(台北・ビジネス街の昼下がり。台北は緑も多いですよ)
ブロックチェーンを含めた新たな技術を活用したFinTechは、既存の金融システムを変えていくばかりではなく、新しいタイプの金融サービスを生み出す原動力にもなっていますね。
しかも、ひとつの技術を導入するだけではなく、ブロックチェーン、AI、IoT、ビッグデータなどを複数活用することによって、多様なサービスを実現しようと試みる取り組みが現れてきています。
今回は、こうしたFinTechを活用した「金融仲介プラットフォーム」が台湾で正式運用を開始したということで、少し書き留めておきたいと思います。
・台湾でSuperBankが正式運用を開始
・あらゆるフィンテックの融合?
・B2Cでつながる金融の理想形?
台湾の経済紙「經濟日報」が2019年1月15日に掲載した記事によると、台湾で初めてとなる「AI金融仲介プラットフォーム」である「SuperBank(超級銀行)」が同日付で正式運用を開始したそうです。
記事によると、このプラットフォームは台湾で2015年に認可された「オンラインローン(線上貸款)」のマッチングをシンプルに実現することを目指しているそうです。
プラットフォームの特徴については、以下のようにまとめられています。
SuperBankはサイト上で比較ができ、ワンタッチで処理が済むサービスを提供し、人々は登録、資料提供、商談の3ステップで申請手続きを完了することができる。資料作成時に必要な投資商品のタイプ、金額、期限を選択するだけで、台湾中の各銀行のローン上限、利率、毎月の返済額などの資料が一目瞭然で、自分にぴったりの投資計画をスピーディに得ることができる。
(SuperBank提供一站比較、一鍵辦理的服務,民眾僅需註冊、提交資料、商務洽談三步驟就能完成申辦手續。填寫資料時也只要選擇所需的理財產品類型、金額、期限後,就能對全台各銀行的貸款額度、利率、每月還款金額等資料一目了然,快速挑選最適合自己的理財計劃。)
SuperBankの公式ウェブサイトを見ると、クレジットローン(信用貸款)、住宅ローン(房屋貸款)、クレジットカード(信用卡)、カーローン(汽車貸款)などの項目に、銀行名とローン限度、利率、ローン期間が一覧できるようになっています。
リストアップされている銀行は、中国信託商業銀行、台新銀行、國泰世華銀行、合作金庫銀行など、台湾の大手銀行かつフィンテックの導入に積極的な銀行が並んでいます。
公式サイトには、「完全無料(完全免費)」「スピードマッチング(快速媒合)」「サービス第一(服務第一)」といったメリットが掲げられていて、ユーザーへの訴求力は高いのではないかと感じます。
実際、上に挙げた記事によれば、「SuperBankは昨年12月にオープンしてから今日まで、すでに7割を超える銀行投資商品を扱っていて、人々の注目を急速に集めている(SuperBank於去年12月上線迄今,已經有超過7成的銀行理財商品,快速獲得民眾的青睞)」と報じられています。
新たなユーザーエクスペリエンスの提供といったあたりが注目を集めているのかもしれませんね。
「經濟日報」の記事によれば、SuperBankは2018年5月に台湾で特許を取得してから、着々とサービス構築を進めてきたようです。
その後、2018年12月には「台灣物聯網產業技術協會(Taiwan IOT Technology and Industry Assication,TwIoTA)」が開催したコンテストで、金賞にあたる「金龍獎」を獲得し、一気に注目を集めるに至ったということです。
TwIoTAは公式ウェブサイトによれば、2016年12月に、「台湾のIoT新興産業の中心的競争力を高める(提升台灣在物聯網新興產業的核心競爭力)」ために創設された業界団体で、IoT開発業者に加えて、半導体開発、ハードウェア・ソフトウェア開発、アプリ開発といった広範な企業が会員として名を連ねているようです。
台湾のハイテク産業の中心である半導体企業や、アプリ開発・IoTといった最先端企業が参加する業界団体のバックアップを受ける形で注目されているSuperBankの取り組みは、多様な技術が活用されているようです。
台湾の投資ニュースサイト「財訊快報」に掲載された記事は、SuperBankの技術的な側面を以下のようにまとめています。
SuperBankはAIやビッグデータを活用して金融取引マッチングシステムを構築し、特定の要求に対して台湾全土の各投資商品を即時に比較し、個人の財務状況にぴったりの投資商品を即座にレコメンドすることができる。
(SuperBank運用AI、大數據打造金融交易媒合系統,能針對特定需求,即時比較全台各種理財商品,即時推薦最適合個人財務狀況的產品)
同時に、SuperBankはブロックチェーン技術を採用し、標準SSLを使って送信資料を暗号化し、固定オフサイトバックアップデータベースのバックアップ計画を毎日作成して、顧客の個人資産とオンライン資産を完全に保護する。
(同時,SuperBank採用區塊鏈技術,並使用標準SSL來加密傳輸資料,每天還有固定異地備份資料庫的備援計畫,以完整保護客戶個資及線上資產。)
AI、ビッグデータ、ブロックチェーンというそれぞれの技術の特性を組み合わせながら、シンプルなUIによって顧客の需要に応えようという姿勢が垣間見えますね。
また、この記事のなかで、SuperBankの創業者でCEOの朱益弘さんは、これからの事業展開について以下のように述べています。
SuperBankは次にTwIoTAと協力して、IoTやブロックチェーンと結びついた、まったく新しい金融商品を開発し、銀行や国内外の投資機関に提供することで、融資、投資、M&Aの提案をおこなっていく。
(SuperBank接下來將與台灣物聯網協會合作,將結合物聯網、區塊鏈技術來發展全新的金融商品,以提供給銀行或國內外投資機構做為融資、投資、併購的建議。)
IoTやブロックチェーンを活用した「まったく新しい金融商品」とはどのようなものか…これからの展開が気になります!
台湾では初めてとなる金融仲介プラットフォームの取り組みは、銀行と個人それぞれのニーズを的確に結びつける「B2C」サービスのひとつの形を提供しているように感じます。
しかも、ここにAIやビッグデータを介在させることによって、よりシームレスかつスピーディにお金が回るシステムの実現が目指されていることに期待感が高まります。
もちろん、台湾は歴史的・社会的に投資活動に積極的な人々が多いので、こうしたサービスは受け入れられやすいということがあるかもしれません。
ただ、それ以上に、ブロックチェーンを含むFinTechを活用して実現を目指している「新たな金融商品の提供」というビジョンが、より一層期待感を抱かせるものであるようにも感じます。
新たな技術を活用して、どのようなサービスが開発されていくのか?
これからの動きをコツコツと追いかけていきたいと思います!