振り込め詐欺被害が依然として深刻です。振り込め詐欺は詐欺被害を出すだけでなく、大麻や危険ドラッグのような依存性薬物と同じく半グレなど反社会的勢力の資金源になります。被害防止は資金源を断つ上でも重要です。しかし、プレミアムフライデーに見られるような民間の働き方を無視した公務員感覚では振り込め詐欺被害防止効果は低いでしょう。
振り込め詐欺被害が広がっているのに依然として被害者が出ることは、被害防止の訴えが説得力を持たないためでしょう。何しろ警察官自身が振り込め詐欺をしています。京都府警山科署勤務の巡査長は2018年11月に特殊詐欺対応を名目として70代の高齢男性から現金1180 万円をだまし取りました。
神奈川県警第1交通機動隊の巡査(24)は2019年10月に「振り込め詐欺の犯人を捕まえた」ため、キャッシュカードの保全措置をすると偽り、高齢者からキャッシュカードを受け取った。この日の夜にカードから横浜市都筑区内のコンビニで50万円が引き出されました。これらは警察が特殊詐欺対策をしていなければ起こらなかった犯罪です。市民が警察のメッセージを聞かなくなることも無理はないでしょう。
内容面でも民間感覚を理解していないと感じられます。振り込め詐欺の典型的なパターンは息子を名乗る人物から電話がかかり、「今日中にXX万円を用意しないと、契約できず、会社を首になる」というものです。振り込め詐欺被害防止のアナウンスは、「このような依頼に騙されないようにしましょう」というトーンになります。
どうも詐欺被害防止のアナウンスを見聞きすると、「今日中にXX万円を用意しないと、契約できない」というような事態が起こりうるという民間の現実を理解していないように感じられます。この種の依頼は嘘だと頭から決めつけていると感じられます。この種の依頼を信じることが誤りであると見下す発想が感じられます。
納期意識に欠ける公務員仕事ならば今日中にできなければ明日やればいいという働き方で済むかもしれません。しかし、民間では今日中にできるかできないかが問題です。今日できなければ明日やるということにはなりません。今日できるか、できないかになります。できないならば会社を辞めた方が良いということもあるでしょう。それが民間感覚の責任の取り方です。
今日できなかったら、頑張って明日遅れを取り戻すという次元の話ではないこともあります。昭和の「頑張ります」精神は有害です。頑張ることを強要するならばパワハラ(パワーハラスメント)になります。頑張ることを強要させられるならば、やはり辞めた方が良いとなるでしょう。辞めることで救われます。
中には「自分は頑張っても無理な人には頑張れとは言わない。頑張ればできる人にだけ頑張れと言う」として頑張ることの強要を正当化する差別主義者もいます。これは差別的なパワハラになります。頑張っても無理な人に「頑張れ」と言っても結果に結びつきません。それは単なる精神訓話にしかなりません。むしろ頑張ればできる人に頑張れと言うことこそ人を苦しめるパワハラになります。
目の前の自分の仕事を解決することしか考えない公務員感覚では振り込め詐欺被害さえ発生しなければ良いとなり、その確認で今日中の作業ができなくても知ったことではないとなるでしょう。そのような公務員感覚で振り込め詐欺被害防止を訴えても、民間には届かないでしょう。
このように考えた背景にはプレミアフライデー(Premium Friday)という勘違い働き方改革施策があります。長時間労働対策として月の最終金曜日の早帰りを推奨する施策ですが、月の最終金曜日は月の最終営業日になることが少なくないものです。グローバル化により、四半期決算という短期的な視点が重要性を増していますが、四半期の最終営業日にもなることもあります。その日でなければできないこともある最も忙しい日に早帰りを強要することになります。これが公務員感覚ならば振り込め詐欺被害防止もピント外れになるでしょう。
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