仮想通貨・ブロックチェーンをめぐるマーケットの健全な発展のためには、法制度が適切に整備されることも重要な要素のひとつですね。
とりわけ、新たな技術とそのサービスに直接関係する法令が存在しない場合には、そうした新たなものに対して造形が深い専門家が、積極的に法整備をリードしていく必要があるのかなと思います。
台湾の立法府である「立法院」のメンバーである立法委員のなかには、仮想通貨・ブロックチェーン・フィンテックなどに強い関心を持つ人々がおり、こうした新しい技術やサービスに対する法整備を着々と進めています。
僕もこれまでにいくつかの動きを記事にしてきましたが、特に代表的な2人の立法委員の動きがここのところ報じられていましたので、まとめて書き留めておきたいと思います。
・許毓仁さんはアメリカでVitalik Buterinと対談
・余宛如さんは「區塊鏈産業自律公約」を共同で発表
・キーパーソンの動きから目が離せません!
台湾のネットニュースサイト「Knowing新聞」は、2018年8月10日に「許毓仁帶領區塊鏈新創引進矽谷資金活水(許毓仁はブロックチェーンスタートアップを連れてシリコンバレーの資金を取り込む)」と題する記事を掲載しました。
国民党の立法委員である許毓仁さんは7月中旬から8月中旬にかけてアメリカに渡ってさまざまな活動を展開しており、そのうちのひとつが台湾のスタートアップをシリコンバレーに同行させるというものだったようです。
これは、許毓仁さんが講師を務めたスタンフォード大学の教育プログラムである「The Draper Hills Summer Fellows Class of 2018」の一環としておこなわれたことが、スタンフォード大学の教育プログラムのページに掲載されています。
「Knowing新聞」の記事には、このとき同行した台湾のスタートアップとして、「Ubitus」の創業者である郭榮昌さん、「Biilabs」の創業者である林弘全さん、そして、「共識科技」の創業者である宋倬榮さんの名前が挙がっています。
これら3つのスタートアップについてはそれぞれ、以下の記事をご参照ください。
なお、この教育プログラムは先に挙げたホームページによれば、スタンフォード大学が「Democracy, Development and the Rule of Law(民主主義、開発、法の支配)」を打ち出す形で毎年開催されるものであり、今回は23の国々から27名のビジネス、政治、非営利組織の代表者らが講師として招聘されたということです。
台湾のニュースサイト「ETToday新聞雲」の記事によれば、許毓仁さんは台湾から招かれた初めての講師として参加し、台湾のブロックチェーン産業の状況と経験について情報共有するとともに、ブロックチェーンを民主的な法の支配や公共的なガバナンスに関する講演をおこなったそうです。
また、このプログラムの終了後には、バークレー大学の学生によって結成されている「BLOCKCHAIN AT BERKELEY」などが主催する「THE STATE OF ETHEREUM : Governance and the future of regulation」というイベントに登壇し、イーサリアムの生みの親であるVitalik Buterinさんと対談したことが、許毓仁さんの公式 Facebookページに掲載されています。
もともと、許毓仁さんはVitalik Buterinさんから「Crypto Congressman」というニックネームを付けられたというエピソードを持つほどの仲だといわれています。
対談の様子は2時間超の動画として許毓仁さんのFacebookページに貼られていますが、僕は見れていません…
ただ、同じページに書かれている以下のような方向性は、これからの台湾における法整備に直接関わる立法委員のコメントとして注目に値するのではないかと思います。
在兩年內,我們的政府、立法者、與監管部們都能打開思維,看見區塊鏈所帶來的社會、經濟價值,理解其所帶來的,不論是好處或是壞處,都能成為改變未來社會與發展的重要元素。
(2年のうちに、わたしたち政府、立法する者、所管部門はみな考え方を示し、ブロックチェーンがもたらす社会や経済的価値を見据え、そのもたらすところを理解しうる。良いか悪いかにかかわらず、それが社会と発展の未来を変える重要な要素となりうる)
台湾では今年に入ってから、仮想通貨・ブロックチェーンをめぐる法整備の議論はいろいろと進められてきていますが、この2年のうちに具体的な法制度実現を目指して動いていることが、この発言から垣間見えるように思います。
台湾のニュースサイト「ETToday新聞雲」に掲載された記事によると、2018年8月10日に、立法委員の余宛如さんと、「中華民國全國商業總會(商總)」、「亞太區塊鏈發展協會(Apac Blockchain Development Association、アジア太平洋ブロックチェーン発展協会)」、さらに7つの仮想通貨取引所と合同で、「區塊鏈産業自律公約(ブロックチェーン業界自主ガイドライン)」を作成・発表したそうです。
民進党の立法委員である余宛如さんは、たとえば以下の記事でも触れたように、許毓仁さんと同様に台湾の仮想通貨・ブロックチェーン関連の法制度をめぐる議論のなかでは、必ず名前が挙げられる方です。
また、「中華民國全國商業總會」は日本でいう商工会議所に該当するような全国組織で、以下の記事で言及しました。
さらに、「亞太區塊鏈發展協會」は公式ウェブサイトによると、2017年12月に結成された、アジア太平洋地域のブロックチェーン発展に寄与する非営利組織ということで、以下の仮想通貨取引所が団体会員として加わっています。
BITFINEX、COBINHOOD、BitoPro、BITPOINT Taiwan、KTrade、TiDeal、BitAsiaEX
これら7つの取引所が、先の記事に挙げられているガイドラインを共同で作成した取引所になります。
これらの取引所については、以下の記事をご参照ください。
また、今回、こうした動きが出てきた背景として、すでに台湾では仮想通貨交換業者による自律組織(SRO)が結成されていることを挙げることができます。
こうした動きを背景に、余宛如さんは自らの公式Facebookページのなかで、今回のガイドライン作成・公表を以下のように位置づけています。
不只展現了產業的集體共識,也是對於消費者的保障和建立信任,往前跨出了一大步。(これは産業界の集団的なコンセンサスとして現れただけではなく、消費者に対する保障と信用形成としても、大きな一歩を踏み出したものである)
上に挙げたSROの記事でも触れましたが、台湾におけるSRO結成の動きは、立法委員を中心とする法整備の動向と連動する形で進められていますので、今回のガイドラインの作成も、業界内だけにとどまるものではなく、法整備の動きと連動、もしくは影響を与えうるものとして位置づけられていることがうかがえますね。
このガイドラインの内容については、「亞太區塊鏈發展協會」のウェブサイトに公表されていますので、またあらためて記事にしたいと思います。
(2018年8月12日加筆、ガイドラインの内容を次の記事にまとめました!)
今回、記事で取り上げたふたりのこれまでの動きを見てみると、許毓仁さんは台湾内での動きとともに、国際的なフィールドに出て、台湾のブロックチェーン・仮想通貨に関する情報発信や人脈形成などを活発におこなっている印象があります。
他方、余宛如さんは台湾内でのブロックチェーン・仮想通貨に関する法整備の動きに、積極的かつ深い形で関わっているように感じます。
それぞれに所属政党が違うなかで、ブロックチェーン・仮想通貨に対する立場の違いもおそらくあるでしょうけれど、頻繁に議論をおこない、社会に訴えている様子からは、どちらも健全な市場・健全な業界発展を目指して前向きに活動をおこなっていることがうかがえます。
台湾では今年末から来年にかけて、より具体的な法整備の動きがあると言われていますので、こうしたキーパーソンの動きはより一層注目されてくることと思います。
仮想通貨・ブロックチェーンをめぐる動きはスピーディに流れていきますから、法整備をめぐる動きも日々いろいろな情報が飛び交っています。
すべての情報をフォローすることはなかなか難しいのですが、出来る限りこうした情報もコツコツと追いかけていきたいと思います!
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