新型コロナウイルス感染症(COVID-19; coronavirus disease 2019)対策でテレワークが推進され、ZoomやCisco Webex Meetings, Microsoft Teamsなどを利用したWeb会議が普及しています。日本ではカメラオフのWeb会議が好まれます。これは個人レベルでは化粧しなくても良いというメリットがあります。組織レベルではネットワーク資源の節約というメリットがあります。
日本のエンタメ作品では昔から顔を映さずに音声だけで会議するシーンが描かれています。『新世紀エヴァンゲリオン』のゼーレや『DEATH NOTE』のLなどです。このため、カメラオフのWeb会議を受け入れやすい素地があります。
しかし、これは国際的に通用するとは限りません。何を考えているか分からない不気味な日本人という悪印象を増幅しかねません。カメラオフを正当化する場合はネットワーク資源の節約という大義名分を出すと良いでしょう。
ネットワーク資源の節約を進めるとカメラオフだけでなく、発言者以外のマイクをミュートする運用が推奨されます。意外と雑音が拾われるために発言者以外のマイクミュートは有用です。カメラもマイクもオフにすると会議参加の感覚は著しく低下します。
無駄な会議が働き方改革の障害になっています(林田力「無駄な会議」ALIS 2020年3月5日)。参加する会議が多くて日々の仕事の負担になっている場合、Web会議は同じ会議参加でも会議室で参加するよりも負担ははるかに小さいです。
逆に昭和の体質の企業では悪用も起きています。実会議よりもメンバー招集が容易になったためにWeb会議を頻繁に開催したり、参加者を増やしたりと逆に無駄な会議が増えてしまいがちです。昭和の体質のままITを使うとコミュニケーション地獄に陥ります(林田力「昭和の体質と電子メールの非同期性」ALIS 2020年3月12日)。
Web会議のカメラオンにはメリットがあります。カメラオフでは発言のタイミングが分からず、発言がかぶってしまうことがあります。カメラオンでは、あまり起きません。顔を見ながら話すことは会話にとって意味があることと再確認します。
とはいえ、カメラオフの気楽さは捨て難いものがあります。私はチャットの活用を推奨します。チャットならば他人の発言を邪魔しません。本題から外れますが、指摘したいことを述べることもできます。テキストデータに残るので会議結果の活用も便利です。Web会議システムにはレコーディング機能もありますが、10分の会議を再生するには10分かかります。会議そのものにレコーディングの再生と倍の時間がかかり、生産性は悪化します。
むしろ、会議よりもチャットで意見交換すれば良いと思っています。リアルの会議でも効果的な進め方として資料の黙読や意見を黙々と書くことがあげられます(林田力「会議を突き詰めると会議でなくなる」ALIS 2020年4月1日)。