(少しぼやけていますが、台湾に着陸するときの夜景です)
ブロックチェーンは実現する未来には多くの人々が期待を寄せていますね。
僕も含めて、今の時点でALISに参加している方々もそうだろうと思います。
多くの人々がこの新たな技術に期待を寄せているからこそ、そこにかかわりたいと考える人々が多く現れ、そうした人々によってさまざまなサービスが生み出され、そこにまた多くの人々が集まっていく…というプロセスが生まれているんだと感じます。
だからこそ、世界各国の政府もその対応についてさまざまな議論をおこない、必要な法整備を進め、既存の社会システムのなかからもこの新たな技術に参加しようという動きが生まれてくるんだと思います。
今回は、そうした動きのひとつとして、ブロックチェーン関連企業に対する投資を専門におこなう台湾の金融機関について、少し書き留めておきたいと思います。
・「寶島金融」は、なぜ「寶島」?
・CROはGoogleやRippleの経験者!?
・台湾のブロックチェーン関係者が集結!?
・事業展開はまだまだこれから…
先日、連載で記事を書いた「2018 Asia Blockchain Summit」の情報を探していたときに、少し目に付いたインタビュー記事がありました。
それが、台湾のニュースサイト「今日新聞NowNews」に2018年7月3日に掲載された、「寶島金融(Formosa Financial)」の共同創業者でありCRO(Chief Revenur Officer)であるRyan Terribiliniさんへのインタビューでした。
ちなみに、Ryanさん、後の記事に出てきますが、中国名を「田萊恩」と名乗っているようです。
「萊恩」は「Ryan」の当て字、「田」は「Terribilini」のニュアンスからでしょうか。中国語名を持っているというのは、中華圏への親しみを示しているように感じますね。
この方の話の内容に入る前に、金融機関名の「寶島金融」について少しだけ触れたいと思います。
この「寶島」という名称は、16世紀に台湾島にやってきたポルトガル人が、この島を見て「Ilha Formosa!」と呼んだことに由来しています。
寶島金融のホワイトペーパー(白皮書)にも、「Ilha Formosa, meaning “beautiful island”」と書かれているように、台湾のことを示す別名として「Formosa」、もしくは「美麗島」、「寶島」と呼ぶことがあります。
「美麗島」という言葉が「Formosa」の訳語としては一般的なのですが、この言葉には歴史的に、政治色を帯びた意味合いが重ねられてきた経緯もあります。
(興味のある方は、たとえば「美麗島事件」などを検索してみてください。台湾の「民主化」につながる動きを感じてもらえると思います)
なので、「Formosa Financial」の中国語名には「美麗島金融」ではなく、「寶島金融」という名称が採用されたのかなと、勝手に推測しています(^^;
上に挙げたRyanさんへのインタビュー記事は非常にシンプルなものですが、以下のようなコメントが注目に値するように感じました。
其實台灣腳步並不晚,在領先的半導體技術撐腰下,依然極具優勢,而且如果想擺脫代工現況,台灣應該把金融和科技合併考量進一步發展,迅速與區塊鏈結合,就能躍升世界舞台。
(実は(ブロックチェーンに対する)台湾のあゆみは必ずしも遅いわけではなく、フロントランナーである半導体技術のもとで、依然としてアドバンテージがあるし、もし下請けであるという状況から脱したいと思うならば、台湾は金融と科学技術をもう一歩発展させることを考えるべきであり、速やかにブロックチェーンと繋がれば、世界の舞台に飛び出していくことができるだろう)
台湾企業は近年、独自のブランドを持って世界の市場へと参加するようになってきましたが、上に挙げられている「半導体技術」も含めて、企業の多くはICT産業のEMS(Electronics Manufacturing Service)やOEM(Original Equipment Manufacturer)として発展してきました。
(シャープを買収した鴻海などもその代表例ですね)
Ryanさんはこうした台湾企業の特質を踏まえたうえで、その脱却のためには「金融」および「ブロックチェーン」との繋がりを考慮することを提案しています。
Ryanさんのこうした提案には、RyanさんがこれまでにGoogleやRippleで働いてきたという経験が影響しているようです。
台湾のニュースサイト「大成報」に掲載されたRyanさんのインタビュー記事には、このあたりの経歴とブロックチェーンとの関係性が語られています。
まず、Googleとのかかわりは、2012年にAndroidのグループとして台湾に派遣され、中国大陸や日本、韓国におけるGoogle Playの営業運営グループの一員として仕事をしていたそうです。
このときにビットコインとの接点もできたということで、台湾やブロックチェーンとの繋がりはこの時にできたということのようですね。
また、Rippleの在職時には世界中の金融機関と接触するポジションにいたということで、金融機関が各国それぞれに異なる金融環境の中でどのように事業展開をしているかということについての理解を深めたということです。
「Ripple的創辦人Chris Larsen等人一起工作(Rippleの創業者であるChris Larsenたちと一緒に仕事をしていた)」ということがわざわざ書かれていることをどう捉えればいいのか…という感じはしましたが(^^;
「台湾×ブロックチェーン×金融」という現在のポジションに、GoogleとRippleの経験が活かされていることがわかりますね。
寶島金融の公式ウェブサイトには運営チームとアドバイザーの人々が紹介されていますが、そのなかで、アドバイザーには台湾のブロックチェーン業界の多様なキーパーソンの名前が並んでいます。
たとえば、黄立成(Jefferey Huang)さんは、ライブ配信アプリを提供している「17 直播(17media)」や、「ソーシャルマイニング」を提唱している「Mithril」の創設者として注目を集めています。
(Mithrilについては以下の記事にまとめています)
その「17 直播」のエンジニアでありSVP(Senior Vice President)であるKevin Liさんもアドバイザーの一員のようです(中国語名はわかりませんでした(^^;)
また、台湾の仮想通貨取引所COBINHOODの共同創業者でCTOの黄偉寧さん、
台湾のスタートアップアクセラレーター「AppWorks」の共同創業者である林之晨(Jamie Lin)さん、
ブロックチェーンへの関心も高い中国信託商業銀行のSEVC(Senior Executive Vice President)の劉奕成さんなどの名前が並んでいます。
COBINHOOD、AppWorks、中国信託商業銀行の取り組みについては、以下の記事にまとめています。
こうした人々がかかわっているということも、寶島金融に対する信用度や注目度が高まっている一因であるように感じます。
上に挙げたホワイトペーパーに掲げられたロードマップによれば、プラットフォームの開発を始めたのが2018年第一四半期、プラットフォームの第一段階の開発完了と台湾の「レギュラトリー・サンドボックス」への申請が2018年第二四半期ということですから、事業展開はまだまだこれからという段階のようです。
(なお、台湾の「レギュラトリー・サンドボックス」については、以下の記事に少しまとめています)
ただ、今の段階で各種メディアに記事が出ているということは、それだけ注目度も高いということだと思います。
その背景には、寶島金融に集っている人々への期待感ということもあるでしょうけれど、それ以上に、台湾社会の中にブロックチェーンに対する注目度が上がっているということもあるのだろうと思います。
僕も記事にした「2018 Asia Blockchain Summit」に、延べ数ですが4,000人を超える来場者があったと伝えられていますし、その様子は連日、台湾内のさまざまなメディアで報じられていました。
このサミットの呼びかけ人である許毓仁さんが、台湾を「區塊鏈之島(Blockchain Island)」にしようという宣言をするような状況の中で、寶島金融の果たす役割は大きいものになっていくのではないかと感じています。
その動きはこれから…具体的な動向をこれからもコツコツと追いかけていきたいと思います!
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