ムーミンバレーパークは2024年で開業5周年を迎えます。ムーミンバレーパークはムーミンのテーマパークです。埼玉県飯能市の宮沢湖畔に2019年に開業しました。北欧の生活をテーマにした複合施設「メッツァビレッジ」が併設されています。
ムーミンバレーパークには西武鉄道池袋線「飯能駅」からバスで行けます。改札を出たら北口に向かい、階段を降りるとバス停があります。バス停にはムーミンとリトルミイの絵が描かれています。駅からバスは立地面でマイナス要因になりますが、このバス停の絵は気分が盛り上がります。
ムーミンバレーパークはムーミンの小説などで描かれた建物などがあります。ムーミン屋敷はムーミン一家が暮らす家です。ムーミン屋敷は青くて細長い住宅です。細長いことから狭さを感じますが、逆にその狭さに生活感や趣きがあります。青い外壁はところどころ白くなっており、5周年を感じます。これもピカピカの新築でないことが逆に味があります。土産物屋さんではムーミン屋敷の形のクッキーなどの缶が販売していました。
水浴び小屋はムーミンの世界では海に突き出ていましたが、ムーミンバレーパークでは宮沢湖に突き出ています。冬の間はトゥーティッキの住処となります(『ムーミン谷の冬』)。ムーミンバレーパークの水浴び小屋にはトゥーティッキの表札が掲げられています。
エンマの劇場は『ムーミン谷の夏まつり』で登場した劇場です。ムーミンバレーパークではムーミントロール達がショーをします。「自由でしあわせな生活」を観ました。ムーミン一家は予言者から自由な生活を勧められ、自由に生きようとしますが、幸せになりません。ムーミンパパは変なジュースを勧められて飲みます。それが自由と言いますが、腹痛になってしまいます。大麻グミなどの違法ドラッグを連想します。
リトルミイは最初から予言者の勧める自由に生きることに批判的でした。普段は悪戯し放題であり、最も自由気ままに振舞っている存在に見えます。シアター型体験施設「リトルミイのプレイスポット」でも悪戯をしていました。しかし、自由であっても他人に求められることは否定します。真の自由人です。
「海のオーケストラ号」は『ムーミンパパの思い出』を下敷きにした体感モーフィングシアターです。ムーミンパパの若い頃の冒険が語られます。ムーミンパパがムーミントロールやスニフ達に冒険を語るという作中作の入れ子構造になっています。
『ムーミンパパの思い出』ではスニフやスナフキンが自分の父親の話を聞きたがり、冒険を語りたいムーミンパパと噛み合わないところがあります。登場人物が好き勝手に振舞い噛み合わないカオスがムーミン小説の魅力です。一方で「海のオーケストラ号」は皆で冒険すると奇麗にまとめました。
ムーミンバレーパークは他のテーマパークと比べるとアトラクション数は相対的に少ないですが、見入ってしまうものもあり、想像したよりも長時間がかかりました。アトラクションはジェットコースターのような物理的なものよりも光と音で感じるものが多いです。一方で機械だけで成り立っているものではなく、スタッフの説明に引き込まれます。サービス業の凄さを感じました。
2024年2月は夜になると、「LOVE ~ライトアップ」と題してムーミンバレーパーク全体がピンクのライトアップに包まれます。2月10日などは「LOVE ~ムーミン谷の小さな花火大会 春」と題して宮沢湖から花火が打ち上げられます。
2024年はムーミン作者のトーベ・マリカ・ヤンソンの生誕110周年にもなっています。ヤンソンは1914年生まれです。ヤンソンは風刺画家でしたが、風刺画への弾圧が強まりました。それがムーミンを書き始めたきっかけでした。
「ヤンソンは既に風刺画家として名をなしていたが、検閲にひっかかっては描きなおしの繰り返しだった。心の底からうんざりし、息の詰まる状況からのがれるために、自分だけの自由でのびやかな世界をつくりあげようと考えた」(冨原眞弓『ムーミンを読む』ちくま文庫、2014年、25頁)。
しかし、ヤンソンはファンタジー小説の世界に逃避した訳ではありません。ムーミンの物語にはどこかしら暗さがあります。『ムーミン谷の夏まつり』ではムーミントロールが冤罪で逮捕される出来事が描かれます。
ムーミントロール達は冤罪で逮捕され、牢屋に勾留されてしまいます。ろうや番は「おまえらは、じぶんのおかした罪を白状するまでは、ここにはいっておらねばならん」と言います(トーベ・ヤンソン著、下村隆一訳『ムーミン谷の夏まつり』講談社文庫、1979年、164頁)。自白するまで自由を奪う人質司法です。ムーミンが多くの人に支持される背景には可愛さに加えて、深さもあるためでしょう。
ひとごとじゃないよ人質司法
積極的な医療検査により冤罪を防ぐ 質量分析・遺伝子解析の結果無罪となった虐待疑い2事例
なぜこんなにも再審は認められないのか?