最近、学校の評判が悪い。理由は明らかで、親方日の丸に共通した競争のない環境のせいだ。国鉄も電電公社も、JRやNTTに変わった。
塾では、毎日身を削りあって競争しているから、塾が学校に負けることはありえない。生徒たちは正直に「学校より塾の方が楽しい」と言うし、「受験に役立つ」と言う。
しかし、塾にも問題はある。
私は30年間塾業界でいろいろなものを見てきた。名古屋の大規模7塾で14年間非常勤講師として教壇に立っていたので、さまざまな塾の裏側を知ることになった。それを、今日は業界の外の方にお知らせしたい。
1、ネーミング
河合さんが始めたから「河合塾」。駿河台にあったから「駿台」。こういうネーミングはまともです。しかし、東大セミナーとか早稲田スクールとか(実在したらスミマセン。例外はあります)知名度の高い大学名を拝借している塾は要注意です。
私の見てきた経験から言うと、東大セミナーに東大卒講師がいたためしがないし、東大合格の実績があったためしもない。ただ、集客に他人の知名度を利用しているだけ。
あるいは、ハイブリッド塾、コンシェルジュ講師、ユニバーサル進学会といった、カタカナの名前で煙に巻こうという作戦。こういう塾は、中身で勝負する気がありません。外国人に弱い日本人の習性をつこうという経営判断しかありません。
2、施設
私が教えてきた塾で一番レベルの高い塾の教室に入ると、参考書や問題集がビッシリ揃えてありました。授業中に必要になったら、すぐに取り出せるようにしてあるわけです。
しかし、最低レベルの塾の教室に行くと、教室内が空っぽでした。そもそも多くの問題集を使うほどの生徒がいない。そんな生徒相手だと、盗難が多発するので教室に何も置いておけないわけです。
よくご存じかと思いますが、少子化の中で集客に必死な大学は食堂やトイレを立派にしようとします。コンピュータ関連の見た目が派手なもので、生徒を集めようとします。授業内容で勝負する気など、最初からありません。
3、教材
自分の塾で出版社を持っている塾以外は、独自テキストなど作れません。今は、表紙だけ付けてくれるサービスがあります。塾専用教材の会社は、市販していないので、表紙だけ付け変えても保護者や生徒にバレません。
そんな姑息な方法をとるより、市販されている、公開されている問題集を使った方が生徒のためにはいいのです。河合塾で働いている講師でも、駿台の教材を使いたい時があるはずです。
4、月謝の額
私の教えていた名古屋のある塾では、最寄りの地下鉄から塾までの歩道がガムの噛み捨てだらけで、道路の色が変わるほどでした。もちろん、近隣住民から苦情の嵐でした。
別の塾では、自転車を歩道や路上に置くので、こちらも近所から苦情の嵐でした。すると、塾では清掃費用や、専用の警備員や、監視カメラといった経費がふくらんでいきます。
それが、月謝の値上げにつながるわけです。一般に、質の悪い塾の月謝は上がっていきます。
5、広告の頻度
素行の悪い生徒、勉強嫌いな生徒が多く集まる塾は、退塾率がきわめて高い。したがって、常時生徒を「補充」する必要があります。逆に、質の良い生徒が集まり、満員御礼の塾では広告をする必要がありません。口コミだけで集客できてしまう。
だいたい、広告で来てくれる生徒の質は一般に良くありません。考えてもみて下さい。タレントや、アニメを見て応募してくる生徒です。マジメな生徒なら、きちんと内容を調べてくるもの。
だから、レベルの低い塾は、大量にやめて、大量に集めて。それを繰り返すしかなくなります。だから、経費が増え、月謝が高くなるわけです。
6、講師のレベル
私は名古屋の7つの塾で14年間指導させてもらって、旧帝卒の講師に会ったのは1回だけ。それも、司法試験の途中のアルバイト。正規講師の中に、英検1級を持った講師に会ったこともありません。
さて、塾が決まっても、それだけでは成績が上がりません。同じ塾でも合格する子と、落ちる子がでる。それは、講師と生徒の問題。塾のシステムだけでは、合格はつかめません。
私が指導させていただいた最高の生徒は、A子ちゃん。
さて、最後に成績を上げる一番の障害になるもの。A子ちゃんは、修学旅行に単語帳を持っていきました。でも、誰も何も言わなかったそうです。四日市高校ならではのこと。
進学校の生徒の合格率が毎年高いのは、そういう仲間に囲まれているから。本気で自分の持ち時間をチェックして、ムダな時間を省いて勉強に集中してみましょう。クラブを切り捨てる子もいるだろうし、恋愛を諦める子もでるかもしれない。
いろいろな子がいて当たり前。みんな違うのですから。人と同じことをして、人より上に行くことなど出来ません。ほとんどの子が、ここで挫折してしまいます。