(台北桃園空港の到着ロビー。結構キレイですよ)
ブロックチェーンという新しい技術を使って何を実現していくか?ということは、企業などがブロックチェーンを導入・活用するうえで大事な視点だろうと思います。
単純にブロックチェーンを使ったサービスを始める、ブロックチェーンを従来のシステムに導入するということだけではなく、そのことによってどのような問題が解決され、どのような世界が実現されるのかというところが、新たな技術の発展・普及につながっていくと感じています。
今回は、台湾の航空業界で初めて、ブロックチェーンを活用したサービスを提供する企業が現れたというニュースを目にしました。
こうしたサービスがどのような形で広がっていくものなのかというところに注目しながら、少し書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考にとどめてご覧ください(^_^;)
・遠東航空でトークンによるチケット購入サービスが開始?
・「樺福集團」傘下企業による取り組み
・ALLNが目指すエコシステム⁉︎
・トークンの価値向上は上手くいくか?
台湾のニュースサイト「民報」に掲載された記事によると、台湾の国内航空会社大手の「遠東航空(Far Eastern Air Transport、FAT)」が2018年8月1日から12日まで、「樺福集團(Huafu Enterprise Holdings Limited)」が発行した「ALLNトークン(Airline and Life Networking Token)」を利用したチケット購入サービスの試験運用をおこなうことを発表したとのことです。
記事には具体的な利用方法が書かれていませんが、遠東航空の公式ウェブサイトによると、イーサリアムのアプリウォレット「imToken」のアプリを利用し、サービスカウンターに設置されたQRコードを読み込むことで決済を完了させるシステムになっているようです。
「民報」の記事によると、2018年8月1日から9月30日まで、30ALLNを路線指定なしの国内線片道チケットに交換できたり、ALLNでチケットを購入した利用者のうち、2名に10ALLNが当たるキャンペーンを実施しているということです。
また、遠東航空の路線は台北・台中・高雄から澎湖・金門という離島を結んでいるということで、澎湖・金門の居住者は29ALLNでチケット交換ができるという特典も準備されています。
遠東航空のサイトによれば、トークンの価格は1ETH=400ALLNとなっていますから、キャンペーンはそれほど破格というわけではありませんが、まずはトークン決済を体験してもらって、利用者拡大を目指していきたいようですね。
実は、サービス提供をはじめた遠東航空と、トークンの名称にもなっているトークンプラットフォーム管理会社の「ALLN」は、どちらも樺福集團(樺福グループ)傘下の企業です。
遠東航空は、wikipedia繁体字版の記事によると、1957年に創立された歴史の古い航空会社ですが、2008年に財政悪化から運行停止に追い込まれましたが、その後、香港に拠点を持つ樺福グループが資金提供することで運行再開にこぎつけ、今に至っているようです。
企業としての「ALLN」の公式ウェブサイトによれば、ALLNは「decentralized application platform for real consumption created by Huafu Enterprise Holdings Limited(樺福グループによって作られたリアルな消費のための分散型アプリケーションプラットフォーム)」と説明されています。
具体的には決済システムへのブロックチェーン活用・スマートコントラクト導入を目指しているようですが、この点については以下のように説明されています。
ALLN takes the consumption style of credit card as a reference to establish a clearing center(Settlement center) for procedures in order to reduce the waiting time for exchanging commodities and forming business cooperation efficiently. To make Cryptocurrency a practical use.(ALLNは、コモディティの交換や業務提携を効率的におこなうための待機時間を短縮する、決済(clearing)センター(Settlement center)を設置するために、クレジットカードの消費スタイルを参考にしています。 仮想通貨を実用的に使うために。)
サイトにリンクされているホワイトペーパーの表紙には、「ALLN as VISA & MasterCard in Cryptocurrency」と書かれています。
決済における利便性の向上を目指して、ブロックチェーン・仮想通貨のシステムを導入することが意図されたキャッチコピーとなっていますね。
では、もう少し具体的に、仮想通貨をVISAやMasterCardのような決済システムとして活用するとは、どのようなことなのでしょうか?
ホワイトペーパーには、「ALLN Commercial Applications and Economic Benefits(ALLNの商業アプリケーションと経済効果)」という項目があり、以下のようなステップが想定されています。
Blockchain Consumption Platform(ブロックチェーン消費プラットフォーム)
→Expansion the Number of Businesses(ビジネスの量的拡大)
→Expend Consumption Scenarios and Applications(消費シナリオとアプリの増加)
→Enhance Consumer Experience(コンシュマーエクスペリエンスの向上)
→Increase number of consumer(消費者の流入増加)
→Create Application Value of ALLN(ALLNのアプリの価値の創造)
→Possibility of ALLN Price promotion(ALLN価格の上昇)
こうしたステップによって、「ALLN gives itself entity value through strategically plan, and connection with the consumption of physical goods and services(ALLNは戦略的なプランと実際の商品やサービスの消費とのコネクションによって実体価値を与える)」ことを目指すとしています。
ALLNの価値向上のために、実体経済のなかでのトークン使用拡大を目指していくという姿勢がうかがえますね。
ALLNの公式ウェブサイトには、以下のような将来像が描かれています。
In the future, it will be extended to other strategic partners, including travel agencies, hotels, high-level clubs and tourism real estate, livelihood consumer and retail industries, to achieve the target of consumer application by cryptocurrency with a large ecosystem.(将来的には、仮想通貨利用は、旅行代理店、ホテル、ハイレベルクラブ、観光用不動産、生活消費者、および小売業など、(航空業とは)他の戦略的パートナーにも拡大され、大規模なエコシステムをともなう仮想通貨による消費者アプリケーションの目標を達成する予定である)
実際に、今回の遠東航空でのトークン使用を皮切りとして、樺福グループ傘下の「遠行旅行社」、「樺福建設」、「樺舎商旅(ビジネスホテル)」との連携が想定されているようですから、今後、こうした関連分野でのトークン利用が進められていくのでしょうね。
今回の遠東航空におけるトークン利用の取り組みは、樺福グループ内の企業連携による総合的なプロジェクトとして推進されているようですね。
もちろん、航空業でのトークン利用が上手くいくかどうか、ホワイトペーパーに挙げられたようなステップがそのとおりに進んでいくかどうか…
仮想通貨へのネガティブな印象や、実際の利用場面でのハードルの高さなど、解消しなければならない課題は多くあり、実際にプロジェクトとして成功するかどうかは未知数です。
ただ、著名な企業によって、具体的な利用場面のなかにブロックチェーン・仮想通貨が組み込まれることは、一般の人々の参入ハードルを下げるという意味で効果が期待できるかもしれません。
上に挙げた「民報」の記事では、ネット上の決済システムはもうすぐ公開ということなので、UIの開発や利便性の向上も同時並行でおこなわれていくのだろうと思います。
さまざまな課題はあるように思いますが、まずはサービスとして動かしてみて、ユーザー拡大を狙っていく…という積極的な姿勢がうかがえますね。
ブロックチェーンはあくまで基盤となる技術ですから、それを実装した具体的なサービスが展開されることが大切なのかなと思っていますので、こうした動きはとても興味深く感じます。
8月13日から本稼動開始ということなので、またしばらくすると利用実績が公表されるはずです。
今後の動きも出来る限り追いかけていきたいと思います!
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