(台北・士林の夜市の入り口。深夜まで賑やかですよ)
ブロックチェーンの特性を活用して既存のサービスをバージョンアップさせていく取り組みが、世界各地で展開されていますね。
e-コマースにおけるブロックチェーンの活用は相性が良いようで、中国のアリババや京東などは積極的にブロックチェーンの開発を進めていますね。
こうしたIT大手の動きはもちろん注目されるわけですが、台湾ではまた少し違ったアプローチでブロックチェーンを活用したサービスを展開しようという動きが見えています。
今回は、ブロックチェーン上に構築されたプラットフォームサービスを物流業へ提供するという動きが目に留まりましたので、書き留めておきたいと思います。
・「スマート物流ブロックチェーンプラットフォーム」が開設⁉︎
・台湾の公的機関も注目している⁉︎
・今回の取り組みが目指す先は…?
台湾のビジネス系ニュースサイト「數位時代」に2018年12月12日に掲載された記事によると、サプライチェーンに関する技術開発を展開している「艾旺科技(IONE、アイワン)」が、台湾の物流企業である「昶捷物流」や「洪福通運」と提携し、「アイワンスマート物流ブロックチェーンプラットフォーム(艾旺智慧物流區塊鏈平台)」を開設したということです。
今回のプラットフォーム構築は、物流をめぐる以下のような課題を解決するという目的があるようです。
冷蔵・冷凍商品の出荷に関するコールドチェーンロジスティックを例にとると、上流から下流まで毎月平均5万枚の伝票が交わされ、一枚の伝票は4枚綴りとなっていて、伝票の情報は爆発的に増える。加えて、配送過程で多くの情報修正が生じるので、上流・下流で同時に修正が反映されなければ、将来的な伝票照合が困難となる。また、サプライヤーやユーザーは異なるERPシステムを採用していて、作業伝票の形式が異なり、全体的な効率は自然と落ちてしまう。
(已配送冷藏、冷凍商品的冷鏈物流(Cold Chain Logistics)為例,從上游到下游每個月平均會產生五萬張單據,而每張單據都是四聯單,資訊表單數量爆炸,加上配送過程中需要更改許多資訊,上下游如果沒有即時同步,就會造成未來對帳困難,且供應商、客戶可能都採用不同的ERP系統(企業資源規劃系統),作業單據格式不同,整體效率自然就不會太好。)
物流システムにおける伝票管理をめぐる労力の大きさに加えて、これらの作業の多くを人力で処理していることが大きな課題として意識されています。
ここに、ブロックチェーン上に構築したプラットフォームで実行されるスマートコントラクト(智慧合約)を導入することで、上流から下流に至る伝票管理をすべてデジタル化・自動化するということです。
台湾のネットニュースサイト「iThome」の記事によれば、プラットフォームはイーサリアム上に構築され、パソコンからプラットフォームにアクセスできるだけではなく、配送員が外出先からもアクセスできるアプリも合わせて提供されるようです。
艾旺科技は今回のプラットフォーム導入によって、物流業のコストを約50億台湾元(約185億円)削減することにつながると説明していて、大きな効果が期待されているといえますね。
艾旺科技の公式ウェブサイトには、今回のプラットフォーム公開に関する発表会のプログラムが掲載されています。
このプログラムによれば、艾旺科技の董事長である陳立武さんによるプレゼンとデモンストレーション以外に、台湾の経済行政を管轄する經濟部技術處の所長である羅逹生さんや、ブロックチェーン・仮想通貨関連の立法・政策を積極的に推進している立法委員の許毓仁さんが登壇していたようです。
(許毓仁さんについては、以下の「まとめ記事」をご参照いただければ嬉しいです)
上に挙げた「iThome」の記事によれば、艾旺科技の今回の取り組みに対しては、2018年6月に經濟部が主催するイノベーションプログラムに採択されていて、物流をめぐる課題解決を經濟部としても期待している様子がうかがえます。
また、台湾の報道機関である「中央通訊社」の記事によれば、科学技術の発展を担う官民協働組織である「財團法人資訊工業策進會(Institute for Information Industry、資策會)」のなかでブロックチェーン開発を担う「數位轉型研究所(Digital Transformation Institute)」が今回のプラットフォーム開発に関わっているようです。
台湾で初めての「物流×ブロックチェーン」プラットフォームということで、関連業界はもちろん、公的機関も大きな期待をもって関わっていることがわかりますね。
艾旺科技が構築したプラットフォームは、単純に物流における伝票処理の課題を解決するだけではなく、その先がいろいろと見据えられているようです。
たとえば、「iThome」の記事で艾旺科技の陳立武さんは、流通過程のなかで「適正流通基準(GDP)」が求められる医薬品の流通や国際貿易のプロセス適正化、サプライチェーンの管理への応用をイメージしているようです。
また、「中央通訊社」の記事には、資策會がブロックチェーンに加えて、クラウド(雲端)、AI(人工智慧)、ビッグデータ(大數據)などを活用することで、「サプライチェーンファイナンス、デジタルポイントエコノミー、農産物トレーサビリティ、デジタルアセットの権利保護(供應鏈金融、數位點數經濟、農產防偽/履歷、數位資產授權)」といった分野への応用が期待されているということです。
ここに挙がっている各分野はもうすでに、さまざまなスタートアップが技術・サービスの開発を進めています。
それだけ、今の台湾社会ではブロックチェーンを活用することが期待されているフロンティアとして、こうした分野が意識され、アプローチされているんだなということがうかがえます。
艾旺科技が開発したプラットフォームがどのように活用され、どのような分野へと広がっていくのか…
台湾社会の全体的な動向にも注目しながら、これからもコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!