多数の新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)感染者を出した中野のコールセンターについて株式会社NTTドコモと株式会社ベルシステム24ホールディングスは2020年3月31日に拠点名を発表しました。中野区中野の中野セントラルパークサウス7Fの「ドコモ あんしん遠隔サポートセンター」(中野ソリューションセンター)です。
NTTドコモとベルシステム24は3月12日からコールセンターで感染者が出たことを発表していましたが、場所は明らかにしていませんでした(「中野のコールセンターで新型コロナウイルス9人感染」ALIS 2020年3月26日)。
発表では3月31日に感染の可能性のある社員全ての検査が終了したとします。検査実施者は60名で、陽性10名、陰性50名です。コールセンターの従業員数は約600名、座席数約250席です。検査者の割合は従業員数の10%、座席数の24%です。コールセンターという密集・密閉・密接の度合いが高い職場環境を踏まえると検査数の少なさを感じます。
主な感染スポットは「職場外での社員同士のプライベートな活動によるもの」とします。これによって「職場内が主な感染スポットではない」と主張したいのでしょうが、消費者や住民にとって意味のある情報になりません。職場が主な感染スポットならば職場に近づかないことが自衛になります。しかし、職場外の何の活動か分からなければ対策になりません。
たとえば海外旅行から帰国した社員が感染源ならば、問題は明確です。そのような外国に転嫁できる話ならば積極的に公表するでしょう。社員のグループが中野の繁華街でランチを食べたり、業後に飲みに行ったりしたことが原因となると地域的な広がりを意味し、中野区民にとって深刻な事態です。
コールセンターで感染者が判明する前から中野界隈では立正佼成会附属佼成病院やサミットストア東中野店で感染者が出ていました。コールセンターの感染判明後は中野セントラルパークサウス近くのガールズバーに濃厚接触者が来店したとして臨時休業し、消毒したとされます(林田力「小池百合子都知事会見と夜の飲食店のCOVID-19感染リスク」ALIS 2020年3月30日)。また、コールセンターと接点が感じられない中野駅南口にあるマルイファシリティーズでも感染者が出ています。
コールセンターの場所の公表が「職場内が主な感染スポットではない」とセットでなされたことも情報公開姿勢としては感心できません。問題がないから発表するように見えるためです。情報公開姿勢は不都合な事実を迅速に発表することに価値があります。むしろ、「職場内が主な感染スポットではない」と確定する以前こそ注意喚起のために発表する意味がありました。
確定的な事実ではないから発表しないという論理は消費者や住民を馬鹿にしています。確定的な事実でないならば、その旨の前提を付して情報公開し、消費者や住民の判断に委ねることが消費者や住民の自己決定権の尊重になります。
株式会社NTTドコモ「(お知らせ)当社コールセンターにおける新型コロナウィルス感染者の発生について<3月31日追記>」2020年3月12日
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/detail/20200312_00_m.html
株式会社ベルシステム24ホールディングス「<3 月 31 日追記>当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について」2020年3月12日
https://www.bell24hd.co.jp/jp/news/uploads/20200331.pdf