歴代最長記録を更新した第二次安倍政権が終わります。安倍政権の取り組みの一つに働き方改革があります(「安倍晋三首相の辞意表明と働き方改革」ALIS 2020年8月28日)。働き方改革は産業の高度化や価値観の多様化により、20世紀的な工場労働者の集団労働が適合しなくなった時代に即した政策です。一方で公務員によって捻じ曲げられた働き方改革施策にプレミアムフライデー(Premium Friday)があります。
プレミアムフライデーは公務員の勘違い働き方改革の典型です。プレミアムフライデーは月の最終金曜日の早帰りを推奨する施策です。一方的に定められた日に皆で早く帰ろうという仕組みは愚の骨頂です。働き方改革は労働者の自由を増やすもので、皆で一斉に帰るなど一律のルール押し付けは迷惑です。プレミアムフライデーが流行らないことは当然です。
皆で早く帰るというプレミアムフライデーの発想は、個人の自由で多様な働き方を目指す働き方改革に逆行します。帰りたい時に帰ることが自由です。早帰りの強制は苦痛です。皆が一緒に帰るように国が指図することは自由な働き方になりません。画一的に管理する公務員の発想です。個々人の需要に応じた柔軟な仕組みが求められています。
プレミアムフライデーの世間知らずは最終金曜日という日程設定にもあります。わざわざ月末の忙しい時期を設定しました。「どうせ世の中を知らない役人が企画しているんだろう」と批判されます(橋本結花「「プレミアムフライデーってありがた迷惑ですよね?」と日経新聞で意見したら、経産省がやってきた──サイボウズ青野慶久と「日本人の休み方」を議論」2017年11月14日)。民間に通用しない公務員感覚の押し付けは不幸を生みます。
月の最終金曜日は月の最終営業日になることが少なくないです。月末の最終営業日は、最も忙しい日であることが多いです。この日に早く帰るようにすることは嫌がらせ以外の何物でもないものです。有給申請に時季変更権を行使されても最も不自然ではない日です。
非正規雇用の契約処理では、毎月月末に納品作業を実施することが通常です。長期間の契約であっても各月の手続きは必要です。そのために月末の営業日こそ出る必要があります。公務員は民間企業が持たざる経営を推進している事実を知らないのでしょうか。公務員は民間の常識を知らないのではないでしょうか。昭和の働き方を当たり前と思っている世間知らずの公務員でなければプレミアムフライデーという発想は出てこないでしょう。
月の最終営業日になるということは四半期の最終営業日になるということです。たとえば2018年9月28日は四半期の〆日でした。グローバルスタンダードは四半期決算を求めています。四半期毎の情報開示は、より短期的な視点で経営実態を把握することに役立ちます。日本企業が国際競争力を持ち、海外の投資家から選ばれるために必要です。この四半期決算の視点は民間感覚を持たない公務員に欠けている要素でしょう。
プレミアムフライデーは公務員が楽をするための制度であり、民間企業には関係ないと批判する声もあります。公務員のためだけの制度ならば、住民のサービスレベルはダウンするため、有害です。逆に平日早帰りした分に休日開庁すればサービス向上になります。そのような民間サービス業の感覚がないことが問題です。
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