株式会社ジャパンネット銀行は2020年7月31日の取締役会でPayPay銀行株式会社への商号変更を決定しました。サービス名もPayPay銀行に変更します。変更は株主総会での定款変更の決議や関係当局の認可を前提とし、2021年度上期を予定しています(株式会社ジャパンネット銀行「「ジャパンネット銀行」から「PayPay銀行」への商号変更を決定 PayPayブランドへの変更で、金融サービスをより身近に、便利に」2020年7月31日)。
これはソフトバンク関連の金融事業がPayPayブランドに統一されることの一環です。「Yahoo! JAPANカード」が「PayPayカード」、「Yahoo!保険」が「PayPay保険」とYahoo!を冠するサービスがPayPayになることは分かりやすいものです。既に「福岡 ヤフオク!ドーム」が2020年2月29日から「福岡PayPayドーム」に変更されています。
これに対してジャパンネット銀行はネット銀行のパイオニアであり、Yahoo!系のサービスの変更以上にインパクトがあります。ジャパンネット銀行に慣れ親しんだ消費者からは否定的な反応も出ています。
インターネット黎明期のECはジャパンネット銀行しか扱っていないケースもあり、ジャパンネット銀行に思い入れを持つ消費者も多いです。とはいえ、それはインターネット老人会のノスタルジーに過ぎないかもしれません。今やネット銀行は当たり前になりました。ネット銀行に甘んじず、変化し続けるという意思表示と前向きにとらえることもできます。
ジャパンネットは日本とネットという意味であり、メッセージ性はありません。PayPay銀行への変更はマーケティング戦略的に社名やサービス名の有効活用になります。但し、ここには贔屓の引き倒しの懸念もあります。プラットフォームとして優位性を持つためには、多くの銀行の利用者からも便利に使える必要があるでしょう。特定の銀行にPayPayを冠することがプラットフォームの中立性を損なう印象を与えないかは考える必要があります。
名称からジャパンがなくなることは、PayPayがアリペイと連携することなどと相まって、グローバリズムを感じさせます。ここは国粋主義的な観点から反発があるかもしれません。しかし、消費者としては、どこの国のものでも良いものは良いと評価することが公正であり、賢い支出になります。国内の仲間内で取引して経済を回す村社会的な業界団体の既得権益に消費者が乗っかることは愚かです。
それとは別に消費者感覚から違和感を持つ理由はあります。消費者にとって銀行は資金を預けるところです。ところが、Payは支払いの意味です。PayPayも決済のためのものです。この点は銀行の名称として違和感になります。低金利時代は消費者の銀行口座も当座預金化するという寂しい実態を反映しているのでしょうか。
----- Advertisement ------
◆林田力の著書◆
東急不動産だまし売り裁判―こうして勝った
埼玉県警察不祥事