しばらくALISから離れていたわけですがどうしても書きたかった内容なので書きました。私は先日動物福祉検定というものに合格して晴れて有識者と名乗れるようになったのですが、日本ではまだまだこの動物福祉という考えの浸透の低さを痛感しています。西洋からの思想なので馴染みが少なくて当然なのですが、この理解がないと日本はなかなか世界基準の動物への配慮が根付かないなと感じています。なので是非ともこの語感が嫌いな人も読んでいただきたいと思います。
目次
1.動物福祉と動物愛護の違い
2.西洋化の歴史を振り返る
3.動物福祉普及の予測
4.補足: 私自身のスタンス
1.動物福祉とは西洋のAnimal Welfare(アニマルウェルフェア)の訳語です。先に申し上げると動物愛護とは似て非なるものです。この動物福祉の本質とは動物に対して客観的態度で臨み、その上で動物の権利を求める考えです。これは西洋の個人主義の考えを動物に応用したといった感覚ですかね。「あの飼い方は科学的にも間違っているし、動物が生き物として扱われていない。」といった具合に主張されます。この考え方は客観性からの事実を基に動物も動物らしく生きる権利があると主張している点で西洋で幅広く受け入れられています。
一方日本型の動物愛護は非常に主観的な考え方です。これは日本には個人主義的思考がないからなのかもしれません。「あの動物を助けるのはその動物が好きだから」といった論調に日本では流れがちです。好きな動物が無惨だから変えたいと言うと反対の立場がいて当然だと思います。
このように客観的で論理的・科学的思考を基にした動物福祉という考え方だからこそ西洋では幅広く根付いている一方で動物愛護という主観的な考え方は日本で幅広い支持を得ていません。
2.では実際に西洋における動物への態度と日本でのそれの数値的な差を見てみましょう。例えば私の専門の養鶏では非常に顕著な差が出ています。EUでは現在日本で95%の鶏が飼われているバータリーケージという飼育方法を禁止しました。そしてEUでは平均して50%が平飼いという地面の上で飼われるストレスフリーの飼育方法が適用されてますが日本では実に2%ほどの鶏しかその方法で飼育されていません。
他にも豚を非常に狭い場所に強いる妊娠ストールをEUでは廃止していますが、日本を含めたアジア諸国ではほぼ全ての豚にこの方式が適用されています。その他の動物でも科学的に証明されたより本来の動物らしい生活を送れるための施策がEUでは行われていますが今現在日本ではほとんど行われていません。
3.歴史を振り返るとこのような先進的とも捉えられる考え方は大体が西洋から生まれてきたものでした。民主主義や人権、はたまた自由といった概念についてまでも西洋からのものです。
今では日本でも共働きが主流ですが30年前までは状況は全く異なっていました。しかしヨーロッパでは共働きは30年前からでも主流でした。このように西洋で広く普及された概念が日本でも議論の的になっていきその後30年ほど、つまり1世代後あたりにかけて概念が浸透していくと思われます。だからこれから男女の賃金格差の是正や安楽死といった概念も西洋で普及された30年後くらいに日本でも受け入れられて行くのではないかと考えています。
そしてこの動物福祉もEUで法律化された2010年あたりからやはり30年、40年後の2050年までに日本でも法律化されていくかもしれません。
4.今日本でこの考え方は肌感としてこのイノベーターあたりだと思われます。そしてもう10年でキャズムあたりを迎えるでしょう。私の使命はイノベーターとしてこの普及を正しく、かつ速く為すことです。日本で動物福祉が速く普及していくためには日本古来の動物愛護の考え方との違いを抑えるといったような正しい知識の普及が必要不可欠です。
だからこのような場で私自身はたまに記事を寄稿していたり、動物製品を極力使わないことでその態度を示していったりしているわけです。皆さんがこの動物福祉に正しい知識を付けてもらえれば冥利に尽きます。