物についての問題が短期間に噴出しています。
それに伴いSPINDLEの価格は下落を続け、ついにはICO価格の500分の1に到達したとかしていないとか……
今回のSPINDLEの七転八倒は、「資金決済法に違反するかどうか」に争点を置いた、金融庁からの逃走劇であると思われます。
彼らがどういう点でアチャーしてしまったのか、順に見ていきましょう。
●2号仮想通貨か否か
まずは「ICO時点で"仮想通貨"に該当するトークンを販売していたか」についてです。
ここで目を通しておきたいのが、平成29年12月に一般社団法人日本仮想通貨事業者協会の発表した、「イニシャル・コイン・オファリングへの対応について」という公表資料の下記の部分です。
具体的には、トークンの発行時点において、将来の国内又は海外の取引所への上場可能性を明示又は黙示に示唆している場合はもちろん、そのような示唆が存在しない場合であっても、発行者が、本邦通貨又は外国通貨との交換及び1号仮想通貨との交換を、トークンの技術的な設計等において、実質的に制限していないと認められる場合においては、仮想通貨に該当する可能性が高いため、仮想通貨に該当しないとする個別具体的な合理的事情がない限り、原則として、トークン発行時点において、資金決済法上の仮想通貨に該当するものとして取り扱うことが適当と考えられる。
「発行時点において」という単語に法解釈の余地があると思われますが、少なくとも上場予定と公表していたり、暗に上場をほのめかしている通貨は仮想通貨と見なすことが適当であるという見解です。
これをただのイチ協会の見解と侮るなかれ、実はこの見方は、金融庁管轄の地方財務局担当者と全く同じ見解でした。(電凸確認済)
個別の法解釈について赤ちゃんの立場から断定はいたしませんが、個人の見解を述べるならば、SPINDLEはICO時点で「2号仮想通貨である」と見なされる確率が高いのではないか、と思われます。
●日本人を対象に販売しているか
ICOする予定の通貨が2号仮想通貨に該当するならば、日本人を対象に販売するためには仮想通貨交換業の取得が必須となります。
金融庁の追求から逃れるためには、「日本人を対象にしていませんよ!」と証明しなければいけませんよね。
どうやったら「日本人が対象でない」と見做してもらえるのか?
これも聞いてきました。答えは下記の通り。
・WPやサイトの日本語対応を行なわない
・事業計画に「日本人対象外」を明記する
・IPやドメインなどを利用し、日本からと思われる問い合わせを弾く
なるほど!
SPINDLEの日本語版WPやサイトの日本語コンテンツがあるとき突然消えたのは、そういった理由があったんですね!
……まあ、そのほかにも色々と頑張った結果、議員さんが出てきてしまった、というオチみたいですが、疑惑については深く語らないものとします。
●回避方法まとめ
上記の内容を踏まえると、日本で「交換業の取得が不要なICOによる資金調達」と見なされるためには、
①上場することをハナから計画に入れず、
②日本語サイトやWPを作成せず、
③日本からの問い合わせ等も弾く必要がある
ということがわかりました。
これらは春先に海外のTavittというプロジェクトが金融庁から警告を受けた際の指摘事項とほぼ同一のため、ひとつの指標として機能するのではないかと思います。
日本でのICOは実質不可能と言われていますが、なるほど納得の内容ですね。
さて、ERC20ベースやWavesプラットフォーム上で増え続けている国産通貨のスタートアップですが、これまでの流れを踏まえてよく考えてみると、色々と厳しい部分があるような気もしてきます。
●プレセールを行なっている通貨
某国産通貨が突然やりはじめてからすっかりメジャーとなった国産謎銘柄のプレセールですが、日本語サイトやWPを掲げて上場の可能性を示唆している段階でわりとキワドイ感じがありますよね。
一部のプレセール銘柄では「KYCを実施し購入者を特定しているから"不特定"への販売にあたらず、"業"に該当しない!」と解釈している旨を明記していたりもしますが、そもそも販売の時点でウギャーだったり、不特定多数に向けた公募販売方式(≒WEB上などでのオープンな販売)を実施した時点で後からどれだけ特定しようとそれは不特定……
いや、これも法解釈ですね。
委ねましょう、庁に。
●1sat上場方式で資金調達を行なった通貨
1sat方式について考える際に参考にしたいのは、から揚げコイン発行者のから揚げさんの事例です。
弁護士相談編と金融庁電凸編があるのですが、あくまで「から揚げさんが相談した際の担当者の解釈の場合は」と前置きした上で、取引所経由で独自トークンを売却し、売却益が出ている場合は交換業の取得を行う必要があるという解釈をされています。
そもそもサイトもWPもオール日本語で、「海外取引所への上場」を明確に計画に入れている状態で煽りに煽って、売り抜けて資金調達完了って時点で結構キてるような……
いや、これも法解釈ですね。
委ねましょう、庁に。
というか、通貨のホルダー層をみて日本人が支配的になっている時点で、海外向けだの何だの御託を並べても言い逃れできないんじゃ……
いや、これも法解釈ですね。
委ねましょう、庁に。
ちょっと考えればあまり渡りたくない危ない橋なのですが、その橋を駆け抜けていく国産プロダクトは後を絶ちません。
日本から湧いてくるプロダクトってわりと大半が、
「(我々に手数料を払いながら)投げ銭しよう!」
「(我々に手数料を払いつつ、君たちのお金で)弱い存在を助けよう!」
っていうモナコインでやれやボケってレベルのものばかりで辟易していたのですが、そういった海外勢に刺さらない、ビジネス的な魅力に欠けるプロダクトだからこそ、多少強引な資金調達を実施しないとお金が集まらないのかな……と悲しくなってしまいました。
赤ちゃんはシンプルな生き物なので、悲しいと泣いてしまうんですね。
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