仮想通貨が安定した「通貨」としての役割を果たすためには、まだまだ法定通貨との関係性を切り離すわけにはいきませんね。
とりわけ、ボラティリティの大きさは仮想通貨の不安定さを象徴するものとして、投資における利確や決済利用の難しさに直結する課題となっています。
こうした課題の解決方法のひとつとして、「USDT」のようなアメリカドルと同価値になるようなトークンが発行されたりしています。
ボラティリティが大きく不安定な相場になりがちな仮想通貨の取引を、法定通貨の安定性を担保にすることによって解消しようということですね。
台湾でもこの「USDT」と同様の方法で課題解決を図ろうという動きがありますので、書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにご覧ください(^_^;)
・「CryptoDT」が発行する「TWDT」
・綠界科技ってどんな企業?
・TWDTの活用範囲は?
・これから広がっていくか?
台湾の大手紙「中國時報」系列の経済紙「工商時報」のウェブサイトに掲載された記事が、台湾でオンライン決済「ECPay」を提供している「綠界科技」が「CryptoDT」という「代幣中心(トークンセンター)」を推進していることを伝えています。
CryptoDTの公式ウェブサイトには、発行トークンとして、パブリックチェーン(公有鏈)上に発行される「TWDT」と、プライベートチェーン(私有鏈)上に発行される「TWDT-COIN」の二種類が挙げられています。
なお、後者の「TWDT-COIN」については、これから発行予定となっていますので、以下、「TWDT」について書き留めていきます。
TWDTについて、公式ウェブサイトには以下のように説明されています。
於以太坊採 ERC 20 標準發行的數位代幣,可用於以太坊公有鏈。可於 CryptoDT 網站透過返還 (兌換出) 功能兌換為法定貨幣,匯入通過身分驗證的銀行帳戶。
(イーサリアムのERC20によって発行したデジタルトークンをイーサリアムのパブリックチェーンで利用する。CryptoDTのウェブサイトの返還(出金)機能を通じて法定通貨に交換でき、身分証明を済ませた銀行口座に入金される)
文中にあるようにERC20トークンとして発行されるTWDTは、台湾ドルと1:1を維持するとされています。
この、TWDTの信用を担保する台湾元との1:1の比率をどのように維持していくかということについては、トークン発行時に同額の台湾元を信託銀行に預けることで担保するとしています。
このことを証明するために、2018年9月30日までは毎日、信託額を公表するということです。
また、「発行計画書(發行計劃書)」によれば、発行数は1,000億枚となっています。
ちなみに、公式ウェブサイトに掲載されている図では、CryptoDTのロゴの周囲に、「TW」、「JP」、「US」、「KR」、「CN」が描かれています。
将来的に「JPDT」、「KRDT」、「CNDT」発行を考えているのでしょうか…?
公式ウェブサイトには、CryptoDTについて以下のように説明されています。
CryptoDT團隊來自於綠界科技 ─ 台灣最早成立的金融科技服務公司。 自 1996 年成立以來,綠界科技一直致力於提升網路金流服務的解決方案,並接軌最新之 FinTech 金融科技趨勢,我們相信在區塊鏈技術之高效率和安全性將更趨完善的未來,Digital Token 數位代幣將越來越普及。
(CryptoDTグループは台湾でもっとも早くに成立したフィンテックサービス企業である綠界科技に由来する。1996年に成立してから、綠界科技は一貫してネット金融サービスの解決方法の向上に力を尽くすとともに、最新のフィンテックの動向に合わせてきた。わたしたちはブロックチェーン技術の効率性の高さと安全性が素晴らしい未来をもたらし、デジタルトークンが徐々に普及していくと信じている)
綠界科技については、公式ウェブサイトを開くと、クレジットカード決済、コンビニ決済、ApplePay・GooglePayなどを取り扱っていることが一目でわかります。
上に挙げた「工商時報」の記事には、綠界科技が銀行を除く最大のオンライン決済企業であり、市場占有率は7割に達すると書かれています。
TWDTに対する信用は、こうした企業のこれまでの実績と、金融・小売業などとの密接な連携にも担保されているように感じます。
上に挙げた「発行計画書」には、TWDTの商用利用については、「會員管理(会員管理)」、「兌換代幣(トークン交換)」、「電子錢包(デジタルウォレット)」、「銀行信託」、「創新應用(イノベーティブなアプリ)」の5項目が挙げられています。
このうち、「會員管理」については、CryptoDTへの登録に身分認証を要すること、「銀行信託」についてはTWDTを担保する基本的なシステムとして既に導入されています。
また、「兌換代幣」については、今のところ「KTrade」、「MAX」、「STAR BIT」という台湾発の仮想通貨取引所での取り扱いが挙げられています。
それぞれの取引所のページを確認してみると、KTradeとSTAR BITでは既に導入済み、MAXは2018年8月1日からの取り扱いとなっています。
これ以外のウォレットとアプリの開発についてはこれから…ということのようですから、まだまだ活用されていくかどうかというところは未知数のようです。
仮想通貨を決済に活用していくためには、ボラティリティの大きさなどに起因する不安定さをどのように解消していくかということが大きな課題となっています。
こうした課題に対して、相対的な安定性を持っている法定通貨に連動した仮想通貨というアイデアは、有効な解決策のひとつなのかもしれません。
法定通貨の裏づけをもつ仮想通貨…を果たして純粋な仮想通貨と呼べるのか、そこに投資するだけの材料があるのか、といった問題はあるかと思いますが、仮想通貨に厳しい視線が投げかけられてる現状にあっては、ひとつの折衷策という位置づけができるように思います。
こうした点を踏まえて、TWDTについてはどうなっていくでしょうか。
たとえば、台湾社会における仮想通貨への懸念を和らげる効果を持ちうること、台湾では比較的著名な取引所に上場されていること、台湾の行政や立法機関においても仮想通貨については前向きに検討を進めていることなど、利用が拡大していく要素はいくつか考えられると思います。
他方で、台湾元による裏づけが確実かつ透明性を確保する形で維持されていくか、取引所での取り扱いを拡大させることができるか、ウォレットなどの開発が順調に進んでいくかどうか、価格操作に利用されないかなど、不確定要素を内包していることもまた事実だろうと思います。
ただ、決済システムに実績のある綠界科技の事業と連携する形で、多様なサービス展開がスピード感をもって実現されれば、一気に普及していく可能性もあるのかもしれません。
今後、どのように展開していくのか…情報をこれからもコツコツ追いかけていきたいと思います!
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