(香港の写真の手持ちが足りなくなってきました…(^^;)
ブロックチェーンに関する技術やサービスの開発がより広く、よりスピーディに展開していくためには、「ファーストペンギン」となるスタートアップの存在が重要ですね。
さまざまな技術やアイデアを持っているスタートアップをサポートして、育てていくような仕組みを整備することもまた、ブロックチェーンの発展に欠かすことはできません。
それはたとえば、スタートアップが起業しやすい法制度、補助金、基金などを整備することや、企業や人材を育てていくような環境が用意されていることなどを挙げることができます。
そうした取り組みのひとつとして、アクセラレーター(加速器)と呼ばれるスタートアップ育成プログラムが世界各地で展開されています。
たとえば、台湾でもAppWorksによるプログラムが展開されていて、さまざまなスタートアップが育っています。(以下の記事にまとめました)
今回は香港で、ブロックチェーンスタートアップアクセラレーターのプログラムがスタートしたというニュースを目にしたので、少し書き留めておきたいと思います。
(「ブロックチェーンスタートアップアクセラレーター」って、カタカナで書くと長いですね…Blockchain startup acceleratorとしたほうがいいのか、中国語で「區塊鏈創企加速器」としたほうがいいのか悩みますが…以下では、適宜工夫して書いていきます(^^;)
・香港でアクセラレータープログラムが開始!?
・インキュベーターとしての「香港科技園」
・「香港應用科技研究院」と「分子區塊鏈中心」って?
・「一帯一路」との関係も!?
香港のテック系ニュースサイト「ITPro」が報じた記事によると、2018年7月6日に「香港科技園」が、「香港應用科技研究院」と「分子區塊鏈中心(Mhub Blockchain)」と提携し、香港科技園内の「環球創業飛躍學院(Global Acceleration Academy、GAA)」で、香港初の「ブロックチェーンスタートアップアクセラレータープログラム(區塊鏈創企加速器計劃)」を実施すると公表したそうです。
記事によると、具体的な技術やアプリ開発の事例として「智慧城市(スマートシティ)」が挙げられています。
スマートシティの実現については、台湾の台北市や高雄市などでもその方向性が打ち出されていますが、香港でも政府の方針として「香港智慧城市藍圖(HongKong Smart City Blueprint)」が公表されています。
青写真の公式ウェブサイトによれば、香港はスマートシティとして以下の3点を実現することを目指しているようです。
(a) 利用創新及科技(創科)解決都市挑戰,並提升城市管理成效和改善市民生活質素,以及增強香港的可持續發展、效率及安全(イノベーションと科学技術を用いて都市が直面する問題を解決し、都市の管理効率の向上と市民生活の質の改善をおこない、香港の持続可能な発展を向上させていく)
(b) 提升香港對環球企業和人才的吸引力(香港のグローバル企業や人材に対する吸引力を向上させる)
(c) 鼓勵不斷的城市創新和持續的經濟發展(たえまない都市のイノベーションと持続的な経済発展を促していく)
香港は疑似的な「都市国家」として経済発展を果たしてきた歴史的背景がありますが、近年は経済的な地位の低下が目立ちつつあるといわれています。
経済的な地位の低下は香港という都市の存在意義にかかわることでもありますから、こうした課題を解決するための方法として「スマートシティ」化が目指されていると考えることもできます。
今回のアクセラレータープログラムも、こうした香港における全体的な都市計画に接続するものとして位置づけられているように感じました。
こうした背景があってか、今回のアクセラレータープログラムは香港の企業が提携して運営している「香港科技園」という企業団体が中心になっています。
香港科技園は公式ウェブサイトによれば、2001年に開設された、香港では歴史と実績のあるインキュベーター(孵化器)であり、香港でイノベーターを育てるための環境をさまざまなプログラムを通じて整備していくことを目的としているようです。
2017年には中国政府の科学技術部(科技部)から「國家級科技企業孵化器(国家レベルの科学技術企業インキュベーター)」の認定を受けていますし、民間企業の枠を超えた公的団体としての役割を果たしているとみることもできます。
事業の軸としては、「生物醫藥、電子、綠色科技、資訊及通訊科技以及物料與精密工程(バイオメディカル、エレクトロニック、環境技術、情報とICT、マテリアルと精密工学)」に注力することで、「智慧城市、健康老齡化以及機械人技術(スマートシティ、健康高齢化、ロボット技術)」の実現に寄与することを目指しているとのことです。
そうした環境整備、企業・人材育成システムのひとつが、「環球創業飛躍學院(GAA)」という育成プログラムです。
これは、公式ページによれば、3か月(13週間)の集中的育成プログラムで、技術開発、営業戦略、投資支援など、多様な側面でのサポートを実施していくということです。
今回のブロックチェーンアクセラレータープロジェクトも、こうした事業目的やプログラムの一環として、特にブロックチェーン技術を開発する企業の育成にフォーカスした取り組みだといえます。
長年の経験と実績があるインキュベーターが、ブロックチェーンという新しい技術・サービスの開発を担うスタートアップを育てていくということで、「全港首項(香港全土で初めて)」の取り組みとして注目されているということのようですね。
なお、今回のアクセラレータープログラムは2018年8月からグローバルに応募者を募り、11月からスタートするとのことです。
香港内に限らず世界中から応募者を募るというところに、香港の発展に向けてあらゆるパワーを利用していこうという意気込みが感じられますね。
インキュベーターとしての「香港科技園」と提携してプログラムを推進していくのは、「香港應用科技研究院(應科院)」と「分子區塊鏈中心」です。
應科院は公式ウェブサイトによれば、2000年に香港政府(香港特別行政區政府)によって開設された、香港の科学技術の向上を目的とした研究団体とのことです。
特に、重点的な研究分野として、「金融科技、智慧城市、智能製造、新一代通訊網絡及健康技術(フィンテック、スマートシティ、インテリジェンスマニュファクチュアリング、次世代情報ネットワーク、ヘルステック)」の5分野が挙げられています。
ここにも「スマートシティ」が重点分野のひとつに挙げられていることが注目されます。
また、「分子區塊鏈中心」は、上に挙げた「ITPro」の記事によれば、「分子集團」、「中國長遠」、「TusMaker Global Network」、「科銀資本」、「港京共創基金」という5つの投資会社が共同で創設した企業であるとのことです。
企業の登録情報が掲載されている「GoData」のページによれば、創業は2018年5月ということですから、今回のプロジェクトへの参画がほぼ初めての事業ということになるのかもしれません。
経験と実績豊富なインキュベーター、科学技術に関する研究団体、そして投資会社…ブロックチェーンに関するスタートアップを集中的に育成していくための環境が、「政官財」のバックアップで整備されている様子が感じられますね。
今回のアクセラレータープロジェクトは、第一義的には香港の都市としての発展を視野に入れたものとして展開されていくことが打ち出されています。
ただ、その取り組みは香港内で完結するものではなく、中国市場や、中国政府が打ち出す「一帯一路」に含まれる地域への事業拡大が想定されているようです。
「一帯一路」は中国が打ち出す、中国からロシア、シルクロード、東南アジアを経由してヨーロッパへと広がっていく一大経済圏構想であり、具体的な提携関係や投資活動が展開されています。
香港は歴史的に、植民地統治期も含め、さまざまな「大国」の窓口としての役割を果たし続けるなかで、都市としての存在感を高めてきたという特質を持っています。
そういう意味では、「都市国家」として高い存在感を示し続け、ブロックチェーン・仮想通貨に関するスタートアップも多く輩出しているシンガポールと香港は、たびたび比較されます。
ですが、香港は独立国家ではなく、常に特定の「大国」(イギリス、中国)の影響下に置かれていたという面で、シンガポールとはやや異なる部分も多くあります。
それが、香港の経済的存在感の低下というところに影響を与えているところもあると考えていますが、そうした現状があるがゆえに、新たな技術であるブロックチェーンの発展に尽力しようとしている…ともいえるかと思います。
このプロジェクトが成功するかどうかということは、ここからどのようなスタートアップが輩出され、そこからどのような技術やサービスがスピード感を持って生み出されているかにかかっています。
こうしたスタートアップの情報を、これからもできる限りコツコツと追いかけていきたいと思います!
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