10月6日に東京大学の海洋アライアンスにおいて以下のような講演会でお話させていただく機会をいただいた。
学生さんの中にはすでに海外でインターンシップをした人(ウィーンでインターンシップをした数人も含め)が少なくなかったので、キャリアパスの話に70%程度、インターンシップの話に30%程度時間をとった。その中でコンサルタントというステップが正規職員になるための重要な一つのキャリアパスになっていることを話した。ここでコンサルタントといっても、日本ではあまり通用しないことをご指摘いただき、講演中にsli.doというツールで受けた質問でもコンサルタントについての質問がいくつかあったので、ここで補足しておきたい。
日本でコンサルタントというと、外資系のコンサル会社、あるいは開発系の日本企業などでJICAなどの仕事を取ってきて実施する会社員のことを思い浮かべるのが普通だろう。国連機関においてコンサルタントというと、多様な勤務形態がありうるが、他の企業の会社員であるということはない。国連機関にてコンサルタントというと、あくまで国連機関の被雇用者である。私の所属する組織だと、Individual Service Agreement (ISA)という分類の雇用契約となる。他の機関だと他の名前で呼ぶが基本的には同じような雇用形態。ただ、UNDPだと応募の際にいくらで応募する仕事を完遂できるか示さないといけないと聞いたこともあるので、雇用というより入札という分類になるかもしれない。
どんな職種があるかというと、インターナショナル・ナショナル、常勤と非常勤、事務職員と専門家というようなカテゴリがあり、それらの組み合わせで多様な形態のコンサルタントの職種があり得る。
ナショナルコンサルタントはプロジェクト対象国の新興国におけるプロジェクト関係者が付くポストで通常はその国の国籍を持つことが条件になるので、日本人にはほとんど関係のないポスト。
インターナショナルコンサルタントは専門家などが自国からプロジェクト対象国に出張あるいは短期滞在をして対象国にて仕事をする。コンサルタントの自国には雇用した国連機関のオフィスがあるとは限らないので、多くの場合雇用した国連機関の事務所に立ち寄ることもない。契約期間は通常はタスクがある時に送られる契約書による、短いと数日、長いと数ヶ月程度のことが多い。常勤である必要はないし、場所も出張場所・期間以外は拘束されることもないので、働き方が多様化している今日、このような働き方を希望する方々も多いと日本のいわゆる普通のコンサルタント会社勤務の方からもコメントをいただいた。
ナショナル・インターナショナルコンサルタントの中には、オフィスに常時・非常勤で勤務する人も多くいて、日本で言う非正規社員という分類になるか。
別のところでも書いたが、自分の国連機関におけるコンサルタントに対する見方を以下にペーストしておく。
--
同僚の経歴と私達日本人を比較していつも痛感するのが、専門家としてあるいはコンサルタントとして活躍される日本人の方が少ないことです。もちろん、自分もそうできたか・したかというとたぶん無理だったでしょうから、言うのは安しです。一点だけ強調しておきたいのは、日本社会でコンサルタントという職業が欧米のようには尊敬される職種でないことが原因の一つだと思います。技術分野では必ずこの分野ではこの人というコンサルタントがいて、彼ら・彼女らの貢献なしには私達の仕事は成り立ちません。私と仕事を長年している尊敬するコンサルタントは、ドイツ人、カナダ人、フィンランド人、イタリア人、イラン人、トーゴ人、エジプト人などです。彼ら彼女らの何人かは世界中を飛び回り幾つもの国連機関と仕事をこなしています。このようなコンサルタントの方々は逆に正規職員になることには興味がなく、自分の専門分野でいつも勝負しています。私の今までの人生で日本人のコンサルタントとしてできる人だなと思ったのは3人だけで、その方々全員女性です。男性でも女性でも働き方がさらに多様化するであろう将来、コンサルタントとしてバリバリ働くというキャリアもありなのだと頭の片隅に覚えておいていただければ幸いです。
--