(台北の街角でまあまあ見かける「ガチャガチャ」。中国語では「扭蛋機」で言います。)
ブロックチェーンを活用した技術やサービスの開発は、世界各地で着々と進んでいますね。
台湾・香港・中国の動きを追いかけていても、様々なサービスが開発され、試験運用の段階まで進んでいるようなものが多く見られます。
ただ、そこから順調に正式運用へと進んでいくようなニュースを目にすることはまだまだ多くありません。
今回は、過去に取り上げた台湾でのブロックチェーンに関する取り組みが商用化されるというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・財金公司の「外部確認ブロックチェーン」が商用化⁉︎
・財金公司の「五大経営成果」のひとつがブロックチェーン⁉︎
・ブロックチェーンの社会実装は進む?
台湾のIT系ニュースサイト「iThome」が2018年11月19日に掲載した記事によると、金融分野の官民協同組織である「財金公司」は、同日に開催した「金融情報システム定例年会および成果発表会(金融資訊系統年會暨成果發表會)」の場で、同組織が開発した「金融ブロックチェーン外部確認サービス(金融區塊鏈函證服務)」を2018年12月に商用化することを公表したということです。
以下の記事に書き留めていますが、財金公司は1998年に、政府機関である「財政部」と公的金融機関および民間金融機関の共同出資によって株式会社化された組織であり、金融機関へのフィンテック(金融科技)の導入サポートなどを主な業務としています。
今回公表された「金融ブロックチェーン外部確認サービス」については、この記事に書きましたとおり、今年7月に台湾内の20の銀行と国際的な大手会計事務所との提携によって試験運用が始まっていました。
12月に商用化されるということは、わずか5か月の試験運用を経て実用化にこぎつけるということになりますね。
財金公司は2016年からブロックチェーンの開発に関する専門委員会を設置し、2017年には金融機関が乗り入れることができるブロックチェーンプラットフォームを開発するなど、早い時期から技術開発に乗り出していました。
こうした取り組みが、今まさに結実しているという感じがします。
iThomeの記事によれば、12月のサービス開始時には30の金融機関と15の会計事務所が参加予定ということですから、ここからどれほど広がっていくか楽しみですね。
今回のサービス商用化に関する情報は、財金公司による成果発表会の場で「五大經營成果」のひとつとして公表されたということです。
台湾の経済紙「經濟日報」のウェブサイトに掲載された記事によると、この発表会の場で公表された「五大經營成果」は、以下の5つが挙げられたようです。
1、國家級支付品牌「台灣Pay」
2、全球首創「金融區塊鏈函證服務」
3、「雲端繳費(稅)平台」服務
4、「金融資安資訊分享與分析中心(F-ISAC)」
5、「統一發票」多元兌獎服務
ブロックチェーンを活用したサービスは2番目に挙げられています。
ひとつめに挙げられている「台灣Pay」は、台湾の財政を担う行政機関である「財政部」が財金公司や台湾の銀行と提携して開発を進めたスマホ決済サービスです。
2017年にサービスが開始され、スマホ決済の統一化を目指して普及が推進されています。
また、3番目に挙がっている「クラウド支払い(納税)プラットフォーム(雲端繳費(稅)平台)」は「台灣Pay」と関連づけられているサービスで、QRコードによる納税や各種公共料金の支払いができるというもののようです。
一般の人々へのサービスという点では、5番目に挙がっている「統一レシート(統一發票)」の賞金獲得方法の多元化も、ユーザーエクスペリエンスの向上を図るものです。
これは少し説明が必要だと思うのですが、まず、「統一レシート」というのは、台湾では各小売店が発行している「レシート」は政府によってすべて統一されていて、通し番号が付されています。
レシートを統一することにより、小売店による「脱税」を防ぐという意味合いがあるのですが、そもそもレシートが発行されなければお金の流れを確認することができません。
そこで、小売店が確実にレシートを発行するように、このレシートに付された通し番号を「宝くじ」の番号として、定期的に賞金が当たる仕組みになっています。
こうした仕組みによって、小売店で商品を購入した消費者がレシートを求めるようになるので、小売店はレシートを発行せざるを得ないという状況になっています。
賞金は最高で1,000万台湾元(約3,700万円)ですが、最もよく当たる6等でも200元(約740円)ですから、日々買い物をしてレシートを溜め込んでいると、わりと当たったりします。
当選した賞金は、当選レシートを郵便局に持っていけば受け取ることができるのですが、財金公司の上記の取り組みはこの賞金受領をスマホで完結できるようにしようということのようです。
こうした台湾の人々の生活に浸透したサービスと並んで、ブロックチェーンに関する取り組みが「經營成果」として挙げられているということから、財金公司は政府機関や金融機関を巻き込みながら、これからもブロックチェーンの活用に尽力していく方向性であることがうかがえますね。
財金公司がブロックチェーンを活用して商用化を目指している今回のサービスは、金融機関内部の業務効率化に役立てられるもので、表面的には多くのユーザーに関わりのあるものではないかもしれません。
ただ、同じ財金公司が「五大經營成果」としてこのサービスとともに掲げている各種サービスは、これから広く社会実装が期待されているもの、あるいはもう既に社会の中に浸透しているサービスのさらなる拡充につながるものです。
当面はそれぞれのサービスは別個のものとして位置づけられていると思いますが、これから各種のサービス間でコラボレーションの動きが考えられる可能性もあるのではないかと思います。
実際に、QRコードを活用したサービスをブロックチェーン上に構築されたプラットフォーム上で運用していこうという取り組みは既に始まっています。
こうした取り組みが決済サービスに組み込まれるまでには技術的なハードルや規制の問題があるのかもしれませんが、台湾社会の全体的な動きとしては、こうしたサービスが拡大していく方向なのではないのかなと感じています。
これからの動きに注目しながら、情報をコツコツと追いかけていきたいと思います!