だあ、だあ、かわいい赤ちゃんだよ。
いつもの通り、記事の99%は無料部分だし、ALISを使っても大したことは書いていないから、有料部分は気にせず読んでね。
twitterのタイムラインをみていたら、国内発トークンの運営会社の初期メンバーが運営資金を持ち逃げしてたって話が、立て続けに2例ながれてきたよ。
◆VIPSTAR
◆NAM
VIPSTARについては発足当初の名目自体が「よくわからないけど楽しそうだからやってみっか!」みたいなノリだったということもあり、それゆえ運営に対する大義名分もなく、結果的には数千人規模のカンパによって運営者が高等遊民になったというだけの話なのですが、NAMについては本当に頭が狂っていて、「ICOで集めた資金も残り200万円で、動けるメンバーもおらず十分な活動ができないので、代表である私が医師免許を取得して開業医となり、医院の売上げから1NAM=1JPYの価値になるよう補填します」とかいう文章が出ているとかいないとか。
あそびすぎてつかれちゃったのかな?ずいぶんおえかきがへたなんだね。
ベンチャーか、スタートアップか、スモールビジネスかでいうと、いっときの日本で濫用されていたICOや1sat上場スキームを用いてシード段階から数億円規模の資金調達を行なう暗号通貨プロジェクトは、実態としてはスタートアップにいちばん近いと思います。
といっても、たとえばよくある「ブロックチェーン技術によるテクノロジードリブン」のような観点ではありません。ただ発行されただけのトークンやコピペのソースコードには、何の技術も、意味もありません。
本質的に近いと感じるのは、調達金をもとに、ロードマップ上で確実に見えている資金ショートのタイミングまでになんとかして売上げを立て、結果を出し、有限の時間のなかで組織の存続をかけ走り続けなければならない点です。
一方で、明確な違いもあります。
一般的なスタートアップ組織が、プロダクトの進捗や組織の拡大に伴って段階的な資金調達を行なうのに対し、ICOや1sat上場スキームを利用した暗号通貨プロジェクトは、開発完了までの資金をほぼほぼ一気に調達できてしまうのです。
起業をしていない赤ちゃんが言うのもおこがましいのですが、起業というのは華やかに見えて、辛く、泥臭く、ひときわストレスのかかるポジションにつくということでもあるようです。
それでもなお走り続けることができるのは、社会や文化構造を変えるという強いモチベーション(≒心の充足)があるか、またはめっちゃお金がほしい(≒資産の獲得)のか、あるいはその両方があるからで、そういう動機がガソリンとなっているからこそ、ヘドロじみたまとわりつく闇のなかで遠くに薄ぼんやり見えるか見えないかの糸を手繰り寄せていけるわけですし、幾多の困難を乗り越えたからこそ、金銭的な報酬を獲得した際の喜びもひとしおというものですよね。文字どおりの出口なんだと思います。
ICOや1sat上場スキームのプロジェクトは、「資産の獲得」を先に行ってしまいます。あとは、当初思い描いたシステムを実現させる「心の充足」だけをモチベーションに、通常よりも遥かに多い有象無象のステークホルダーに急き立てられながら、辛く険しい数年間を過ごさなくてはならないのです。
ファイナンスに明るい人間がいなければ、数年も保たないでしょうし、開発の遅れはプロダクトの生き死にに直結します。
また、本来シード期やシリーズAなどのいわゆる立ち上がり段階では、ステークホルダーも少なく、計画通りにいかないことも含めて死なない程度の長い目でプロダクトの成長に没頭できるのですが、ICOや1sat上場スキームなんかしてDiscordやtelegramなんて開いた日にはもう目も当てられません。毎日が株主総会です。そんなに上手くいくはずないのに、目先の金が大切な人間から「オレはいつ儲かるんだ!!」の怒りをぶつけられ続けるわけです。ハナから詐欺なら適当な理由をつけてフェードアウトしますし、そうでなかったとしてもよほどの熱量がなければ、誰だって逃げ出したくもなります。
ポンジスキームのwalletは、どこもかしこもハッキングという理由をつけてサービスを停止します。それが一番簡単でわかりやすいからだと思います。一方で、サービスの始まっていない暗号通貨プロジェクトが納得感を持って幕引きするためには、どんな理由だとよいのでしょうか。どのくらいキレイなポーズをとれば、ホルダーに訴訟を起こさないでもらえるのでしょうか。
運営に近い存在の「だれか」に裏切られたのか。はたまた関係のあった会社に資金を騙し取られたのか。その「だれか」は本当に存在していたのか、その会社は本当に実在していたのか…?
プロジェクトの終了を公式に宣言しなければ、実際に公式告知があるまで継続状態がわからない「シュレディンガーのプロジェクト」が誕生するのか…?
とかなんとか本当にどうでもいいのですが、少なくとも赤ちゃんは、目の前に顔の見えない数千人からあつめた何億円かがあって、口約束でサービスつくるって言ったけど特に契約の縛りもなかった場合、鋼の精神と誠実さをもってプロジェクトを推進していく胆力が自分にあるかと言われれば、言い切ることは難しそうだな…と思いました。
しかたないよね。にんげんだもの。