「秋ナス」は血管をしなやかにする
【茄子】 Eggplant
○旬=夏~秋◎効能=動脈硬化・高血圧の予防、虫歯の予防、歯槽膿漏の予防・改善
インド原産のナス科の一年生、または多年生草本。焼く、揚げる、炒める、煮る、漬けるなど、どんな料理にも利用できるナスは、日本では奈良時代から栽培されており、江戸後期には最も需要の多い野菜のひとつだった。「親の意見とナスビの花は、千にひとつのムダもない」といわれるように、「ナス」は「よく成る(為す)」という意味から来ているようだ。
「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがあるが、「秋ナスは大変うまいので、憎い嫁に食べさせるともったいない」という解釈と、「ナスは体を冷やす陰性食品なので、気温が低下してくる秋に食べさせると流産などが心配だ」という解釈が考えられる。
しかし『本草綱目』に「ナスは性が寒冷で多食すれば必ず腹痛、下痢し、婦人は子宮を痛める」とあるので、後者の解釈が正しいようだ。
このようなナスの「冷やす作用」は、打ち身、捻挫、やけどなどに湿布薬として用いると効果を発揮する。
江戸時代の『本朝食鑑』にも、「ナスは血を散じ、痛みを止め、腫れを消し、腸を寛げる」とある。
冷え性や低血圧の人がナスを食べる時は、体を温める作用のある塩や味噌を加えた料理にして食べるとよい。焼きナスをおろしショウガで食べたり、漬物に刻みショウガが添えられるのも、体を温めるための知恵である。
ナスの栄養価は大したことはないが、ビタミンCやPが多く含まれているので、血管をしなやかにし、高血圧や血栓症の予防や改善に役立つ。また、造血に必要なマンガンが含まれることも特徴である。
果皮の色素であるナスニン(ポリフェノール)がコレステロール値を下げ、動脈硬化を防ぐことも明らかになっている。このナスニンは、加水分解してデルフィニジンを生じ、これが鉄やニッケルと安定な塩を作る。ナスの漬物に鉄クギを入れておくと漬物が青紫色になるのは、このためである。
【民間療法】
乳腺炎や乳房の腫れ……ナスをアルミホイルで包んで黒くなるまで焼き、種子を抜いた梅干しと練り合わせたものをガーゼに塗って湿布する。
虫歯・歯槽膿漏……ヘタや茎の黒焼きの粉を歯磨きに使う。
イボ……ヘタの汁液を気長にこすり付ける。
打ち身・捻挫・軽度のやけど……冷蔵庫で冷やしたナスを縦に割り、直接患部に当てて湿布する。
高血圧・のぼせ……ナスを常食する。
むくみ…ナスを天日で干して乾燥させ、粉にしたもの約5gを湯で溶いて飲む。