ブロックチェーンが社会実装されて、生活のなかで当たり前のように使われていくためにはどうすればいいでしょうか?
たとえば、すでに社会のなかで使用されているシステムのなかにブロックチェーンを組み込んでいくという方法が考えられるかもしれません。
こうした方法の具体的な形として、「ブロックチェーンスマホ」というアイデアを挙げることができます。
現代の生活において欠かすことのできないスマートフォンのなかにブロックチェーンを組み込んでいくことで、ブロックチェーンの社会実装をスピーディに実現していくというアイデアですね。
このブロックチェーンスマホはすでに実現されていて、僕もこれまでに台湾のHTCが開発した「EXODUS1」に関する記事をいくつか書いてきました。
今回は、HTCがEXODUS1に続くブロックチェーンスマホ開発を進めるというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・HTCの陳信生さんが新たな製品に言及?
・ブロックチェーンスマホに何を望む?
・HTCはもはや単なるスマホメーカーではない?
台湾の経済紙「經濟日報」が2019年4月26日に報じた記事によると、HTCのブロックチェーンリーダー(區塊鏈長)である陳信生(Phil Chen)さんが、「EXODUS1」に続く新たなブロックチェーンスマホについて、今年度下半期には公表すると言及したそうです。
同じニュースを報じた「中央通訊社」の記事によれば、今回の発表は台北で開催されている「DLT 101 Taipei 国際分散型技術応用・投資趨勢フォーラム(國際分散技術應用既投資趨勢論壇)」の場で言及されたと報じられています。
このフォーラムの場で、陳信生さんは「Amazing Real World Examples of How DLT is Changing Our World」というタイトルで講演をおこなったようです。
經濟日報の記事によれば、陳信生さんは講演中、EXODUS1の販売状況と合わせて以下のように述べたそうです。
EXODUS1の売り上げは予想したとおりであり、ビットコインやイーサリアムの技術コミュニティにも認知され、関連アプリの開発も進んできた。下半期には新たなブロックチェーンスマホを公表する予定だが、いつ販売されるかはまだ決まっていない。
(EXODUS 1銷售符合預期,也受到比特幣和乙太坊技術族群認可,並投入相關應用程式的開發;預計下半年公布新一代的區塊鏈手機,至於何時開賣還不確定。)
このコメントからは、EXODUS1の販売が順調、それを背景に次のブロックチェーンスマホの開発も進んでいる、という2つのポイントがうかがい知れますね。
特に前者については、イスラエルのスタートアップであるSirin Labsが開発したブロックチェーンスマホ「FINNEY」が販売不振ということで、スタッフの25%がレイオフになったと報じられていることを思えば、素直に驚きです。
ブロックチェーンスマホという新たなフィールドで、HTCは一歩先へと進みつつあるようですね。
中央通訊社の記事によれば、新たなブロックチェーンスマホの開発は、「仮想通貨以外にも、デジタルアセットの管理の範囲は、ブラウジングやメッセージングなどの分野へも広がっていくと思われる(預期除虛擬貨幣,也會將數位資產管理範圍擴及瀏覽、訊息等領域)」という想定のもとで進められているということです。
この点、經濟日報の記事には陳信生さんのビジョンとして、以下のようにもう少し具体的な内容が言及されています。
ユーザーがスマホで頻繁に使うインスタントメッセージ、ブラウザ、検索エンジンなどを含めて、より多くの分散型アプリを実現したい。
(包括消費者在手機常使用的即時通訊、瀏覽器、搜尋引擎等,希望有更多去中心化的應用程式。)
EXODUS1にはブロックチェーンブラウザとしてよく知られている「Opera」や「Brave」がインストールされていますが、こうしたアプリの開発を、より広範な分野に広げて搭載していきたいという考え方が示されていますね。
合わせて、經濟日報の記事中には「より多くのサードパーティとの提携を求めたい(需要與更多第三方開發者合作)」というコメントが掲載されています。
この点にかかわって気になるのは、陳信生さんは先日、スタートアップへの投資を進めてきた投資家たちと共同で、ブロックチェーン専門のベンチャーキャピタルである「Proof of Capital」を創設しました。
中央通訊社の記事にもこのVCのことが触れられていますが、新たなブロックチェーンスマホに期待されているビジョンと、ブロックチェーン専門のVCの方向性は連動しているように感じます。
そう思うと、HTCはブロックチェーンスマホという「プラットフォーム」を介して、ブロックチェーン開発におけるサードパーティとの提携を積極的に進めていくという戦略がうかがえます。
HTCが自らの強みを活かしながら、ブロックチェーンの社会実装を速やかに実現していく可能性が感じられて、ワクワクしますね!
日本のASCII.jpが以下の記事にまとめていますが、HTCは今、VRハードウェアの「VIVE」を中心したVR構想「VIVE Reality」というビジョンを打ち出しています。
これは、VR・ARに5G、AI、ブロックチェーンを掛け合わせていく、次世代技術を広く組み込んだ壮大なビジョンですが、ブロックチェーンスマホの開発などに代表されるように、ビジョン実現に向けた開発を着々と進めているように感じます。
しかも、陳信生さんが言及していたように、ブロックチェーンスマホの売れ行きも予想通りということで、HTCのこうしたビジョンは確実に受け入れられつつあるようにも感じられます。
Sirin Labsのような競合他社の状況が芳しくないことも含めて、HTCはこの分野に挑戦し、そこから一歩抜け出そうとしているのかもしれません。
ブロックチェーンスマホだけではなく、全体的なビジョンの展開も注目されますので、これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!