消費者が家を売る時は仲介業者に依頼するケースが多いでしょう。仲介業者との契約には専属専任媒介契約と専任媒介契約、一般媒介契約という種類があります。この中の何れが良いか消費者は悩みます。結論を先に申し上げると、物件囲い込みの問題があるため、一般媒介契約をお勧めします。
専属専任媒介契約では、契約した仲介業者を通してしか売却できません。専任媒介契約も基本的に同じですが、自分で見つけた買い手に売却することはできます。これに対して一般媒介契約は複数の仲介業者に頼むことができます。
仲介業者は専属専任媒介や専任媒介を勧める傾向があります。これは業者にとっては競争者がいなくなるためです。消費者にとっても専任とすることで仲介業者が真剣に買い手を探してくれるならばメリットがあります。そのように信頼できる仲介業者ならば専任とすることも一案です。
しかし、専任は競争者がいないということで仲介業者は安心して怠けられるということにもなります。この消費者にとって悪い方向に働く可能性の方が高いと私は見ています。大谷アキラ作、夏原武企画・原案、水野光博脚本『正直不動産 1』(小学館、2017年)も不動産業者は専属専任媒介契約を勧めますが、正直ベースでは消費者の利益にならないとします。
現実に起きている問題として物件囲い込みの問題があります。仲介業者は物件が売却できれば売り主から仲介手数料を貰えます。物件の買い主も、同じ仲介業者経由で家探ししている人ならば買い主からも仲介手数料を貰えます。売り手と買い手の両方から貰えるので、これを両手取りと言います。
仲介業者にとって両手取りが一番美味しいので、悪質な業者は何がなんでも両手取りを目指そうとします。そのために他の仲介業者から物件の内見の申し込みなどがあっても断ってしまいます。
実際に私は東急不動産だまし売り裁判後の家探しで、やられたことがあります。インターネットで見つけた物件について、仲介業者経由で内見を依頼したところ、もう決まっていると断られました。ところが、その後に物件の専属専任媒介の仲介業者に直接依頼したら内見できました。
売り手からすれば物件を購入してくれるならば、どの仲介業者が連れてきた買い手でも歓迎できますが、専属専任で物件が囲いこまれると、それが機能しません。物件囲い込みは東急リバブルなど大手業者も行っており、大手だから安心ということは全くありません(「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」ダイヤモンド・オンライン 2015年4月13日)。
物件囲い込みが起きる原因は仲介手数料の両手取りです。そもそも仲介業者は物件の売り手又は買い手のエージェントです。一つの仲介業者が売り手と買い手の双方のエージェントになること自体がおかしなことです。海外では禁止している国もあります。弁護士が双方の代理をしたら、弁護士懲戒ものです。日本でも民主党政権ができる時の民主党マニフェストでは両手取り禁止を掲げました。残念ながら口だけで終わりましたが、掲げただけでも前進と評価しなければならないところが日本の政治の現状です。
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◆林田力の著書◆
東急不動産だまし売り裁判―こうして勝った
警察不祥事と薬物乱用