ブロックチェーンは基層技術として、もうすでにいろいろな分野への応用が世界各地で試みられていますね。
医療分野への応用もそのひとつで、台湾でも病歴の共有化や分散型医療の実現を目指した事業が展開されています。
今回は、台湾のスタートアップが医療サービスのスマート化に関する事業展開を考えているというニュースを目にしましたので、書き留めておきたいと思います。
・meltenが打ち出す「スマート病室」の可能性?
・そもそも、「スマート病室」って?
・「スマート病室」から医療システムの革新へ?
台湾の経済紙「經濟日報」のニュースサイトに2018年12月5日に掲載された記事によると、台湾のスタートアップである「美爾敦(melten)」が投資会社の「源鉑資本(Kyber Capital)」と共同で開催したシンポジウムで、「スマート病室」に関する事業展開について明らかにしたということです。
記事によれば、meltenは2013年に医療機器、とりわけ「スマートヘルスケアIoT(智慧醫療物聯網)」の開発を進めているスタートアップだということです。
また、Kyber Capitalは公式ウェブサイトによれば台湾のブロックチェーン関連企業を中心に投資している投資会社で、「經濟日報」の記事によれば、2016年からmeltenへの投資をおこなっているということです。
この投資会社を創設した胡一天さんはmeltenの事業の将来性について、以下のように考えているそうです。
meltenがヘルスケアビッグデータの基礎建設を進めるチャンスを持っており、その事業は自然と長期ケアや在宅看護、さらに僻地医療のネットワークへと広がっていき、InsTechやFinovationと結びつけば大きなビジネスチャンスがあると見ている。
(他看好美爾敦,有機會成為醫療大數據基礎建設,還能自然延伸到長期照顧、居家看戶,甚至偏鄉地區機動醫療網點的部屬,若能再結合保險科技與金融創新,商機巨大。)
「医療×IoT」によるスマート化には、多様な関連分野への応用と新たな動向へと結びついていく潜在力が見出されているようですね。
「經濟日報」の記事には、meltenが展開しようとしている「スマート病室」について、以下のように説明されています。
彼らは6つのスマート病室ソリューションを進めており、「H20(Hospital and Home, One Platform)」を自主開発し、ブロックチェーン技術や病床スマート統合デバイスなどの技術を、エッジコンピューティング、IoT技術、ブルートゥース、Wifiなどの接続機能と組み合わせ、新たなヘルスケアパラダイムを構築することが期待されている。
(他們引進六項智慧病房解決方案,自主研發「H20(Hospital and Home, One Platform)」區塊鏈技術、床邊智慧整合型裝置等技術,並結合邊緣運算、物聯網技術、藍牙、WiFi等連線能力,期許建立新型態的醫療樣態。)
この説明からは、病室にあるさまざまな機器・デバイスを多様なネットワークと結びつけることによって、新たな医療サービスを提供することが目指されていることがうかがえますね。
meltenの公式ウェブサイトにはこのソリューションに関する具体的なイメージが、以下の項目に分けて解説されています。
護理師呼叫系統(Nurse Call System)
生理訊號智慧監控系統(Smart Vital Sign Monitoring System)
智慧輸液系統(Smart IV System)
異常離床與室內定位系統(Abnormal Bed Absence and Indoor Positioning System)
SCADA行動護理系統(SCADA Mobile Nursing System)
バイタルサインのモニタリング、輸血、患者さんの位置情報、ナースシステムなどをネットワークに接続していく様子がうかがえ、そうしたIoTの中心的なデバイスとして、1番目に挙がっている「ナースコールシステム」が位置づけられていることがわかります。
そして、こうしたシステムにブロックチェーンを組み込むことによって、以下のとおり、医療データの安全性とプライバシー確保を実現することが意図されているようです。
ブロックチェーン技術を利用して医療情報の安全性を強固にし、医療情報の非改竄性を完全に保障することで、病歴と医療記録の真正性を保障することができ、電子カルテの流動性を確保することで、患者さんにさらなるシームレスなケアエクスペリエンスを提供する。
(利用區塊鏈技術鞏固醫療資訊安全,可完全保證醫療資訊不可被竄改,以保障病患資料與就醫記錄之完整及真實性,維護電子病歷流通性,以提供患者更無縫的照護體驗。)
「IoT×ブロックチェーン」の可能性が、医療サービスの向上に資するということが、具体的な技術開発によって証明されようとしていることが垣間見えて、これからの事業展開が楽しみですね!
冒頭に挙げた「經濟日報」の記事によれば、meltenは「スマート病室」の構築をさらに発展させる形で、将来的には「スマートヘルスケアサービスイノベーションの基礎建設(智慧醫療服務創新的基礎建設)」へとつなげていくということのようです。
「經濟日報」に掲載された別の記事には、こうした将来像について端的に「スマートヘルスケアエコシステム(智慧醫療生態系統)」の構築を目指しているとあります。
文中に挙げたKyber Capitalの胡一天さんのコメントにもありましたように、meltenがまず実現しようとしている病室のデバイスの改善・スマート化は、多様な医療分野の改善へとつながっていく可能性があるようです。
それがトータルとして医療システム全体へと広がっていくイメージが描かれているのかもしれません。
meltenの公式サイトには、提携病院として台湾内の10の大手病院の名前が挙げられています。
こうした病院へのサービス導入とその活用如何に、ここに描かれているようなエコシステムの実現がかかっているように感じます。
これからのサービス展開の動きについても、コツコツと情報を追いかけていきたいと思います!