祖父の一回忌で、田舎に帰ってきた。
久しぶりに会う友人宅に東京土産を持っていくと、畑で作ったというぶどうとさつまいもをもらった。
「これじゃ物々交換だね」
そう言って笑い合うと、もう日が暮れそうな時間になっていた。
時間が止まっているように、ゆったりと流れる時間。
東京もここも、時間のスピードは同じはずなのに、まるっきり違うように感じるのはなぜだろうか。
ただ、久しぶりに会う人たちの顔に刻まれたしわの数から、時間は間違いなく流れているのだという現実を突きつけら、少し寂しい気持ちになった。
外に出ると、ひんやりとした空気が全身を刺激し、それが妙に心地良い。
お腹の奥底まで届くように、思いっきり息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
もどかしい気持ちも、頭のモヤモヤも、吐き出した息と一緒に、全部出ていって欲しかった。
そうすればまた、この土地と溶け合って、一つになれるはずだから。
東京への帰路に就く今、私はこの土地で産まれたことを誇りに思っている。
全身をふわっと包み込んでくれる柔らかさは、「いつでも帰っておいで」と語りかけてくれているようだった。