職場の先輩を過去に亡くしたことがある。羽賀誠という人だ。信託銀行系の投資顧問会社でわたしが働いていた当時、野村アセットマネジメントから中途入社してきたファンドマネージャーだった。電機業界を中心にわたしがリサーチを担当し、羽賀さんがファンドを運用する二人三脚は、これまでのキャリアの中でも特に思い出に残る時間であった。
わたしが信託銀行のアナリストチームに移った後、羽賀さんはヘッジファンドに転職したり、自分で運用会社を立ち上げたりと紆余曲折を経て、最終的にはマネックス証券のストラテジストとなった。だが、会社が変わっても公私にわたって付き合いを密に続けていた。
羽賀さんはもともと健康に気を配る性質ではまったくなく、酒を飲みタバコを吸い、夜は渋谷か六本木に入り浸っているような人物であった。そこに加えて、個人投資家を相手にみずからの投資判断を表明するストレスとプレッシャーにさらされた結果、2010年2月19日の金曜日、早朝のオフィスで心筋梗塞に倒れた。仕事も遊びも常に全力で向き合う情熱的な男性であった。そういった人間に魅かれるところがわたしにはあるらしい。
その羽賀さんが亡くなって今日で10年。亡くなった年齢の46歳をわたしも迎えた。おかげさまで健康診断はほぼA判定、健康すぎると周囲から逆に揶揄されるくらい健康であり、羽賀さんの年齢を越えることができそうだ。しかし、アナリストとしての実力は謙遜ではなくまだ未熟である。「羽賀さんが運用するファンドのパフォーマンスに貢献できるアナリストに成長できたでしょうか」。今でも毎日問いかけている。