「區塊鏈元年(ブロックチェーン元年)」を迎えている台湾は、ブロックチェーン・仮想通貨への取り組みが遅れていると言われることもあります。
他方で、世界のICT産業におけるOEMを長年担ってきたという、そのポテンシャルに注目が集まり、潜在的な市場として位置づけられることもあるようです。
たとえば、僕のこれまでの記事では、オーストラリア発の仮想通貨取引所「BitRabbit」が東南アジアやヨーロッパへの進出を見越して台湾に注目していたり、中国発のブロックチェーン開発企業「神州数字」がブロックチェーンのビジネス展開において、台湾市場は期待がもてるという見解を示していたことを書き留めました。
こうした形で、台湾を世界的な事業展開のためのマーケットに組み込んでいく動きが今回も目に留まりましたので、少し書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにご覧ください(^_^;)
・仮想通貨管理アプリ「BitUniverse」が台湾進出!?
・BitUniverseって?
・ブロックチェーンは中小企業や個人が力を発揮できる⁉︎
・健全なコミュニティには正確な情報を
台湾の大衆紙「蘋果日報」が報じた記事によると、「全球第三大虛擬貨幣管理程式(世界三大仮想通貨管理アプリ)」といわれている「BitUniverse」が、2018年7月30日から台湾でサービスを開始することを発表したということです。
今回の台湾進出について、創業者の陳勇さんは日本や韓国への進出を見据えたうえで、以下のように説明しています。
BitUniverse團隊成員中也有許多來自台灣,一上線就已經推出繁體中文功能,目前台灣地區用戶數排名第三,加上台灣具備優秀的資通訊技術人才、完整的資通訊產業供應鏈,主管機關也支持,有很好的潛力發展全球區塊鏈產業,因此優先選擇到台灣。
(BitUniverseのグループメンバーの多くは台湾出身者であり、サービス開始時に繁体字中国語の機能を既に打ち出していて、今のところ台湾地区のユーザー数は3番目に多い。加えて、台湾には優秀なICT人材がおり、整備されたICT産業のサプライチェーンがある。そして、行政機関の支持もあり、グローバルなブロックチェーン産業を発展させるすばらしい潜在能力がある。これらのことから、優先的に台湾を選択するに至った)
スタッフの構成やユーザーの分布から台湾に進出する素地は既にあったようですが、台湾が持つポテンシャルをより活用する形でグローバルな事業展開を拡大させていこうという意図がうかがえますね。
台湾のビジネスニュースサイト「數位時代」の記事によると、BitUniverseを創業した陳勇さんは、もともと中国のチーターモバイル(獵豹移動)の「高級副總裁(Senior Vice President)」を務めた経験があるそうです。
(チーターモバイルについては、以下の記事に少し書き留めました)
月あたりのアクティブユーザー数は10万人近くで、そのうち3万人超が台湾人ユーザーということですから、このあたりが今回の台湾進出につながっているようですね。
仮想通貨管理アプリの機能の特徴については、BitUniverseの公式ウェブサイトで以下のように説明されています。
The biggest game changer in BitUniverse is the ability to automatically and quickly import your transaction data from exchanges using API keys.
(BitUniverseのもっとも大きな変革は、APIキーを使用して取引所から取引データを自動的かつ迅速にインポートする機能です)
こうした自動インポート機能については、今のところ1,000種類以上の仮想通貨と、以下の取引所をサポートしているようです。
Binance, Bittrex, Coinbase, Gdax, Kucoin, Cryptopia, Kraken, Poloniex, Bitfinex, Huobi, HitBTC, bithumb, Coinbene, bitbank, Quoine, Fcoin, okex, gate.io
上に挙げた「數位時代」の記事によると、APIを通じた自動インポートについては、8月末までに100以上の取引所をサポートできるように動いているようです。
同時に、リアルタイムに200以上の取引所と5,000種類を超える仮想通貨の情報を提供しているということです。
こうした数字だけを見れば「コイン相場」などのアプリを超えているように見えますが、「數位時代」の記事によれば、アプリ上から直接取引ができる機能はまだこれから実装される予定ということですので、現時点では情報提供アプリという段階にとどまっているといえます。
上に挙げたように、BitUniverseの台湾進出は既に作られていた台湾とのかかわりを大きなきっかけとしていますが、「蘋果日報」の記事によれば、以下のような要因も挙げられています。
更重要的是,台灣產業發展以中小企業為主,過去因資金大多掌握在傳統大企業手上,相對不利於中小型創業募資;但在區塊鏈時代中,小而美的投資將是常態,即使規模較小的項目也能獲得好的募資機會,希望藉此讓更多有意創業者更容易獲得資源,進而激發台灣產業的創新和活力。
(さらに重要なのは、台湾の産業発展は中小企業が中心であり、これまでは資金の多くは伝統的な大企業の手にあったため、相対的に中小企業の起業資金調達は不利だった。しかし、ブロックチェーンの時代には、零細な投資が常態であり、たとえ規模の小さなプロジェクトであっても素晴らしい資金調達の機会を得ることができる。ここからより多くの、意識を持った創業者がより簡単に資源を獲得し、台湾産業のイノベーションと活力を刺激していきたい)
これから予定されているアプリからの直接取引機能の実装は、こうした資金調達の機会を提供するひとつの窓口としての役割を果たそうとしているのかなと感じます。
そうしたときに、台湾の中小企業を中心とする産業構造は、BitUniverseにとって自らの事業を積極的に展開していく条件が整備されていると感じられたということのようです。
あわせて、創業者の陳勇さんは、記事のなかで「代幣經濟(トークンエコノミー)」についても以下のように言及したそうです。
在代幣經濟中,用戶是持有者也是股東,研發人員、代幣經營者與用戶社群之間的關係更加緊密,社群的營運與共建是重要的一環,促動虛擬貨幣市場更健康的發展。
(トークンエコノミーにおいては、ユーザーは所有者でもあり株主でもある。開発スタッフやトークン経営者とユーザーコミュニティとの間の関係はさらに密接なものになり、コミュニティの運営と共創は重要な一部であり、仮想通貨市場をより健全に発展させていくことを促す)
こうしたトークンエコノミーとコミュニティとの関係性は、ALISが目指している姿とも共通している部分があるように感じますね。
(たとえば、先日開催されたトークンエコノミーのミートアップで語られた内容などが参考になりますね。記事としては、以下のCosmosさんの記事をご参照ください)
BitUniverseが示している以上のような内容を踏まえて考えてみると、トークンエコノミーの形成に必要な健全なコミュニティの構築には、仮想通貨・ブロックチェーンをめぐる正確な情報が必要ではないか…ということを、BitUniverseは示そうとしているのかな、と感じました。
ユーザーが使用するのは「仮想通貨管理アプリ」というサービスですが、サービスを通じたユーザーエクスペリエンス(用戶經驗)を通じて、ユーザーやコミュニティ自身が自然と発展していくというイメージが描かれているように思いました。
現実に実現されているサービスに込められた理念や、サービスの向こう側に透けて見える「実現すべき世界」のありようは、知らず知らずのうちに実現されていく、というのが理想なのかもしれません。
ですが、ブロックチェーン・仮想通貨の行く先に注目するのであれば、個々の技術やサービスに込められている理念や、そうしたものが実現してこうとしている世界がどのようなものであるのかに思いを致すことが大切なのかなと思います。
こうしたところにも目を向けながら、今後もコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!
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