僕もこれまでに記事にしてきましたが、中国の大手企業がブロックチェーンの導入を積極的に進めていますね。
ブロックチェーンの活用は中国政府も積極的にバックアップしているため、大手企業もスタートアップも日々、さまざまな形でブロックチェーン活用の方法を模索しています。
動きが広範かつスピード感があるため、なかなか情報に追いつくことが難しいのですが…
今回は、中国の大手検索エンジンを運営する「百度Baidu」のブロックチェーン活用が話題になっていますので、やや遅いのですが、少し書き留めておきたいと思います。
・BaiduのXuperChainが正式リリース?
・ホワイトペーパーに示された活用の方向性
・サービス展開の速さと広範さ…
中国のテック系ニュースサイト「动点科技」が2018年10月18日に掲載した記事によると、「百度Baidu」が中国・海南省の「海南生态软件园(Hainan Resort Software Community、RSC)」に開設された「海南自贸区(港)区块链试验区(海南自由貿易区(港)ブロックチェーン実験区)」に、「海南百度区块链实验室(海南Baiduブロックチェーン実験室)」を開設すると同時に、Baiduが進めているブロックチェーンプロジェクトである「百度超级链(Baidu XuperChain)」を正式にリリースしたそうです。
海南省のブロックチェーン実験区については以下の記事に書き留めましたが、今回のニュースはここにBaiduが実験室を開設したということ以外は、今回が初出ではなく、日本語で読める情報も含め、すでにいろいろな形で報じられています。
特に、「超级链(XuperChain)」については、ブロックチェーン専門メディアである「Odaily星球日报」がニュースサイト「36Kr」に2018年9月26日に掲載した記事で、「超级链为技术底层(基盤技術としてのXuperChain)」という形で報じられています。
既にXuperChainの公式ウェブサイトも公開されていて、特徴として以下のようなことが挙げられています。
超级链是百度计划开源的具备强大的网络吞吐力和高并发的通用智能合约处理能力的区块链3.0解决方案。基于可插拔的共识机制、DAG可并行计算网络和立体网络,真正突破当前区块链的技术瓶颈,为区块链的广泛应用铺平道路。
(XuperChainはBaiduがオープンソースで設計した強力なネットワークスループットと高度なスマートコントラクト処理能力を備えたブロックチェーン3.0ソリューションです。プラグ可能なコンセンサスメカニズム、DAG並列コンピューティングネットワーク、ステレオネットに基づき、ブロックチェーンが直面している技術的なボトルネックを真に解消し、ブロックチェーンの広範な活用のために道を作る)
「ブロックチェーン3.0」という表現からもうかがえますように、これからBaiduが多様なサービスに活用するための独自開発による基礎技術として位置づけられていることがわかりますね。
技術的な裏付けやこれからの方向性については、XuperChainの公式サイトで公開されているホワイトペーパー「百度区块链白皮书 V1.0」に詳細な説明が掲載されているのですが、すべてを解説するのはなかなか大変ですし、細かく目を通しきれていませんし、僕の知識もまだまだ…
ただ、興味深いなと感じるのは、この基盤をなすブロックチェーン技術をさまざまなサービスに既に搭載済み、もしくはこれから搭載していくと考えられているところです。
先に触れた「36Kr」に掲載された記事によると、「图腾、度宇宙、百度会学、百宝箱、百科上线、休伯特」という6つのサービスにXuperChainの技術を搭載していくとしています。
このうち、2018年10月19日時点で既にサービス公開されているのは、「图腾」、「度宇宙」、「百度会学」、「百科上线(百度百科)」の4つです。
また、「百度百科」へのブロックチェーン導入については、阿悉さんがALISで詳細な記事を書かれていますので、ご参照ください。
「图腾PIC-CHAIN」はデジタルコンテンツの発信・販売・管理プラットフォームで、公式ウェブサイトには以下のように説明されています。
建立基于区块链技术的版权登记系统、人工智能视觉检索系统和版权图片检索系统,发挥百度技术生产力,赋能原创作品版权登记、监控与维权。
(ブロックチェーン技術に基づく版権登録システム、AIによるビジュアル検索システム、版権イラスト検索システムを構築し、Baiduの技術開発力を発揮し、クリエイターの作品へ版権登録、管理、権利保護を付与する)
「正版资源」のページには多くの作品が掲載されていて、作品をクリックすると購入ページが表示され、速やかに購入・利用することができるようです。
「度宇宙」は公式ウェブサイトによれば、「百度首款区块链产品(Baiduによる初めてのブロックチェーン製品)」とあります。
ただ、ウェブサイトを見ただけでは、宇宙に関するアプリで、「星际旅行(惑星間旅行)」というワードも見えるので、宇宙に関するゲームなのかなということ以外は、なかなか詳細がわかりません。
ホワイトペーパーには、「文化娱乐(カルチャーエンターテインメント)」「游戏(ゲーム)」に位置づけられ、「区块链+大数据+娱乐+社交+消费(ブロックチェーン+ビッグデータ+エンターテインメント+ソーシャル+消費)」を一体化したゲーミングプラットフォームと説明されています。
どなたか「やってるよ!」という方がいらっしゃれば、ぜひレポを書いていただきたいです…
「百度会学」は公式ウェブサイトを見ると、一見して、e-ラーニングのプラットフォームであることがわかります。
学習コンテンツには「百度教育指数」という、AIを活用したスマートアルゴリズムによる評価ポイントが付与されていて、客観的で公正・公平な形でコンテンツの質を評価しているとしています。
学習内容はIT系のものが多くありますが、アプリという形で初等教育から中等教育に関する内容や外国語学習、資格試験に関するコンテンツなど、多彩な内容のものがアップされています。
公式サイトが公開されているサービスは今のところ以上ですが、そのほかの「休伯特」と「百宝箱」については、ホワイトペーパーに詳細な計画が記載されています。
ホワイトペーパーによれば、「休伯特」は「信息安全(情報セキュリティ)」に対応するサービスとして、「百宝箱」は「数字广告(デジタル広告)」に対応するサービスとして、それぞれ位置づけられています。
いずれも、ブロックチェーンの特性を活かしながら、AIなど多様な技術を組み込む形で、サービスとしてオーソドックスかつ需要の高いものが考えられていることがうかがえますね。
XuperChainおよび関連サービスの概要をまとめただけでも、Baiduが非常にスピーディーで、かつ広範囲に渡ってサービス展開を進めていることがわかりますね。
これらを支える技術的な構成についても、全49頁にわたるホワイトペーパーで詳しく説明されていますので、本当はもっとちゃんと読まないと、これらのサービスを支えているバックボーンを理解することができないな…と感じています。
(本当は日本語訳できればいいんですけれど…大変…^^;)
ただ、記事として書き留めた表面的なところを見ただけでも、既にBaiduが独自のブロックチェーン技術を開発し、そのうえにプロダクトを稼働させ、多くの人々の生活のなかに入り込んでいる状況にあることを感じることができますね。
今日現在でまだサービスが始まっていないものについても、たとえば「休伯特」については2018年の第4四半期に開始予定というロードマップも公開されています。
このスピード感についていくのはなかなか大変ですが、できる範囲でコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!