(台北駅でも記事に出てくる駅弁が買えます。駅弁の写真、撮っておかないと(^^;)
ブロックチェーンの強みを活かせる分野のひとつとして、「食品トレーサビリティ」を挙げることができますね。
とりわけ、産地偽装や食品偽装などの事件が社会的問題として注目されると、その解決方法のひとつとして、ブロックチェーンを活用したプラットフォームの構築が模索されるようになっていきました。
ALISでも、NAOTTAさんがマグロの追跡サービスについての記事を書かれています。
(食品トレーサビリティって何?という方には、NAOTTAさんの記事に分かりやすい説明が書かれていますよ)
台湾でも残念ながら食品偽装の問題が頻発したのですが、その結果として食品トレーサビリティへの関心が高まっています。
今回は、そのひとつの取り組みとして台湾のブランド米である「池上米」を、ブロックチェーンを活用したプラットフォームに載せる取り組みが目に留まりましたので、書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにご覧ください(^^;)
・田んぼから食卓までをブロックチェーンで記録!
・「池上米」って?
・OwlTingのプラットフォームって?
・小さな農家を世界へ…
台湾の報道機関「中央通訊社」の2018年7月19日の記事によると、台東県池上郷で米作りをしている魏瑞廷さんは、自らのブランドである「池上禾穀坊」の流通に、台湾のブロックチェーンスタートアップの「OwlTing(奥丁丁)」が提供している食品トレーサビリティプラットフォームを活用することにしたと報じられています。
記事によれば、魏瑞廷さんは今から8年前に池上郷に帰って両親の米作りを手伝っていたそうですが、そのころから社会的な問題になっていた「食の安全」の問題に直面し、「創新農業的契機(イノベーティブな農業のきっかけ)」になると感じたそうです。
そこで、さまざまな方法で自らが作る「池上米」の安全性について消費者にアピールするなかで出会ったのが、OwlTingが提供する食品トレーサビリティプラットフォームだったということのようです。
魏瑞廷さんのFacebookページにも今回の取り組みについての記事が公開されています。
自ら作り出す食品の安全性を、なんとかして消費者に届けたいという想いの強さと、その想いがブロックチェーンを活用することで実現されたことへの喜びが感じられます。
魏瑞廷さんが米作りをしている台東県池上郷は、台湾でも有名な一大稲作地域です。
ここで生産される「池上米」は、日本のお米に近い、水気の多いもっちりとしたお米です。
この「池上米」を使った「池上飯包(池上弁当)」という駅弁は有名で、台湾鉄道の各駅で売られていることはもちろん、今では各地のコンビニでも買うことができます。
お弁当のビジュアルは、池上飯包の販売をチェーン展開している企業のウェブサイトや、台湾観光サイト「台北ナビ」の記事などをご覧ください。
僕はこの写真を見ただけで食欲はそそられます…お弁当箱に木材を使用しているというこころにもちゃんと意味とこだわりがあって、なかなか趣がありますよ。
上に挙げた中央通訊社の記事で、魏瑞延さんは台湾で食の安全に対する意識が高まってきたなかで、以下のように考えたそうです。
雖然池上米已有一定的知名度,但台灣歷經食安風暴,許多民眾很關心食安問題
(池上米はすでにある程度の知名度があるけれど、台湾では食の安全をめぐる問題がいろいろとあって、多くの人々が食の安全に対して関心を持つようになった)
ブランド力があるから大丈夫、ではなく、ブランド力があるからこそ、より一層、食の安全に向き合おうとする意識が強まったのかな…その先にブロックチェーンとの出会いがあったのかなと感じます。
今回の取り組みで魏瑞延さんと提携してブロックチェーンを活用した食品トレーサビリティプラットフォームを提供したのが、「OwlTing(奥丁丁)」です。
OwlTingについては、以下の記事に少し書きましたが、ブロックチェーンを利用したeコマースプラットフォーム(電商平台)を展開している企業です。
日本支社も開設されているということで、OwlTingが提供している各種サービスについては、公式ウェブサイトに日本語ページが用意されています。
たとえば、今回の取り組みに関係している「OwlChain」というサービスについて、「OwlChainはブロックチェーン追跡システムプラットフォームです。透明かつ改ざんのできない生産過程は信頼の根本だと思います」と説明されています。
ページには台湾の「食の安全」をめぐる問題がまとめられたページへのリンクも貼られていて参考になりますが、そうした問題に対する具体的な対応策として、OwiTingは、ブロックチェーン技術開発企業の「AMIS」が提供するイーサリアムベースの技術を使用しています。
AMISについては以下の記事にまとめましたが、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズム「IBFT(Istanbul Byzantine Fault Tolerance)」を開発し、JPモルガンの「Quorum」に採用されたということで知られています。
台湾で開発された最先端の技術が台湾の農家をサポートしているという様子がうかがえますね。
今回の「池上米×ブロックチェーン」の取り組みには、台湾の農家をめぐるいろいろな想いが交錯しているようです。
台湾のオピニオン雑誌「遠見雑誌」のウェブサイトに掲載されたインタビュー記事で、OwiTingの創業者でCEOの王俊凱さんが以下のように語っています。
(ちなみに、この記事にはOwlTingがここ20年で初めてナスダックの電光掲示板に広告が載った台湾企業だということから始まって、いろいろ興味深いことが書いてありますが、それはまた別の機会に…)
電商雖然賺得少,但我們不幫小農,誰幫?我們用區塊鏈技術賺錢,再支撐電商事業,小農也能拿賺到的錢,添購設備,讓產品更好。
(e-コマースは稼ぎが少ないけれども、私たちが小農家を助けなければ、誰が助けるのか?私たちはブロックチェーン技術を使って稼ぎ、e-コマース事業を支えていき、小農家もまたお金を稼ぐことができ、設備購入に充て、農産物をより良くしていく)
上に述べたように、OwiTingは日本に事務所を開設していますが、日本では今のところ、OwiTingの事業のもうひとつの軸である宿泊予約プラットフォームのサービス展開に注力しているようです。
ただ、インタビュー記事には日本での事業展開について、以下のようにも語られています。
他也沒忘記繼續幫助小農。奧丁丁剛談下和日本1000家超市的合作,要大量出口小農的產品。王俊凱知道,透過每年固定契作,有好價格與穩定出貨量,才能真正幫到小農。
(彼は小農家をサポートし続けることも忘れてはいない。OwlTingは日本の1000のスーパーと相談し、大量の小農家の商品を輸出しようとしている。王俊凱は、毎年固定した契約生産を通じて、良い価格と安定した出荷量を実現することで、本当に小農家を助けることができると知っている)
「食の安全性」に対する意識が高まるなかで、農家に食品トレーサビリティのプラットフォームを提供することで課題の解決を図ると同時に、より良い農業のありかたを目指している様子がうかがえます。
また、王俊凱さんのインタビュー記事には、2018年7月はじめの時点で、台湾や日本のほかにマレーシアやアメリカに事務所が開設されているとともに、これからタイ、インドネシア、ベトナムをはじめ、ヨーロッパへの進出も考えていると書かれています。
こうした地域と台湾の農家がブロックチェーンを通じてつながる…かどうかは、これからの事業展開にかかっていると思いますが、そうした動きのなかに「池上米×ブロックチェーン」の取り組みも位置づけられるのかなと感じます。
日本でも、池上米を食品トレーサビリティのシステムとともに目にすることができるのかな…などと妄想しながら、こうした動きも追いかけていきたいと思います!
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