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夏休みの宿題 『どんぐりと山猫』を読んで

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  • 空猫(旧 elm13)
  • 2019/08/07 07:52

大街さんの企画、「ALIS夏の読書鑑賞文コンテスト」に参加します!

 

読書感想文と聞いて、すぐに思い出したのが中学1年生の頃の夏休みの宿題でした。

自分は作文が本当に苦手で、読書感想文はいつも苦労していました。

中学1年当時、夏休みになっても遊んでばかり。

近くの森に行って虫を捕まえたり、小川に行って遊んだり、近所の野良猫と遊んだり。

そんな毎日が楽しくて仕方がありませんでした。

そして当然のように、全く宿題には手がつかず、その中でも特に後回しになってしまったのが読書感想文でした。

夏休みが終わりに迫り、まずとにかく本を読まなければと選んだのが、宮沢賢治の『どんぐりと山猫』です。

この本を選んだ理由はとにかく短いからです。

そんな消極的な理由で選んだ本ですが、結果的にお気に入りの一冊になりました。

当時の夏休みの毎日を遊び回っていた自分と似たような世界観が展開されている童話だったからです。

そんな夏休みの思い出が生き生きと浮かんできたので、当時読んだ『どんぐりと山猫』をふたたび読んでみて感想文を書いてみようと思います。

 

青空文庫

 

登場人物

かねた一郎(物語の主人公、山猫から手紙を受け取り裁判に出かけます)

山猫   (裁判官、どんぐりたちの言い争いに裁定を下します)

馬車別当 (山猫の手下)

どんぐり達(誰が一番すごいか、えらいかを裁判で争っている)

 

あらすじ

ある日の夕方、かねた一郎の元に山猫から葉書が届きました。

9月19日に裁判をするから来て欲しい、という内容でした。

次の朝さっそく一郎は出かけてゆきます。場所はわかりませんが、とにかく森の中を谷川に沿って進んでいきました。道中、栗の木、滝、りすに山猫をどこかでみなかったか尋ねながら進んでいくと、やがて半纏のような変な服を着た気味の悪い男に出会いました。この人が山猫の部下の馬車別当です。どうやらこの人が一郎あてに葉書を書いたようです。

一郎と別当が話をしている間に、黄色い陣羽織を着た山猫が現れました。その後300個以上の赤いズボンをはいた黄金のどんぐり達がやってきました。

山猫は、どんぐり達の裁判を担当しているのですが、裁判開始以降3日経っても何も進展がないので、一郎に助けを求めたのでした。

どんぐり達は口々に、大きいどんぐりがえらい、まるいどんぐりがえらい、頭が尖ったどんぐりがえらい、などと言い争っています。山猫も、誰が一番えらいかを判断できずに困っていたのです。

そこで山猫が一郎に意見を求めたので、一郎は「このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらいとね」と言いました。山猫は一郎の言う通りの判決を下し、騒がしかったどんぐり達も静まって、裁判が終結しました。

裁判を解決したお礼ということで、黄金のどんぐり一升か鮭の頭のどちらかをもらえることになり、一郎は黄金のどんぐり一升を選びました。

山猫は鮭の頭を選ばなくてホッとしました。その後山猫と別当はキノコでできた馬車で一郎を家まで送って行きました。

家に近づくにつれて黄金のどんぐりは色あせていき、家の前に着いた頃にはどんぐりは普通の茶色のどんぐりになり、キノコの馬車も、別当も、山猫も、見えなくなっていました。

 

 

感想

中学以来ふたたび読みましたが、13歳の頃の自分の感覚が生き生きと蘇ってくるようでした。

一郎が山猫がどこにいるかのあてもなく森の中へと彷徨っている様子が、夏休みにワクワクだけを頼りに森の中を遊び回っていた自分と重なります。

当時は夏休みでしたのでドングリもまだ落ちていない季節だったと思いますが、リスや蛇に出会ったり、クワガタやドジョウなんかを捕まえながら、独自の想像の世界に浸っていました。

一郎も栗の木や滝、リス達に山猫の行方を尋ねながら探し回ります。

そんな冒険の末に、一郎は山猫に出会います。

山猫の登場以降、どんぐりの裁判という、ますます日常離れした異世界へと入り込みます。

同じ宮沢賢治の童話『注文の多い料理店』に出てくる食堂の名前も確か山猫軒だったはず。

『どんぐりと山猫』でも『注文の多い料理店』でも、山猫が異世界へとつれて行ってくれる媒体のような役割を果たしています。

山猫に限らず猫達って、異なる次元を同時に生きているようで、私たちを異次元へと誘ってくれるような神秘さを携えている気がします。

自分も旅先で、その土地の猫達に出会うと、なぜか時が止まったような、異世界に入り込むような感覚がすることが時々あります。

初めてALISに投稿した記事も、天草で感じたそんな感覚を記事にしています。

 

話は戻って、どんぐりの裁判の終盤で、「このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらいとね」と言って締めくくるシーン。

今読んでみてもやはり一番好きなシーンです。

バカボンのパパが「これでいいのだ!」という一言で、意味づけや比較、思考の世界に囚われていた人々を、一気に意味づけを超えた世界に昇華させてしまう様子と似た感じを受けました。

一郎もどんぐり達を一括して、山猫までも唸らせて、無益な論争のループに終止符を打ちました。

爽快感と解放感を感じるシーンです。

 

物語の最後、一郎の家が近づくにつれて、どんぐりが茶色になり山猫達が消えてしまい、ひとつの世界が終わりました。

当時、夏休みが終わりに近づき、現実の世界に戻ってしま自分の状況と重なり、夢が終わってしまったようなきゅんとした切なさを感じました。

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大街さん素敵な企画ありがとうございました!

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いろんな場所を無為に旅するのが好きです。旅先で出会う自然や猫たちに癒されています。

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