石角友愛『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はAI (Artificial Intelligence)ビジネスについて解説した書籍です。AIビジネスに求められる人材についても言及します。著者はAIビジネスデザイナーです。
AIビジネスはAI技術を使って課題を解決する方法を提案し、実装することです。AIは課題を解決るための技術です。日本語では人工知能となり、人格を持ったイメージで語られがちです。これを本書は弊害とします。抽象的な概念は抽象的なまま議論しないと、本質を見誤りかねないとします。
この主張は納得できます。日本人の生物研究者が研究対象の動物に固有名詞を付けたように、ロボットをパートナー的に扱うことが日本の美点と主張されることがあります。しかし、技術によって問題を解決する立場には弊害になります。道具は人間の生活を便利にするために生まれました。人間の延長線上に考える必要はありません。早く移動するために二足歩行のロボットを作る必要はありません。車輪を持った自動車になります。
本書はAIビジネスが大企業に限定の話ではなく、むしろ中小企業こそAI導入で大きなビジネスインパクトを出せる可能性があると指摘します。これにも同感です。人手不足の中小企業こそAIで補う必要性は高いでしょう。
本書は失敗事例を紹介します。AIを利用したリコメンデーション機能を実装しようとしました。ところが、顧客データが完備されていないため、顧客への適切なリコメンドができませんでした。不適切なINPUTから不適切なOUTPUTが生じる一例です。AIが回答を出す世界を恐ろしいと感じる人もいるが、AIそのものよりも偏向したデータをINPUTにすることが現実的な問題です。情報公開と透明性が第一です。