年末年始という時節柄、2018年の振り返りとともに、2019年の予測がいろんなところから出ているようですね。
たとえば、「コインテレグラフ日本語版」にはアメリカの「MIT Technology Review」の予測についての記事が掲載されています。
今回は、中国のアリババグループが開設した研究所が、ブロックチェーンを含めた先端技術の2019年の動向に関する予測を公表したということで、少し書き留めておきたいと思います。
・逹摩院が「2019十大科技趨勢」を公表
・将来予測の内容は?
・2019年のブロックチェーンを担うのは?
台湾のビジネス系ニュースサイト「數位時代」が2019年1月3日に掲載した記事によると、中国のアリババグループの技術研究機関である「逹摩院(Alibaba Damo Academy)」が1月2日付で「2019十大科技趨勢」という将来予測を公表したそうです。
このニュースについては、総合的なニュースサイトとして著名な「ETtoday新聞雲」や、台湾の大手紙「中國時報」や「聯合報」のニュースサイトでも報じられていて、台湾でも一定の関心を集めているようです。
「逹摩院」については以下の記事に書き留めましたが、アリババが巨額を投じて2017年10月に設置を公表した技術開発に関する研究所で、ブロックチェーンに関する研究室も開設されています。
今回公表された「2019十大科技趨勢」の内容について、「數位時代」の記事は「スマートシティ、データID、自動運転、グラフニューラルネットワークシステム、AIチップ、ブロックチェーン、5Gなどの7領域におよぶ(涵蓋智慧城市、數據身份、自動駕駛、圖神經網絡系統、AI晶片、區塊鏈、5G等七大領域)」と言及しています。
この予測から、アリババグループが技術的にどのような分野に注目しているかということがうかがえそうです。
逹摩院の公式ウェブサイトに掲載された将来予測によると、10の予測は以下のとおりとなっています。
1:より多くのスマートシティが生まれ、全域のスマート化が進む(城市实时仿真成为可能,智能城市诞生)
2:音声認識AIが特定の領域でチューリングテストを通過(语音AI在特定领域通过图灵测试)
3:AI専用チップがGPUの絶対的地位に挑戦する(AI专用芯片将挑战GPU的绝对统治地位)
4:超大規模グラフニューラルネットワークシステムがロボットに知識を与える(超大规模图神经网络系统将赋予机器常识)
5:コンピューティングアーキテクチャが再構築される(计算体系结构将被重构)
6:5Gネットワークがまったく新しいアプリケーションシーンを生み出す(5G网络催生全新应用场景)
7:デジタルIDが第二のIDカードとなる(数字身份将成为第二张身份证)
8:自動運転が冷静な発展期に入ります(自动驾驶进入冷静发展期)
9:ブロックチェーンは理性的なところへ回帰し、商用アプリケーションが加速する(区块链回归理性,商业化应用加速)
10:データセキュリティの技術が加速する(数据安全保护技术加速涌现)
ひとつひとつの項目が興味深いですけれど、全部紹介していると論点がブレてしまうので、9番目に挙がっているブロックチェーンの部分だけ書き留めてみます。
逹摩院のサイトに掲げられた説明によれば、まずブロックチェーンとIoTとの融合が進んでいくことに触れたうえで、以下のような見通しが示されています。
国際送金、サプライチェーン金融、電子伝票、データプロテクションなど多くのシーンにおいて、ブロックチェーンはわたしたちの日常生活に浸透していくでしょう。
(在跨境汇款,供应链金融,电子票据和司法存证等众多场景中,区块链将开始融入我们的日常生活。)
そのうえで、ブロックチェーンを取り巻く状況について、以下のようにまとめられています。
ブロックチェーンの分野は過度の熱狂と過度の悲観から理性に回帰し、商用アプリケーションは加速すると予想される。
(区块链领域将从过度狂热和过度悲观回归理性,商业化应用有望加速落地。)
この2点を見る限り、ブロックチェーンをめぐる世界的な動きを押さえつつ、客観的な動向分析であるとともに、アリババグループが技術的にどのようにアプローチしていくかという姿勢が垣間見えるように感じます。
特に、以下の記事に書き留めましたように、アリババはすでにグループ傘下の「蚂蚁金服(Ant Financial)」がブロックチェーンを活用した国際送金システムを開発しています。
また、阿悉さんが詳細にまとめていらっしゃるように、アリババグループの創業者であるジャック・マー(马云、馬雲)さんが、「ブロックチェーン技術はバブルではありません。しかし、現在のビットコインはバブルかもしれません」と語っていることが、今回公表された予測にも反映されていると捉えることもできます。
もしかしたら、ここで示された予測は単なる「予測」ではなく、アリババグループが実現していくかもしれない「事実」になっていくのかもしれませんね。
逹摩院について書き留めた記事にも書きましたが、中国ではスタートアップの動きとともに、アリババや「腾讯(テンセント)」、「京東(JD)」といった大手企業も積極的にブロックチェーンの活用を模索しています。
こうした企業が動き出すと、ブロックチェーンの社会実装が大きく進んでいくことが期待されますが、そうした具体的な方向性が今回の将来予測には示されているように感じます。
もちろん、こうした広々としたビジョンがどう実現されていくかという楽しみがありますが、それを実際に実現していくのは多くの企業やスタートアップの多様な動きだろうと思います。
世界的な動きのなかで、今回の予測に示されたようなポイントがどのように展開していくかという点に注目しながら、これからも多様な動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!