Amazon Comprehendでテキストを感情分析してみました。Amazon Comprehendは機械学習を利用した自然言語処理NLP; Natural Language Processingのサービスです。AWS; Amazon Web Serviceのサービスで、AWSのアカウントを持っていれば利用できます。このサービスの感情分析APIは、テキストの全体的な感情を返します。感情は肯定的Positive、否定的Negative、中立的Neutral、混在Mixedに分類され、それぞれのスコアも表示されます。レスポンスはJSON形式で返されます。
たとえば『鬼滅の刃』の竈門炭治郎の名言に「頑張れ炭治郎頑張れ!俺は今までよくやってきた!俺はできる奴だ!そして今日も!これからも!折れていても!俺が挫けることは絶対にない!」があります。この感情分析結果はPositiveが99.9%と非常に高いです。自己肯定感の高まる台詞ですが、感情分析でも裏付けられます。
{
"Sentiment": {
"Sentiment": "POSITIVE",
"SentimentScore": {
"Positive": 0.9988886713981628,
"Negative": 0.00011760481720557436,
"Neutral": 0.0009584520594216883,
"Mixed": 0.000035247514460934326
}
}
}
さて、求められるスキルにPythonとScalaがあったとします。あなたは、Pythonはできますが、Scalaはできません。この場合に「Pythonはできますが、Scalaはできません」と伝えた方が良いでしょうか。「Scalaはできませんが、Pythonはできます」と伝えた方が良いでしょうか。各々の感情分析結果は以下です。
Pythonはできますが、Scalaはできません。
{
"Sentiment": {
"Sentiment": "MIXED",
"SentimentScore": {
"Positive": 0.003121229587122798,
"Negative": 0.08576145023107529,
"Neutral": 0.032418400049209595,
"Mixed": 0.878699004650116
}
}
}
Scalaはできませんが、Pythonはできます。
{
"Sentiment": {
"Sentiment": "MIXED",
"SentimentScore": {
"Positive": 0.009960847906768322,
"Negative": 0.005362161435186863,
"Neutral": 0.008665523491799831,
"Mixed": 0.9760115146636963
}
}
}
どちらもMIXEDで大差ない結果となりました。「できる」と「できない」から構成されているため、当たり前と言えば当たり前です。それでも「Scalaはできませんが、Pythonはできます」の方が、ややPositiveが高く、Negativeが低くなりました。
次に三日間で作業を依頼されたとします。あなたは一週間ならばできると回答します。「一週間あればできますが、三日間ではできません」と答えた方が良いか、「三日間ではできませんが、一週間あればできます」と答えた方が良いでしょうか。各々の感情分析結果は以下です。
一週間あればできますが、三日間ではできません。
{
"Sentiment": {
"Sentiment": "NEGATIVE",
"SentimentScore": {
"Positive": 0.0034286517184227705,
"Negative": 0.9838111996650696,
"Neutral": 0.00791939441114664,
"Mixed": 0.0048407637514173985
}
}
}
三日間ではできませんが、一週間あればできます。
{
"Sentiment": {
"Sentiment": "MIXED",
"SentimentScore": {
"Positive": 0.11515579372644424,
"Negative": 0.14924824237823486,
"Neutral": 0.07643478363752365,
"Mixed": 0.6591612100601196
}
}
}
「一週間あればできますが、三日間ではできません」がNegative、「三日間ではできませんが、一週間あればできます」がMixedになりました。
Amazon Comprehendでは「できません」を先に出し、「できます」で終わらせた方がPositiveな印象を与えることになります。「できないこと」を先に説明することは、きちんと不利益事実を説明する姿勢であり、誠実さを示すものとプラス評価されると考えることができます。
一方で自身の直感や経験則から先にできることを述べた方がPositiveな印象を与えると考える人もいるかもしれません。これは人間が機械ほど公正ではないという観点から説明できます。機械はきちんと全文を読み取って感情分析します。しかし、人間は最初に「できません」と言われると興味を失せて、後は真面目に聞かなくなるかもしれません。AIに評価される社会をディストピアと考える人は少なくないですが、人間に恣意的に評価される方がディストピアです。
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