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近年、セクシャルマイノリティの存在がメディアでも大きく取り上げられるようになってきた。LGBTという言葉も大分世間に浸透してきたのではないだろうか?
LGBTとはセクシャルマイノリティの人々を総括的に扱う概念で、レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体と心の性が一致しない人)の頭文字を取った言葉である。セクシャルマイノリティというと上記で挙げたレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけだと思っている人がいるが実際にはそれ以外にも多様なセクシャリティ(性の在り方)が存在する。本稿で扱うアロマンティックもセクシャリティの区分の1つである。アロマンティックは前述のセクシャリティと比較して認知度が低い。おそらく今初めてこの用語を目にした人も多いのでは無いだろうか?次章ではアロマンティックとはどのようなセクシャリティなのか説明する。
アロマンティックを理解するには、「恋愛」が一般的に「性愛感情」と「恋愛感情」という2種類の感情によって成り立っているということを知る必要がある。性愛とは本能に基づく性的な愛情のことである。恋愛とは特定の人に特別の愛情を感じて恋い慕うことだ。多くの人はこの2種類の感情がセットになっている。しかしながら、中には2種類の感情のうち片方しか持っていない人も存在する。そのような人々をアセクシュアル又はアロマンティックという。アセクシャル及びアロマンティックとは以下のような人々の事を指す。
アセクシュアル=他人に対する性愛感情が存在しない、または薄い。恋愛感情を持つことはある。
アロマンティック=他者に恋愛感情を抱きにくい。性愛感情は持つことがある。
注釈①:日本においてアセクシャルは恋愛感情も性愛感情も無い人のことを指すことが多い。本稿におけるアセクシャル及びアロマンティックの定義はあえて日本国内で浸透している定義ではなく、ジェリー・ソンドラ・デッカー著『見えない性的指向アセクシュアルのすべて 誰にも性的魅力を感じない私たちについて』に記されている定義に準じている。
注釈②:日本では注釈①でも書いた通り、恋愛感情も性愛感情もない人々の事をアセクシュアルと呼ぶことが多いが、世界的には「アロマンティック・アセクシュアル」というのが一般的である。
ノーマル(異性愛者)の人にアロマンティックについて説明すると、「恋愛ができないなんてかわいそう」という反応をすることがある。確かにアロマンティックの人は他人を前にして一目ぼれをする、恋をしている人がよく語る「心臓がどきどきする」「胸が高鳴る」といったようなことはほとんどないと考えられる。しかし、それはかわいそうなことなだろうか?第2章ではそこに焦点を当てていきたい。
結論から言うと、アロマンティックを十把一絡げにして「かわいそう」と断定することはできないと考える。私は「恋愛が出来ないなんてかわいそう」とアロマンティックを十把一絡げにして主張する人に「恋愛感情があったが故にかわいそうな状況に陥ることもあると思うけれど、その点に関してはどう説明するのですか?」と聞いてみたい。結婚を両親に認めてもらえなかった男女が心中をしたり、恋愛感情が歪んで相手をストーカーした挙句殺害してしまったりする事件が発生することがあるがこれらは恋愛感情が存在したが故に発生した「かわいそうな」事態であると考えることが出来る。
「恋愛をすることが当たり前」と考えている人から見れば恋愛感情を感じないアロマンティックの人は哀れな人に見えるのかもしれない。しかしながら、アロマンティックがかわいそうなのか否かは当事者が自身の「恋愛感情を感じない」という性質をどう感じているのかによって変わってくる。
多くの人たちと同じように恋愛感情を感じることができず、非常に悩んでいるアロマンティックの人もいる。
反対に、恋愛感情を感じないという自身の性質を自らのセクシャリティとして受け入れ、あまり悩んでいない当事者もいる。
一概にアロマンティックと言ってもその捉え方は人それぞれだ。前者の場合はアロマンティックであるが故に本人が非常に悩む結果になっているので「かわいそう」とも言えるかもしれない。しかしながら、後者の場合は特に悩んでいるわけでも困っているわけでもないので「かわいそう」と決めつけてしまうのは不適切であると感じる。
したがって、アロマンティックの人を一括りにして「かわいそう」と断定することは誤りであると私は思う。
アロマンティックは恋愛感情を抱きにくい人のことを指す言葉である。第2章で述べたようにアロマンティックの人を一括りにして「恋愛が出来ないなんてかわいそう」というのは不適切である。
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2019年9月30日:記事公開
2019年10月5日:誤字・表記ゆれ修正
2020年4月8日:アンケートに寄せられた意見を反映し、全体的に改稿