ブロックチェーンの社会実装を進めるプロジェクトはいろいろありますが、僕自身は「ブロックチェーンスマホ」が有力じゃないのかなと思っています。
蟻巣ジョシさんもの記事でも、ブロックチェーンスマホでドヤろう!と書いてありますし。
ただ、以下の記事で触れましたが、日本でも注目されていたイスラエルのスタートアップSirin Labsが開発したブロックチェーンスマホ「FINNEY」が販売不振ということが報じられるなど、業界自体があんまり芳しくない印象がありますね。
そんななか、この記事のメインテーマとして書きました、台湾のHTCは2018年12月に発売した「EXODUS1」の後継機の開発を進めているようです。
今回は、その後継機の続報が伝えられていましたので、そのことに少し触れようと思うのですが、日本語の情報としてもすでにいろいろ出回っているようですので、プラスアルファの話も加えながら記事にしておきたいと思います。
・ブロックチェーンスマホEXODUS1sは廉価版⁉︎
・HTCの戦略は?
・あと4か月後にちゃんと発売されるか?
台湾の「engadget」中国語版に2019年5月12日に掲載された記事によると、台湾のHTCが「EXODUS1」の「廉価版(便宜版)」として、「EXODUS1s」という名前のブロックチェーンスマホを販売予定であると公表したそうです。
記事によれば「プロセッサ、ディスプレイ、カメラなどの基本仕様については、今のところ一切が謎である(包括處理器、顯示、相機等基本規格,目前一切都是謎)」とありますが、ポイントとしては…
・価格は250~300米ドルのあいだ
・発売時期は「第三四半期末(第三季尾)」
・ビットコインのブロックチェーンの「フルノード(完整節點)」を利用可
・microSDカード利用可
・EXODUS1にも入っているZion VaultのSDKをGitHubに公開予定
同じ内容の記事が「engadget」日本版にも掲載されていますので、こちらを読んでいただいたほうが雰囲気を掴みやすいかなと思います。
他にも関連情報が日本語で配信されていますので、詳細はそちらに譲るとして…
とりあえず、本当にこの価格で販売されるとすれば「即買い」決定ですよね!
coindeskの英語記事によれば、2019年5月11日~12日にニューヨークで開催された「Magical Crypto Conference」の場で、HTCのブロックチェーンリーダー(區塊鏈長)である陳信生(Phil Chen)さんがEXODUS1sについて公表したそうです。
カンファレンスのアジェンダを見ると、陳信生さんのスピーチタイトルは「Special Announcement HTC」とありますから、EXODUS1sの情報を公表することは予定されていたようですね。
冒頭に挙げた記事でも書きましたが、ブロックチェーンスマホの後続機の開発については、すでに2019年4月に陳信生さんが言及しています。
今回は少し詳しい情報が出てきたわけですが、それでもなんとなく情報を小出しにしている印象があります。
この点、個人的には市場の反応を探っているのかも…と思ったりします。
というのも、HTCのスマホ事業はなかなか厳しい状況にあるようなんですね。
台湾の大手紙「中國時報」のニュースサイトに2019年5月12日に掲載された記事によれば、HTCは今年4月の営業収益が5.9億元(約22億円)まで下がり、「2003年上場以来の低水準となった(創下2003年上市以來新低紀錄)」ということです。
同じ記事のなかで、中国の大手ネットモールである天貓(Tmall)や京東(JD.COM)に開設していた旗艦店を閉鎖することにも触れられていて、なかなかの「苦境ぶり」が伝えられています。
そうした状況のなかでの、新たなブロックチェーンスマホの開発…
起死回生という意味合いもあるのかな、と思ったりしますが、EXODUS1が大ヒットしたから次も…というわけではなく、むしろその先進性が大事だというスタンスのようです。
このあたり、「中國時報」の記事が以下のような見通しを伝えているところは興味深いです。
HTCはVR(仮想現実)とブロックチェーンなどの分野を深めていき、単なるハードウェアを販売する会社からの脱皮を目指して、プラットフォームとコンテンツによるさらなる道程を歩んでいく。
(HTC持續深耕VR(虛擬實境)和區塊鏈等領域,盼轉型成不只銷售硬體的公司,透過平台和內容走更長久的路)
冒頭に挙げた記事でも触れましたが、HTCはVRハードウェアの「VIVE」を中心したVR構想「VIVE Reality」というビジョンを打ち出して、次世代技術を複合的に活用したサービス・プラットフォームの開発を進めています。
また、すでに1号機のEXODUS1に搭載されているウォレット「Zion Vault」にKYBER networkのソリューションを統合したことを公式Mediumページで明らかにするなど、外部とのつながりが製品サービスに反映されているような動きも見えます。
スマホメーカーとして、ブロックチェーンスマホが成功しそうかどうか、その確率はどの程度なのかという観測をしていると同時に、プラットフォームとしてEXODUS1・1sを位置づけて、その発展の方策を考えているのかなと感じます。
それが業績回復につながれば…というところだと思いますが、いずれにしても、こうした海のものとも山のものともわからない新技術の活用を打ち出すことができるというのは、まだまだHTCも頑張っているな、頑張っていけるかなという印象を持ちますね。
第三四半期末にEXODUS1sを発売予定ということは、この記事執筆時点から考えて、あと4か月ほどしかありません。
機種名も含めて、より具体的な情報が開発者本人から流されたということは、技術開発はおおかた済んでいるのだろうと思います。
あとは、実際の仕様がどうなっているかということや、実際の価格、発売地域、発売方法(EXODUS1の場合はネット上・仮想通貨払いのみから店頭販売・フィアット払い可へ)など、後続の情報を待つ必要があるようです。
ただ、冒頭でも触れましたように、ブロックチェーンスマホは現在、有力な競合他社が見当たらない状況です。
そんななかで矢継ぎ早にブロックチェーンスマホ開発を打ち出して、実際に製品をローンチしているHTCは、「フロントランナー」として業界の利益を早めに取りに行こうとしているように感じます。
業績全体の状況も考えれば、まだ競争相手の少ない分野に素早く進出していくことによって、得られる利益を大きくしたいという思惑も、もしかしたらあるのでしょうか。
いずれにしても、ブロックチェーンを含む新たな技術が大手企業の業績アップに活用されるというのは、ブロックチェーンの普及ということから考えても大きな動きのひとつなのかなと思います。
これからも関連した情報がたびたび流れてくるでしょうから、できるだけコツコツと情報を追いかけて、記事に書いていきたいと思います!