本当は一足飛びにこの話題を書ければ良かったのだが・・・
この“揉め”にたどり着くためには、まず我々には前提として整理しなければならない過去のたくさんの“揉め”があり、いざこざがありクリプト界の人間同士の確執がある。
タイトルにもある通り、今はEOS創設者として知られるDan Larimer氏が、実はALISがモデルにしたSteemitの元創設者でもある事を皆さんはご存じだろうか。
SteemitはDan Larimer氏とNed Scott氏により2016年から本格的にスタートしたプロジェクトであるが、その元のコードはSteemit立ち上げ以前に分散型金融プラットフォームを目指したDan Larimer氏の別プロジェクトBitSharesがベースとなっている。(BitSharesの立ち上げにはチャールズ・ホスキンソン氏も関わっていたが、やがて両者は喧嘩別れ。Dan Larimer氏はホスキンソン氏を「このシャーク(搾取する人)に気をつけろ。やつは人を自分の目的のために物のように扱って操作する。一緒に働いてみて、今ならわかる。なんで周りの連中がやつを嫌うのかを。」と掲示板でボロクソに非難している。この辺の“揉め”に触れてると話が一向に先に進まない。話を戻す。)
つまりSteemitを動かしているSteemブロックチェーンのコードはほぼDan Larimer氏によって設計され書かれたといって良い。
Bitcoinに夢中になっていたNed Scott氏はDanに出会った時「彼のBitsharesプロジェクトをNYの違った企業に持ってこれないだろうか。」と考えたという。当初は2人で小規模保険や相互援助のようなサービスを考えていたようだが、やがてそのアイデアは世界で初めての分散型ソーシャルネットワークサービスとして花開く。
「初めて会った時、性格的にもDanとはぴったりだったんだ。」2年前のインタビューでこう語っていたNed氏だったが、悲しいかな、徐々に2人も揉め始める。
2017年3月14日、Dan Larimer氏はSteemit上で自身の辞任を発表。
※リンク先に飛ぶと、彼の辞任を発表する記事が非表示なのが分かる。これは他のユーザーが“Downvote👎”しまくった結果である。“SHOW”ボタンを押せば表示されるのでまだ良いのだが、元CTOの辞任表明を表示させたくないコミュニティの大多数の意図とは何なのだろうか。当たり前の話だが、SteemitではSteemitコミュニティに迎合しないものは全て“Downvote👎”の対象なのだ。反抗者の所には即、自警団がやってきて評価スコア上、抹殺される。嗚呼素晴らしきSteemitコミュニティ。
公にはEOSプロジェクト立ち上げのための円満退社とされているが、その後二人は誰の目にも明らかに揉め始める。
「もうこれ以上Steemitには投稿しない。」と宣言して去ったDan氏がEOSプロジェクトのアップデートをSteemit上でしれーっと開始し、速攻Ned氏が“Downvote👎”つけたり
Dan氏はDan氏で、「Nedは本来皆に還元されるはずの利益を自分のものにしている。Steemitでは当初の自身の理想が失われた」として
とまで宣言。
もはや二人の関係は、Steemitのインセンティブ設計並みに修復不可能なものに思えてくる。あれ?でもこのコード書いたの誰だっけ。
そうそれはDan Larimer。
ここで我々はSteemとEOSの共通点に気が付く。Witnessと呼ばれる21人のブロック承認者が、高速にコンセンサスを処理し、利益を独占する非中央集権とは程遠い世界。このスーパーノード、選ばれし21人はコミュニティの投票により決定されるが、その事自体を知らないで利用しているSteemitユーザーは多い。
こうした批判を行っているのが、冒頭のコインテレグラフの記事にあるように、かつてDan氏に“嘘つきで強欲なシャーク”呼ばわりされたチャールズ・ホスキンソン氏なのを考えると、いったい誰の言葉が正しくて、誰かがどこかでダークサイドに落ちたのか、それとも全員元からワルなのか、現実はもっとまだらでグラデーションなのか、僕にはもう真実っていったい何なのか全然わからない。
真実がどこにあろうがなかろうが、Steemitは今日も動き続け、日々巨額のマネーを生み出し続けている。
ここで僕は思い出す事がある。
Ned氏が大規模な障害を引き起こしながらもなぜ大幅なコード改修を急いだのか、なぜSteemitとは全く別ブランドの会社を立ち上げるのか、何だかそこにはもっと人間臭い何かが働いている気がするのだ。
Dan Larimer氏が書いたコードは“持続不可能なもので失敗”だった事はSteemit開発者たちが公式に認めている。
実際、前のバンドウィズ・システムの欠陥は、広く理解され、システムを持続不可能なものとし、このハードフォークを余儀なくするいくつかの結果をもたらしました。
ハードフォーク後、いくらかましになったとは言え、Steemitは今もコミュニティへの貢献など知ったこっちゃない“無からマネー”を得ようとする不埒なユーザーであふれ、綿密な報酬設計の裏をかこうとするBot&有償サービスと開発者たちとの戦いの場である。
100万人のユーザー相手に“持続不可能で失敗”していたコードをブン回し続け、日々250億もの金を動かし、コミュニティにうむを言わせずコードを改良し続ける開発者たちを相手に、日本の真面目で責任感があり、そしておそらくはコミュニティ思いの心優しい開発者たちが、果たして太刀打ちすることはできるのだろうか。
ALIS頑張れ。