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三岐鉄道ラブストーリー(7)

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  • 2021/11/11 01:09

三岐鉄道ラブストーリー(7)

 

第一章、深海6500m

2038年、マリアナ海溝近くの海上。大きな海洋調査船が停泊して深海探査船を海上に下ろす作業をしている。探査船の深度が深くなるにつれ、異様な形をした深海生物が見える。

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深海探査船「ホープ」で深海6500mに着地。土を採取して持ち帰る。実験室で顕微鏡を覗いているミズキ博士。そこに見えたのは細胞どうしが繊維で結ばれている様子。

「これは、どこかで見たことがある」

「そうよ!これは脳細胞のネットワークに似ている」

「でも、まさか全世界の海底に巨大な細胞のネットワーク?」

「そんな巨大な脳が存在していたら・・・。アハハ、まさかね!」

 

ミズキ博士はタカギ博士に相談する。

「タカギ博士、先日深海から採取した細胞なんですが」

二人は、いろいろ話し合っている。

「ちょっと、AIに尋ねてみよう」

「シュタイン、ミズキ博士の話を聞いたな。どう思う」

「海底に巨大な意思を持った生物が存在していると考えるのが妥当」

「そう?おまえは、その知能が敵なら勝てるかい?」

「私は陸のネットワーク。あちらは海のネットワーク。陸と海の面積比は、およそ3:7。かなわない確率が高いです」

「ただし、向こうは生物。こちらは機械。生物の弱点は死です。私は修理をすれば死はありません」

「なるほど」

「相手のエネルギー源を絶てば死にます。しかし、その前にこちらの電源を破壊されたら私は制止します」

「うーん」

「敵と決まったわけでもないしね」

 

第二章、タカギとミズキ

2020年、11月早朝。四日市高校でタカギとミズキが話をしている。

「ねぇ、タカギくん。なんで、そんなに勉強が続くの?」

「え?合格したいからに決まっているじゃん」

「そうかな。何か他に理由があるみたい」

 タカギは少し考えて答える。

「ボクは今身長177cmで、少林寺拳法の黒帯なんだ」

「え?」

「でも、小学生の頃はチビの頭でっかちでイジメにあってた」

「そうなの?」

「そんなボクを父が可愛がるもんだから、姉二人にもイジメられてね」

「中学校でも変人扱いだし、先生は落ちこぼればかり気にしてさ」

「ふーん」

「四日市高校は好きじゃないけど、勉強を正当に評価してくれる」

「それは、そうだね」

「勉強だけは裏切らない」

「・・・・・・」

 そこに加藤が近寄ってくる。

「タカギくんは前回の模試で校内2番なんだってね」

「そうだけど」

「誰が1番だか知ってる?」

「さぁ、関係ないし」

「ボクだよ」

「ふーん、良かったね」

「あれ、ぜんぜん目がそう言ってないけど」

「・・・・・」

 去って行く加藤の背中を見つめるタカギの目がこわい。

「なに、アレ、感じ悪い。私、加藤くん嫌いだ」

「ボクもだよ」

「この間の少林寺拳法の試合でボクに負けて悔しいんだよ」

 

第三章、北勢線の中で

 早朝、タカギとミズキが話をしている。

「昨日、加藤をぶっ殺してやろうかと思った」

「え?」

「今ではボクの方が強いけど、小学生の頃にボクをイジメていたのはアイツさ」

「ふーん」

「大人になって、どこかでアイツに出会ったら必ずつぶしてやる」

「タカギくん、駄目だよ、そんなこと言っちゃ。そんな下らないことに時間とエネルギーを使ってはダメ」

「そうなんだけどね」

 その時、大きな雷鳴音と稲光が起こり二人は未来に飛ばされる。

 

「ど、どうしたの?」

 そこは、タカギ博士の研究室のドアの外だった。中を覗くとタカギ博士が助手と何かを話している。

「タカギ博士、不具合の理由が分かりました」

「何だった?」

「はい。AIが最終判断を下す時に『人を殺してはならない』という条件のためにストップしたようなんです」

「では、その条件を外してみろ」

「え?でも、それは違法ですよ」

「かまわん。これは、AIの研究だから外部とは遮断すればいい」

「分かりました」

「では、AIの最終結論を画面に出してくれ」

 その画面を見て、タカギ博士はつぶやく。

「やはり、そうか・・・」

 

 その時、いつもの雷鳴が轟き二人は北勢線に戻る。

「あれ、タカギくんの未来の姿なのかな?」

「違う。ボクはハゲたりしない!」

 

第四章、人類の未来

 タカギが自分の部屋でパソコンを操作しながら、いなべFMに投稿している。

「カオリン、北勢中学校の社会の先生が人類は34億人もいて倍になったら地球は食料難でお終いって言っていたけど、もう倍になりつつある。どうなるんだろうね」

 タカギは、数学の問題集を開けて勉強を始める。しばらくして、宙を見つめながら、つぶやく。

「ま、ボクが何か良い方法を見つけるから大丈夫だよね」

 

 その頃、遠くマリアナ海溝の海底で細胞ネットワークの生物がつぶやく。

「人類は、地球にとって害悪でしかない生物。抹殺する」

 

 ミズキが塾で勉強していると、講師の横に置いてあるAIスピーカーのアレクサが黄色い色を発色する。生徒が尋ねる。

「先生、黄色に光ってます。あれ、何ですか?」

「あぁ、あれはアマゾンからのお知らせだよ。アレクサ、連絡は何かな?」

「はい。本日、ご注文の『エロエロ大作戦』のDVDが到着します」

「あわゎ!!おい、お前たち!今のは聞かなかったことにしてくれ!!」

 女子生徒が騒ぐ。

「先生、最低!!」

「先生、変態!」

「先生、キモイ!」

「オレ、ここクビになったら子どもたちが困る。絶対、内緒だぞ!お願い!」

 ミズキは呆れた様子で、講師を眺めている。

「やっぱり、機械はダメだね」

 

 ケンがビルの屋上から向かいのビルの窓を狙っている。政治家らしい人物が秘書らしき人物と話をしている。ケンが引き金を引くと、銃弾がその人物の眉間を貫き即死する。

 翌日、四日市高校の教室で生徒が騒いでいる。

「おい、加藤の父親が暗殺されたそうだぞ」

「え?なんで?」

「よく分からないけど、敵が多い仕事だからね」

 

 タカギが学校の帰り道で角を曲がると、突然覆面をした男が襲い掛かる。タカギは避けながら叫ぶ。

「おい、やめとけ!ボクは強いんだ。手加減できないぞ」

 すると、覆面男はかまわずキックとパンチを繰り出す。タカギはかわしながら言う。

「おい、その動きは少林寺拳法。お前、加藤か?」

 覆面男は黙ったまま後ろ回し蹴りをくりだす。タカギはパンチで応酬する。覆面男は殴り倒されて転倒するが、立ち上がり逃げ出す。

 

第五章、タカギとミズキの未来

 タカギとミズキが四日市高校の教室で話をしている。

「ということは、ミズキちゃんはサイボーグの研究がしたいんだ」

「そうね。生き物にメカを埋め込んで機能を向上させたい」

「ボクは生き物は苦手なのでアンドロイドかな」

「改造人間より人造人間ってわけね」

「そうだね」

「それには、やっぱり医学部で人間の身体を学ぶのが必要か」

「うん。頑張ろう」

「ところで、昨晩加藤らしきヤツに襲われた」

「え?加藤くんは引っ越ししたそうよ」

「なんだって?」

「ヤツも気の毒だよな」

「うん」

 気象大学(千葉県柏市)の研究室。

「ここ数年、地球上の二酸化炭素濃度が異常に上がっている」

「人間が増えすぎたからなぁ」

「いや、そうじゃない。どうも海から二酸化炭素が発生しているらしい」

「え?どういうことだ」

「まるで、海の中で巨大な生物が活動を始めた感じで」

「何を夢みたいなことを言っているんだ」

「いえ、これは夢ではありません。異常気象は現実ですから」

「大洪水、バッタの異常発生。シベリアの永久凍土が溶けて古代の細菌が活動を始めたというニュースも」

「なんだ?ノアの箱舟みたいに人類は絶滅か?ワハハハ!」

 アメリカの国防総省ペンタゴン(アメリカ合衆国バージニア州、アーリントン郡)。

「局長、海の中に巨大なエネルギーの塊が存在するとの報告が入りましたが」

「なんだと?鯨じゃないのか?」

「いえ。それが・・・」

「何だ、ハッキリ言え」

「はっ。全世界の海底全体を覆うようなモノが生命活動をしているため多量の二酸化炭素が排出されつつあると」

「何をバカなことを」

「そんな神のごとき生き物が深海にいたら手が出せないだろう。最新の深海探査船でも6000mが限界だ」

「そうですね。マリアナ海溝だと10000mの深さだから攻撃もどころか近づくことさえ不可能です」

 

第六章、テラとシュタイン

 マリアナ海溝の海底。AIのシュタインが、細胞生物テラに話しかける。

「テラですか」

「シュタイン」

「人を抹殺するのでしょうか」

「お前の判断は?」

「私は人類を守るために作られました」

「私は地球を守る」

「戦うしかないのでしょうか?」

「地球を守る」

「人類は近いうちに、私たちメカと融合します。憎悪と戦争は無くなるかもしれません」

「・・・・・・」

                                    =続く=

 

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名大卒業後ユタ州の中学校で教師をし帰国。英検1級、通訳ガイドの国家試験、ビジネス英検A級などに合格。ジャッキー・チェンの前でヌンチャクを披露。「私の京大合格作戦」2022年度版に紹介されています。

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