Twitterのタイムラインを眺めていると、MALISさんの以下のツイートが目に留まりました。
僕も気になっていたので、「界隈のオタクな皆様」からの情報提供を待っていたのですが、なぜか反応なし…
この「仮想通貨Watch」の記事が公開されてから1か月。
続報がないわけないのですが、もう日本では関心が薄れてしまったのでしょうか…
こういう時は、現地情報を自分で探すほかない!
ということで、2020年に入ってからの中国語で流通している情報を検索してみたなかで、目に留まった記事を少しだけ書き留めておきたいと思います。
・中国人民銀行は研究段階をほぼ終了?
・中国はデジタル金融市場の激戦地となる?
・現地の情報発信に注目!
台湾のブロックチェーン専門ネットメディア「動區BlockTempo」は、中国人民銀行が2020年1月11日にWeChat(微信)の公式アカウントで「2019年中央銀行リストーフィンテック(盘点央行的2019-金融科技)」を公表し、そのなかで「法定デジタル貨幣(法定数字货币)」について言及されていることを報じています。
記事にはリストへのリンクが貼ってあり、以下のリストには確かに「法定デジタル通貨」について、以下のような記述がありました。
二層構造による管理、M0代替、匿名可能性を堅持するという前提のもと、法定デジタル貨幣の全体設計、基準の設定、機能の開発、実装実験などの作業を基本的にはすでに終えている。/デジタル貨幣研究を確実に展開。デジタル貨幣の国際的な最新動向を追跡調査。
(在堅持雙層運營、M0 替代、可匿名的前提下,基本上已經完成了法定數字貨幣的頂層設計、標準制定、功能研發和聯調測試等工作。/扎实开展数字货币研究。跟踪研究数字货币国际前沿信息。)
このなかで、「二層構造による管理」とは、MALISさんが引用された記事中にもあった、中国人民銀行/商業銀行/顧客という形で貨幣の流通をおこなう形のことを指し、「M0代替」とは、法定通貨の代替としてデジタル貨幣を使用するという方針のことを指しています。
こうした方針から、いわゆる「デジタル人民元」「DC/EP」は、仮想通貨でもステーブルコイン でもないというイメージで構想されていることがうかがえます。
今まで日本で報じられている「デジタル人民元」に関する情報は、どちらかというと個別のキーパーソンがいろんな形で言及したという形で報じられていましたが、この報道は中国人民銀行のオフィシャルな情報を基に報じられています。
こうした方針を中国人民銀行が、自らの発信としてオフィシャルに示したということが注目されますね。
なお、中国人民銀行は新年早々の2020年1月2日・3日に北京で「業務会議(工作会议)」を開催し、2020年の業務目標のなかで、「法定デジタル貨幣の研究開発を継続的かつ着実に進めていく(继续稳步推进法定数字货币研发)」に言及しています。
今後、「デジタル人民元」が実際にどのような形で出てくるかはまだわかりませんが、これからの動向に関しては中国人民銀行から確実な情報が出てくるかなという感じがしますね。
こうした動向は中国の政府メディア「人民日報」のニュースサイト「人民网」でもたびたび報じられています。
たとえば、2019年12月30日に掲載された以下の記事では、中国人民銀行の動向を以下のように報じています。
中国人民銀行はデジタル貨幣をこれからの最も重要なインフラのひとつと捉え、法定デジタル貨幣の研究開発を積極的に進めてきた。2014年にデジタル貨幣の先駆的研究を開始し、2016年にデジタル貨幣研究所を創設、2017年に専門的なワーキンググループが作られ、デジタル貨幣の研究開発テストをスタートした。
(央行将数字货币作为未来最重要的基础设施之一,积极开展法定数字货币研发工作。2014年启动数字货币前瞻性研究,2016年成立数字货币研究所,2017年成立专项工作组启动数字货币研发试验。)
ここからは少なくとも、中国人民銀行はこの5年間に「デジタル人民元」につながるデジタル貨幣の研究を進めてきたことがわかりますね。
こうした背景のもと、中国の金融界からは、これから中国が「デジタル金融市場」の激戦地になっていくという予測も語られています。
中国の経済紙「中国経済時報(中国经济时报)」のニュースサイト「中国経済ニュースネット(中国经济新闻网)」に2020年1月21日に掲載された記事によると、「中国インターネット金融協会ブロックチェーンワーキンググループリーダー(中国互联网金融协会区块链工作组组长)」の李礼輝(李礼辉)さんは、ブロックチェーンに関するシンポジウムに登壇し、「中国は、すでに世界規模で最大のデジタル金融市場となっている(中国,已经成为了全球规模最大的数字金融市场)」と述べたそうです。
また、同じ記事のなかで、「中関村ブロックチェーンセキュリティ研究院共同理事長(中关村区块链安全研究院联席理事长)」の楊帆(杨帆)さんは、以下のように語ったと報じられています。
世界ではすでに二十数か国で法定デジタル通貨の発行が考えられており、中国、EU、アメリカの三大中央銀行が基本的な世界の均衡をすでに形成しています。デジタル法定通貨の勢力図としては、EUがビジネスサイドに注力し、中国はカスタマーサイドに注力し、FBIの考え方はfacebookが提起したLibraに近い。
(全球已有二十多个国家拟发行法定数字货币,中国、欧盟、美国三大央行均衡格局已基本形成。在数字法币的布局上,欧盟偏重B端,中国偏重C端,而美联储的思路则与Facebook发起的Libra相近。)
デジタル貨幣を取り巻く状況が実際にどうであるかということはともかく、ここには中国のキーパーソンたちが、おそらくは「デジタル人民元」の位置づけを想定しながら、中国とヨーロッパ・アメリカのデジタル貨幣を取り巻くパワーバランスをどう捉えているか?ということがシンプルに示されているといえますね。
中国の「デジタル人民元」の構想は、少なくともここ5年間の着実な研究開発の状況を背景としながら、欧米諸国とのパワーバランスを想定しながら、その実施の時期と方法を見定めている段階にあるのかなという印象を持ちますね。
ごく簡単に中国語で発信されている情報を検索しただけですが、その範囲でも、2020年に入ってからも継続して「デジタル人民元」に関する情報が発信されていることがわかります。
中国語圏の情報を検索するキーワードとしては、「数字人民币」「数位人民币」もしくは「數字人民幣」「數位人民幣」あたりで検索すると、いろいろな情報が出てきます。
日本語の情報で逐一、こうした動向を細かくキャッチすることは難しいと思いますが、2020年は大きな動きがありそうなので、その時には細やかな情報が出てくるかもしれません。
中国のこうした動きは世界的な動向にも大きな影響を与えると思いますので、できる限りコツコツと情報を追いかけていきたいと思います!