僕達がレインボーギャザリングにたどり着いたのは開始の合図である新月の3日前だった。
始まる前に軽く手伝ってから参加しようと思ったからだ。
長い道のりをたどり着いて疲れていたので最初の日はゆっくりしながら自分のキャンプサイトをしっかり作ることに時間を費やした。
レインボーギャザリング開始のための準備は徐々に進んでいたのだが、通常30日かけて準備するところを残り3日しかないのでかなりの無理があった。
その上、先日の大嵐で全てが破壊された上に人々の調和も無く、ピリピリとした雰囲気が漂っていた。
不幸中の幸いはレインボーギャザリングの経験が豊かな人達が集まっていた事。
本気でやれば一人でレインボーギャザリングを全て回せるくらいの人が僕も含めて4人ほど居る。
ただ今回は、僕は腰を悪くしてるので一歩引いて関わっていこうと思っている。
シードキャンプは始まったばかりで一ヶ月の間キャンプして暮らすための設備が全く整っていない。やらないといけない事がいっぱいある。
まずは飲料水が無いとどうにもならないので近くの水場の源泉までパイプを引っ張っていって飲水を確保する。
キッチンには屋根すらないので、タープを貼って雨露を凌げるようにする。
雨が降っているときにはキッチンで食べることも考慮して大きめに屋根を作る。
キッチンから離れた所に深い穴を掘ってトイレにする。
殺菌消毒用にお酢の混ざった手洗い用の水も用意しないといけない。
みんなで働きながらちょっとづつ準備をしていく。
僕は竹を切って割って結んで、まる二日かけてキッチン用の大きなテーブルを作った。
僕は最近、腰が悪くあまり大した肉体労働が出来ないので、力仕事は他の人に手伝ってもらって、なんとかテーブルをキッチンの中にセットした。
かなり頑丈に作ったのでギャザリングの最後まで活躍するはずだ。
そうこうしている内に、たいして準備も出来ていないままギャザリングの本番が始まった。
毎日毎日どんどんと新しい人がやってくる。
満月へ向けて日毎に参加者が倍増していく。
レインボーギャザリングの世界は一般社会とは全く違った社会構造や価値観や文化を持っているので、ある一定数の経験者が居ることがかなり重要になってくる。
通常のレインボーギャザリングではだいたい経験者が半分に未経験者が半分くらい。
だがこのギャザリングではピーク時では約8割がレインボーギャザリング未経験者という特殊な状態になった。
インドネシアであるワールドレインボーギャザリングというネームバリューが大きいせいなのか、あるいはたまたまバリ島にやって来たバックパッカーが流れてきているのか、おそらくその両方なのだろう。
ギャザリング経験者は主に新しい人を迎え入れる準備で忙しく、設営はあまりはかどって行かない。
初めてきた人は不慣れな環境に馴染むのにしばらく時間がかかるため、実際に必要な労働がボランティアで賄えていないという状況になった。
そこに合わせて南国ビーチのバックパッカー特有のリゾート・リラックス・バケーション・ムードが合わさって、とりあえずのんびりしようという雰囲気が漂う。
でも実際には必要な準備が整っていないので、状況を理解していてみんなの為になんとか準備をしようと働いてている人にとってはそのムードが逆にストレスになったりもする。
かくいう僕も、最初の頃はできるだけのんびりして、単純労働だけ手伝ってあまり責任のあるポジションにつかないようにしようと思っていた。
レインボーギャザリングではリーダーはいなく、それぞれが平等な兄弟姉妹と言う関係。
全てがそれぞれの自己責任でやっていくんだけど、それでも経験豊かな長兄と未経験の末っ子と言う関係が存在している。
僕は殆どの人よりも経験量が圧倒的に多いので自動的に長兄の立場になってしまって、気づくと他の人の面倒を見ることに殆どの時間を割かれるという状態に陥ってしまう。
以前の僕は周りの人達を助けることで素敵な世界になっていくと信じていたので、他人を助けることに喜びを感じていたのだが、最近の僕は他人を助けることでその人が物事を経験し自立するチャンスを奪ってしまうので、出来る限り成るように任せたいと言う思いがある。
過保護か放任かどちらが良いかなど一概には言えないが、自分にとって丁度いいバランスを見つけようとしている。
そういう思いがあったので、自分はできるだけ一歩後ろに引いて他の人のサポートをしようと思っていたのだが、今回のギャザリングでは状況が許してくれなかった。
つづく。。。
次回は、 レインボーギャザリングの経理の仕事をやることになり、どんどんとオーガナイズに深入りしていく。そんな中、色々な問題が持ち上がってくるという話です。
マジックハットフォーカライザーになる(現在023)
(この記事は2017年9月10日に自身のブログに投稿した物を加筆修正してアリスに再投稿したものです。)
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