(台北の路地。看板が台湾っぽい感じしませんか?)
ブロックチェーンの活用範囲は仮想通貨に代表されるような金融に関するサービスに限らず、さまざまなサービスへの応用が試みられていますね。
たとえば、食品トレーサビリティや病歴の情報共有など、「台帳技術」としてのブロックチェーンは多様な活用方法が模索されています。
台湾でもこうした分野へのブロックチェーン活用がいろいろと考えられています。
今回は、こうした非金融部門へのブロックチェーン活用の事例として、「地図情報×ブロックチェーン」の実現を目指しているスタートアップが、台湾で資金調達を始めたということで、少し書き留めておきたいと思います。
・GoWithMiが台湾のF.plusで資金調達を開始
・GoWithMiのプロジェクトって?
・「地図情報×ブロックチェーン」への注目度
台湾の大手紙「中國時報」の公式ニュースサイトに2018年12月25日に掲載された記事によると、ブロックチェーンを活用した地図情報サービスを開発している「GoWithMi」が、台湾の「F.plus」を通じて資金調達を始めたということです。
記事によれば、2018年12月24日から2019年1月10日まで先行トークンセール期間ということで、F.plusのプラットフォーム上で独自トークンの「GMAT」とETHとの交換が可能だということです。
F.plusにはGoWithMiの専用ページが公開されていて、プロジェクトの概要が以下のようにまとめられています。
GoWithMiは世界で初めての完全な非中央集権的位置サービスインフラを構築しており、あらゆるブロックチェーンプラットフォームや分散型ビジネス・地図アプリをサポートし、これからの位置サービスをさらに安全に、さらに便利に、さらにスマートにしていく。
(GoWithMi(高維地球)正在構建全球首個完整的去中心化位置服務基礎設施,支援所有區塊鏈平台、分散式商業和地圖應用,讓未來位置服務更安全、更便宜和更智慧。)
「非中央集権的位置サービスインフラ」とまとめられているGoWithMiのプロジェクトが注目されますが、このプロジェクトに触れる前に、今回、資金調達がおこなわれているF.plusに触れておきます。
上に挙げた「中國時報」の記事は、F.plusについて「ブロックチェーンプロジェクト公開プラットフォーム(區塊鏈項目展示平臺)」と紹介しています。
F.plusの公式ウェブサイトを見ると、2018年12月26日現在、GoWithMi以外にも3つのプロジェクト(Voyage、CompassX、General Payment)の専用ページが開設されていて、各プロジェクトの紹介や資金調達の状況などが掲載されています。
F.plusのホワイトペーパーによれば、ブロックチェーン関連の「プロジェクトインキュベーター(項目孵化)」サービスを提供するとあります。
そのほかにも、台湾の仮想通貨取引所である「CoinBay(幣灣)」と提携した取引サービスやウォレットの提供を目指しているということです。
(CoinBayについてはまだ記事に書き留めていません…また調べて書きたいと思います^^; 取引所の公式ウェブサイトはこちら)
投資家とプロジェクトを結びつけるプラットフォームを提供することで、ブロックチェーンに関連するプロジェクトへの多様なサポートを実現しようとしていることがわかりますね。
上に挙げた「中國時報」の記事では、ネット上にあるデータの62%が地理データに紐づいていると書かれているように、地図情報・位置情報はインターネット上に構築されたあらゆるサービスを支える重要な「インフラ」となっています。
MALISさんも以下の記事で詳しくまとめていますように、こうした地図情報の抱える中央集権的な問題を解決するための手段として、ブロックチェーンの活用が模索されています。
GoWithMiもブロックチェーンを活用した形で地図情報をめぐる課題解決と、ビジネスユースケースの拡大を目指しているようです。
GoWithMiの公式ウェブサイトにはアプリダウンロードへのリンクが貼られていて、実際にAppStoreやGooglePlayからダウンロードすることができます。
ただ、実際にダウンロードしてみましたが、2018年12月26日現在、まだ日本の地図情報は公開されていませんでした。
サイトに公開されている公式ムービーでも紹介されているように、今はインドネシアの都市情報に限定されているようです。
ウェブサイトには技術的な説明が詳しく掲載されていますが、概略的には「コンセンサスマップ(共識地圖)」というコンセプトとともに、以下のように説明されています。
私たちはProof of MappingやSpacial Bancorなどのコンセンサスゲーミングメカニズムの精巧な設計を通じて、地図サービスの大規模データの共同制作、自動監視、価値評価などの核心問題を根本的に解決し、人力による組織の境界を超え、人々にリスクなく「世界地図」を共創し、保護し、共有することを可能にし、貢献者が公平なキックバックを得ることができ、全世界の人々が高品質なデジタルツーリングサービスを平等に楽しむことができる。
(我們通過Proof of Mapping、Spacial Bancor等共識博弈機制的精妙設計,顛覆性解決了地圖行業中大規模數據的協同生產、自動監督、價值評估等核心問題,打破人力組織邊界,讓人們能無門檻的共建、維護、共用一個“世界地圖”,讓貢獻者獲得公平的回報,讓全世界人民都能平等享受高質量的數字出行服務。)
技術的な部分は僕の勉強不足でまだまだ分からないことばかりなのですが、少なくともProof of Mapping(PoM)やSpacial Bancorといったところから、トークンを介した地図情報サービスの実現を考えていることがうかがえますね。
「中國時報」の記事によれば、GoWithMiはブロックチェーンを活用した地図情報サービスの構築によって、以下のような事業展開を考えているようです。
GoWithMiの目標は地図データの範囲にとどまらず、地理情報サービスとシェアエコノミーが融合したソリューションを模索している。まず、GoWithMiが地理情報サービスと関連する産業とを深く結合させ、デジタル地図エコノミーがブロックチェーンの根本的なアップグレードをサポートします。また、中心的なニーズと問題点を解決し、認証システムを通じてエコシステムを加速させ、コールドブートを速やかに完成させる。
GoWithMi的目標,不止於地圖數據方面,項目旨在探索一條地理位置服務與共用經濟融合的解決方案,一方面,GoWithMi可以與地理位置服務相關產業深度結合,並幫助數位地圖生態做區塊鏈底層升級;另一方面,聚焦解決核心剛需與痛點,通過通證體系激勵加速生態,快速完成冷啟動。
とりわけ、地図情報とシェアエコノミーとの結合に言及しているように、地図上に多様な情報を盛り込むことが収益に直結するようなビジネスモデルの構築がイメージされているようです。
GoWithMiの公式サイトに掲載されているイメージマップには、広告も含めた多様な情報との結合が示されています。
旧来のビジネスモデルも盛り込んでいるように見えますが、これがどのように展開していくか…これからの動きに注目したいと思います。
「中國時報」の記事には、GoWithMiの創業者である李東さんや任軼さんといった運営メンバーが、デジタルマップやナビゲーションシステムなどの開発に15年以上関わってきた人々によって構成されていることが注目されています。
また、GoWithMiの公式サイトに掲載されたビジネスパートナーに挙げられている企業のなかには、マイクロソフト傘下の「BingMap」や、あるいは「MapBox」といった地図情報サービスの開発企業が挙げられてると同時に、「トヨタ」、「ホンダ」、「マツダ」といった日本の自動車企業が名を連ねています。
運営メンバーとプロジェクトの内容が大きな注目を集めていることがうかがえると同時に、ブロックチェーン活用の方向性としても重要なプロジェクトとして位置づけられていることがわかりますね。
上に挙げたMALISさんの記事にもFOAMというプロジェクトが紹介されているように、「地図情報×ブロックチェーン」はいろいろな形で開発が進んでいるようです。
この分野でどこが主導権を握るのかという世界的な動きにも注目しながら、これからの展開をコツコツと追いかけていきたいと思います!