パナソニックホールディングス(HD)は21日、パワーアシストスーツを製造する子会社のATOUN(アトウン、奈良市)が7日付で奈良地裁から特別清算開始命令を受けたと明らかにした。負債額は2021年3月期末時点で3億5457万円。新型コロナウイルスの感染拡大で対面営業が難しくなり、事業維持ができなくなった。販売済みの機器の保守はアドバンス(奈良県川西町)が引き継ぐ。
パナソニックHDが1日に特別清算開始を申し立てていた。ATOUNはパナソニックHDの元社員が社内起業制度を使って03年に立ち上げた。ロボットの開発受託や、身につけた人の動作を支援する「パワーアシストスーツ」の開発・製造・販売に取り組んだ。機器は東京パラリンピックの会場でも使われた。
SFでいうとパワードスーツ的な製品でしたね。人の関節の弱い部分を補強してパワーアシストするものです。工場などの重量物を持つ労働者の身体を守るという考え方はとてもよかったと思います。
こういった人間に対するパワーアシスト系の研究や製品は数年前に流行ったという記憶があります。人口減少と高齢化による労働力の減少、高齢化により介護労働者の健康確保などという名目で、研究に対して国や地方自治体からの補助金や助成金が下りやすかったのも事実です。
単体としては良い製品なのですが、なぜ事業を清算しなければならなかったのか。それは単純にこの製品が売れなかったということでしょう。製品で収益が取れていれば買収はあるにしても清算という結果にはならなかったはずです。
実は国内外問わず、数年前から立ち上がった業務支援系のロボティクスの企業が最近になり、清算や買収という形で終了してしまう例が多くでています。単体としては一定の性能や安全性を担保する良い製品でしたが、恐らくなのですが、この製品が使われるであろう環境の想定ができていなかったのではないかと思います。
そういえばペッパー君も販売中止になってしまいましたね...
日本の工場を考えると、ある程度のサイズの工場は自動化が進み、機材はベルトコンベアかロボットか運搬機械で運ばれます。機材の梱包サイズは重量も配慮されており、また人間が持って良いものの重さも労働衛生上決められています。作業工程も設計されていますので、そこにさらにパワーアシスト機材を用いる理由があまりみあたらないのだと思います。
華奢で弱い人間を使うのであれば、工程を綿密に設計して自動化を進めたほうが安心ですし、事故が発生した場合の損害も人間よりも少なくてすみます。
となると利用しそうな場所は中小企業の工場、町工場的な工場となりますが、そこになると作業工程が設計されていなく、人間の複雑な動きに作業が依存してしまっていて、アシストスーツが邪魔になります。また昨今の市況のせいで収益が芳しくない中小製造業には、これを購入する数十万の費用が重く負担となります。
介護業界も同じく、非常に複雑な動きをする介護動作の妨げになるのと、介護保険の費用算出に組み入れられていないこのアシストスーツ分の費用が捻出できないという問題があります。
問題のあるシステムに費用をかけてパッチ当てを繰り返しても根本的な解決になりません。利用する環境の流れを理解せず、局所的な改善のみをおこなおうとしても受け入れられないという良い事例なのではないかと感じました。現実のこの世の中にヒーローロボットは通用しないのです。でも今
ロボティクスは非常にロマンがあって面白いのですが、収益化がなされていない企業ばかりで、先行きがおもいやられます。長続きしそうなのは、ディズニーリサーチくらいかもしれません。