ディジュリドゥ奏者の友人が僕の家に滞在していた間の一番のハイライトは、僕達の共通の友人のセイルボートで無人島に遊びに行ったことだ。
セイルボートは風の力だけを使って移動するので、石油資本主義に異を唱え、自然との調和を目指す旅人たちの間で徐々にブームになりつつある。
この船乗りの友人たちは、3、4年前に中央アメリカでワールドレインボーギャザリングやコスタリカのジャングルのヒッピーコミュニティで暮らしていた時の友人たち。
彼らはコスタリカのジャングルのコミュニティに住んだ後に、隣国パナマに向かい中古のセーリングボートを買って、太平洋を3年かけて横断してタイのコパンガン島までやってきた。
共同生活しながら旅をするというコミュニティのアイデアをセイルボートに持ち込んだようなライフスタイル。
旅の途上の太平洋の島々で音楽を演奏したり、サーカスのショーをしたりしてお金を稼ぎながらここまでやってきたらしい。旅人のたくましさを体現している。
2つあるボートのうちのひとつは船のキャプテンが自分で買ったもの、もう一つは有志から寄付されたもの。彼らは世界一周に向けて、アフリカへ向かってる途中にこのコパンガンにストップオーバーしている。
彼らのウェブサイトを見つけたので、興味のある方は見てみてください。
彼らの船をヒッチハイクすることも出来るみたいなので、船酔いしない方はどうぞ。
彼らはこの後はインドネシアであるワールドレインボーギャザリングに参加してからアフリカへ向かう予定。僕の予定とかぶるので数ヶ月後にはまた会うことになるだろう。
彼らは僕たちをコパンガン島の近くにある小さな無人島にセールボートで行くツアーに招待してくれた。その島には小さな無人のビーチと洞窟があるらしい。
僕と友人は待ち合わせ場所のビーチへ向かうがまだ誰も来ていない。
沖の方にセイルボートが見えるので多分あれが彼らの船なんだろう。港に止めるとお金を取られるので沖合に勝手に留めているらしい。
しばらく待っていると沖合のセイルボートから大きなゴムボートがビーチまで迎えにきてくれた。
みんなでゴムボートに乗り込み、沖に留めてあるセールボートに向う。
その日は風も海流も強く、なかなかセイルボートまでたどり着かない。予定よりもだいぶん時間がかかってしまった。
だが、風が強いのはセイルボートの旅には最適だ。
出発の準備にかなりの時間を食われたが、ついにゆっくりと無人島に向けてセーリングに出発!
船はゆっくりと島に向かっていく。
そこで気づいたのは、現在目の前に近づいてきたこの島は僕たちの向かっている島じゃないということ。彼らが言うには一度遠くにあるこの島に来て、そこから折り返して、ぼくたちが本当に行きたい島に向かうのだということだ。
風と方向の問題らしい。セールボートがある一定の方向に行きたいときには一旦別の方向に進んでから、方向を転換するという方法を取らないといけないらしい。エンジンを使わずに風の力だけで移動するには色々な計算があるようだ。
風の力だけで進むというのは、すごくゆっくりとしたプロセスだった。
海の真ん中で波に揺られながら進んでいると、まるで時が止まったかのような錯覚に陥る。
予想通り船はかなり揺れたので、乗り物酔いしやすい僕は自分の体を重力に対して垂直に保つようにして船酔いから自分の身を守るようにした。
無人島に向かう途中いろんな話をしたが、僕の船酔いの話から、嵐を乗り越えた武勇伝に話が移る。
太平洋を航行中、嵐に巻き込まれて船は大揺れに揺れるが、ハンドルを放すわけにはいかないので、何時間もゲーゲー吐きながら運転し続けたと言う。
この話を聞くまでは船の旅とかもいいかも、なんて思っていたが強烈なゲロ話は一気に気持ちを萎えさせる。
ゆっくりではあったが、最終的にはちゃんと向いたかった無人島にたどり着いた。時間は午後1時半、ビーチから島に向かうのに3時間もかかってしまった。
僕は夕方の5時からダンスイベントで演奏する予定があるので、4時半には岸に着いていないといけない。片道3時間かかることを考えると今すぐ帰らなければ間に合わない計算だ。
僕はそのことをボートのキャプテンに既に伝えてあったので彼はそのことを知っているはずだが、明らかにこの感じだと、今日中にメインの島まで帰れそうにない。
時間社会から逸脱した旅人にはよくある話だが、時間を守るという感覚が欠如した人が多い。インドやアフリカなどもそんな感じだ。
まるで時間の止まったような自然と一体化した心地の良い世界で何時までに帰らなければいけないと急かすのは気分のいいことではないが、ミュージシャンとしてブッキングを無視するわけにはいかない。
そのことをキャプテンに伝えると、この船はすごく強力なモーターを積んでいるので、もし僕たちがすぐにでも帰りたければたったの10分でビーチまで戻れるとのこと。
しっかり文明の後ろ盾があった上での余裕のある遊びだったんだ、と安心する。
僕たち数人は小さなボートに乗りかえ無人島のビーチへ向かう。
他の数人は別の小さなボートに乗り、銛をもって魚をハンティングしに行く。
僕たちは無人島のビーチを散策したり、日向ぼっこして過ごす。
期待していた洞窟は足場が悪く近くまで行くことができなかった。
しばらくすると、一緒に無人島に上陸した船乗りの女の子の一人が僕にゴムボートをセイルボートまで漕いでいくことを担当してくれないかと聞いてきた。彼女はセイルボートまで泳いで帰りたいらしい。距離は約100メートルほどだ。
もちろん、そんなのはお安い御用だ。
さんざん遊んだし、本島に帰る時間も近づいたのでそろそろセイルボートの方へ戻ろうかと思い、沖を見ると、キャプテンが魚を捕まえに行ったボートに向かって何事か大声で叫んでいる。
何か雰囲気がただ事ではない、嫌なことが起きている予感が!
まだ無人島に残っている人を集めて直ちにゴムボートに乗り込み、セイルボートへと向かう。
どうやら、さっき僕にゴムボートをセイルボートまで漕いでいってくれと頼んでいた娘が、ビーチからセイルボートに向かって泳いで行く途中で海流に飲まれて流されていたのだ!
彼女はすでに遠くまで流されており、自分の力ではなんともできず救助が必要な状態だった!
今日は風も海流も強く、セイルボートの運行にはちょうどいいと思っていたが、それが裏目に出てしまった。
溺れた彼女は運よくキャプテンに見つけられて、どうすれば良いか指示を与えられていた。
すぐさま、キャプテンは足ヒレをつけて海に飛び込み救助に向かう。
それと同時にもう一人の別の船乗りの女の子も何かしなければと、溺れている人を助けるために海に飛び込んだ。こちらは足ひれなし。
最初は調子よく救助に向かうが強い海流のせいでこの子まで波に飲まれてしまった。
足ひれをつけたキャプテン一人で、溺れた女の子一人を抱きかかえて船まで泳いで来れたところが、もう一人の女の子が飛び込んで溺れたためにキャプテンが二人を助けるはめになってしまった。
足ひれがあれば一人を泳ぎながら引っ張れるが、二人を引っ張ることはできない。
結果、一人で二人を抱えて海上に浮かんだまま、まったく身動きが取れなくなった。
そんな中、銛で魚を捕まえていた人たちがボートで助けに向かう。
無事にたどり着き、3人を助けることができたが、今度はその二人乗りのボートに全員で5人乗ることになってしまい、定員オーバーでボートをこぐことが出来ない。
やはり身動きができなくなり、ボート漂流の状態になってしまった。
最初は一人の海難事故だったのが、今では5人の海難事故にまで膨らんでいる。
僕たちのゴムボートはやっとセイルボートに帰り着いて、僕ともう一人の女の子はゴムボートからセイルボートへ飛び移り、友人のディジュリドゥ奏者はそのままゴムボートに滞在して漂流している人たちを助けに向かった。
僕たちは彼に長いロープを投げて渡し、それを魚を捕まえていた船まで引っ張って行ってもらった。
ボートの重量オーバーでこぐことは出来ないが、ロープがあれば彼らを船まで引っ張ることができる。
海流が強く、ボートにたどり着くまで苦労したが、なんとか彼らにロープを渡すことができ、ゆっくりとセイルボートまで引き寄せることができた。
なんとか無事に全員がセイルボートまで戻って来れた。誰にも怪我もなく、何も失ってはいない。
とりあえず一安心。。。
キャプテンはとても怒っていた。
彼が言うには僕たちは少なくとも5つのミステイクをしたそうだ。彼は僕たちに一つ一つ何が間違えていたのかを激怒しながら説明する。
楽しかったボートツアーが一変して険悪な雰囲気で終わりそうだ。
その後、僕が島に戻らなければいけない時間が近づいたので、僕たちはモーターを使ってメインの島まで戻ることにした。
ここで救いの手が。
ビーチに向かっている途中に副キャプテン的な立場の一人が ”まぁ結局全部よかったよね” とおどけた笑顔で言い、その言い方にはサーカスでパフォーマンスしてきた経験による魔法が含まれていて、僕たちはすぐに打ち解けて和やかに冒険を終えることができた。
僕たちは無事に本島に帰ってきた。その日は色々あったが、かなり楽しい冒険だった。
その後もイベント会場に時間通りに間に合って、しっかり踊り、気持ちよく演奏して1日を終えることができた。
全ては完璧!!
つづく。。。
”いいね” は忘れずにおしてね。
次回は、バスキングでの現地収入が途絶え、生活費がなくなっていく中、ビットコインに再開し、投資し始める話です。
(この記事は2017年3月3日に自身のブログに投稿した物を加筆修正してアリスに再投稿したものです。)
僕のブログを初めて読まれた方はこちらもどうぞ。
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