塾はなぜ存在しているのだろう?(上)
私はアメリカのユタ州、ローガンにあるローガン中学校で教師をしていたことがある。その町には塾はなかった。大学受験のための予備校もなかった。
「なぜ、アメリカには塾や予備校が存在しないのか?」
日本には、どんな小さな町にも塾がある。何が違うのだろう?
それは、アメリカと日本では価値観が違うからだ。ローガン中学校の生徒に将来どうしたいのか尋ねると
「ビル・ゲイツやスティーブジョブズのようになりたい」
と言う子が多かった。ガレージの一角で自分の好きなことをやりながら、世界的な大企業を作り上げた。そんな姿がカッコイイ、憧れなんだそうだ。
日本はどうか。自分の塾生に尋ねると
「トヨタのような大企業に就職したい」
という子が多い。寄らば大樹の陰らしい。ご存じのように、大企業に就職するには学歴フィルターを通り抜ける必要がある。
国内における大企業の割合は、約0.3%。 国内にある企業の総数は421万社ですから、「大企業数は約0.3%で、およそ1.2万社」「大企業以外の中小企業は約99.7%で、およそ419.8万社」と算出できます。 こうした数字から見ると、日本国内では圧倒的に中小企業が多いと分かります。
ここは三重県の北の果ての「いなべ市」。私はこの町の生まれ育ち。地元の北勢中学校から四日市高校に合格できるのは毎年上位の2%程度だ。その四日市高校から東大、京大、阪大、名大など旧帝に合格できるのは上位の50番くらいまでの15%程度。
つまり、いなべ市民の実感では2%の15%だから0.3%。ピッタリ大企業の割合に一致する。
こんな熾烈な競争になると、学校の指導だけでは勝ち抜くのはムリと考えるのは自然のことだ。学校の教師が頼りないことは中学生の時に気づいた。先生の卒業した大学の名前が聞いたこともない大学だったからだ。
大学を卒業して同級生が就いた職業が耳に入ってきた時も同じような感想を持った。Bランク、Cランクと呼ばれる大学卒の人ばかりで難関大学卒で教師になった人はいなかった。学校だけではない。私がアメリカから帰国して、名古屋の河合塾学園、名古屋外国語専門学校、コンピューター総合学園HALなどで勤務している時に出会った英語講師の方たちで難関大学卒の人に会ったことがなかった。
そういえば、アメリカでは教師は尊敬の対象ではなかった。トラックの運転手やコックさんと何ら変わりない職業の一つだった。アメリカでは賢い人、尊敬される人は自分で起業して大金持ちになっているはずなのだ。
そういうレベルの人たちが授業をし、受験参考書を書き、模試を作り、採点している。この事実を知ったのは、アメリカの中学校での出来事だった。着任当初は受験英語で授業をしてみたのだが、生徒から
「ミスタータカギは若いのに、どうしてジジイのような英語で話すの?」
と、尋ねられたのだ。
帰国して英検1級の受験会場で出会った人たちは帰国子女、ビジネスマンが多く教育関係の人は少なかった。英検1級の教本を開いて勉強していたら、ネイティブが近寄ってきてまたしても
「なんで日本人のお前がシェーックスピア時代の英語を勉強してんの?」
と、不思議そうに尋ねてきた。
それは、私も分かっていたけれど日本社会は英検やTOEICをありがたがる人が多いので仕方ないのだ。なんで、こんなおかしなことになっているのか?理由は明らかで、無理な人たちが重要な役職に就いているからだ。
駿台の講師募集に応募したら、模擬授業をやらされた。そして、最後にコメントをもらったのだが複合関係代名詞がどうした仮定法がどうしたといった文法の話ばかりを得意げにしていた。日本語を上手に話すために五段活用や未然形の知識は要らない。
10年ほど前に YouTube が普及してきたので、上記のような自分の経験を動画にしてアップしたら勉強系の動画なのに5万回再生とか共感してくれる若者が多かった。それで、アメブロに文字にして書いたらフォロワーが1000人を超えた。
ココナラで通信添削を始めたら、添削指導の中で人気が出た。Yahoo で「京大 英作文 添削」で検索すると1ページ目の10記事のうち4記事は私のもの。Z会より多い。指導させてもらったら9年連続で京都大学の合格者がでた(うち、3名は医学部医学科)。
そうした経験が「私の京大合格作戦」(エール出版)の2020年版から2022年版まで3年連続で掲載された。つまり、大人はダメだけど若者はすでに気づいているのだ。特に、賢い子たちはエビデンスしか信用しない。現に、名古屋大学出身で英検1級合格の私でも
「先生の言う英作文で、本当に京大英語で8割を超えられるのですか?」
と突っ込んでくる生徒が多いのだ。
だから、私は50代の時に高校生に混じって京都大学を受けて実証するしかなかった。
2021年5月28日 17時56分
教員による児童や生徒へのわいせつ行為をなくすための法律が、28日の参議院本会議で全会一致で可決され成立しました。
この法律は自民・公明両党の作業チームが野党側とも協議してまとめたもので、28日の参議院本会議で採決が行われた結果、全会一致で可決され成立しました。
法律には教員による児童や生徒へのわいせつ行為をなくすため、わいせつ行為で懲戒免職となり教員免許を失効した人に再び免許を与えるかどうかを各都道府県の教育委員会が判断できるようにすることや、教員免許を失効した人のデータベースを国が整備することなどが盛り込まれています。
教員志望の人が少なくなり、教員採用試験の倍率が過去最低となり、優秀な人が教員の中から少なくなりつつあります。逆に、本来教壇に立ってはならないわいせつ教員が増えて国会も法律を作る必要が出ているありさまです。
もはや、アメリカと同じで「先生」は若者の憧れの職業とはなっていません。
その結果、日本では予備校が塾が必要となっています。