冬場のビタミン補給に最適の「お鍋の友」
〔恋〕 Welsh Onion
○旬=冬 ◎効能=強壮・強精、利尿、去痰、発汗
アジア原産のユリ科の多年生草本。日本には古くから伝えられ、「日本書紀」や「万葉集』にもその記載がある。
「葱は気の義なり。根を賞するにより根圏という」と古書にあるごとく、気を高める作用が昔から知られていた。
江戸時代に関西人は「関東人は田舎者だから、ネギの白い部分まで食べる」と馬鹿にし、江戸っ子は「関西人はケチだから、ネギの青いところまで食べる」とあざ笑ったという話があるが、本当は関東と関西とではネギの品種、栽培法(関東では土寄せして軟白させる)が違うため
だ。
ネギを含め、タマネギ、ニラ、ニンニクなどのアリウム属の野菜にはアリイン(アリル硫化物)が含まれ、強壮、興奮、去痰、発汗、利尿、駆虫などの作用を示し、熱の出る病気に対して用いると、体内の老廃物を排除し、解毒、消炎作用を発揮する。
アリインを含む植物を調理して細胞を砕くと、アリインは一緒に含まれているアリナーゼ(酵素)により分解されてアリシンに変化し、強烈な刺激臭を放つ。
ビタミンB1はアノイリナーゼという体内の酵素により破壊されるが、アリシンと結合してアリチアミンに変化すると破壊されないので、アリウム属の野菜はビタミンB1の働きを高め、滋養強壮、鎮静効果を促進してくれる。
漢方では、ネギの白根の部分を葱白と呼び、風邪やいたみの薬として用いて来たが、最近、この葱白に含まれるファイトケミカルに制菌作用(ブドウ球菌、赤痢菌、結核菌など)がある他、血栓を防ぐ働きがあることが明らかにされている。
ネギの青い部分には、βカロチン、ビタミンB2・C・ニコチン酸などのビタミン
やカルシウム、リン、マンガン (造血作用)などのミネラルが存分に含まれるので、冬場のビタミン補給にはなくてはならない野菜だ。
ニンニク、ニラと共にネギは「葷」と呼ばれ、「ニラ」の項で書いたように、酒と共に禅寺の山門內に入れることを禁じられていたが、実は、修行僧の邪魔になる強壮・強精作用があるためと思われる。
【民間療法】
風邪……ネギを細かく刻んだものと味噌を半々に混ぜ、ドンブリに入れて熱湯を注いだものを、飲んですぐに寝る
不眠症……シソの葉とネギを入れて作った温かいスープを寝る前に飲む。手足が温まり、気持ちが和らいで、よく眠れる。
食欲不振……細かく刻んだネギに味噌とすりおろしたショウガを適量加えて、熱い湯を注いで飲む
腹痛・下痢……ネギの白い部分1~2本とショウガ1かけを刻み、熱々のおかゆに入れたものを食べる。